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第九十話 秒単位

「えーっと」


 ミランスの付添人(いぬ)になった僕。

 この物語のタイトル、改名したほうがいいんじゃない?

 抽選で選ばれたので勇者の()()()になりましたってね。

 そんなことはともかく!


「僕、執事を懲らしめに来たんだよ」


「執事を!?」


 ミランスが小さく悲鳴をあげる。

 王様も目を丸くして一歩後ずさり。


「さっきも言ったように執事は魔王の下部なんだ」


 そうやって執事がいる(はず)の場所を指差した。

 ……あれっ?


「執事がいない!」


 逃げたんだな。

 せっかくの僕の名シーンを見ないなんて損してるなぁ。


「レンくん。執事がどうして魔王の下部だなんてわかるの? 執事は今日(こんにち)までわたしのことを優しく見守ってくれてたんだよ」


 ミランスは信じられないと言うように反論する。

 それはみんな同じだ。

 僕とルロ以外、全員ザワザワとなにか言っている。


「あのね。僕は執事と一回戦ったことがあるんだ」


 ホントはミランスも一緒に戦ったけど。っていうか主にミランスが攻撃したって言ったほうが正しいかも。


「そのとき彼は魔王側の人間だって、そう言ったんだよ。その上、勇者を偽善者と言い、勇者に偽善者と言わせて自己嫌悪に陥らせたひどいやつなんだよ」


 僕の言葉にこの場がシーンと静まり返る。

 みんな困った顔をして見合わせる。


「オレ、もうここにいられねぇYO()


 ディートは呆れたように退室した。

 王様もうんざりしたように口を開いた。


「レンという者よ。ワシはお主のことを少し見直していたところなんじゃよ。それなのにそのようなウソをついたらもったいないぞ」


 ウソ……!

 ウソじゃない。ホントのことだ。

 ……でも、今なら引き返せるだろうか。

 今なら「ウソでした、すみません」って言えばまた見直してもらえるんじゃない?

 そうだよ! そう言って、ミランスたちとすぐドルーゴーリマを出れば執事の被害を受けなくて済むんじゃない?

 王様は被害を受けちゃうけど、仕方がないよね。

 あれだけ忠告したのに信じてくれなかった王様が悪いんだから。

 でも、ミランスは?

 王様がいなくなったら辛いよね。

 ミランス……。

 チラッと彼女を見た。

 彼女は大きな瞳を不安の色にしてこの場を眺めていた。

 僕のせいでこの人を不幸にはしたくない。

 それに、王様たちを見殺しにして楽しく旅なんてできるだろうか。

 僕はできないな。


「僕の意見は変わりません。執事は黒です」


「あなたはナゼそこまで自分の不利になることを主張し続ける? 言わないほうがお主にとっては得だろう?」


 王様はもしゃっとしている髭をいじりながらしゃべる。


「それなのに、どうしてそんなしょうもないウソをつく? 自分をよく見せるためか?」


 不審な目つきの王様。

 なにを言っても怪しまれる。

 そんな彼を黙らせたのはまさかのミランスだった。


「わたしはレンくんを信じます。見てください、あの純粋無垢な瞳を。彼がウソを言っていると思えますか?」


「まっすぐな瞳なのは認めるが、それがもしかしたら演技かもしれないのだぞ。お前は人のことを信じこむだろう? ワシにはその延長線上だとしか思えん」


「わたしはそこまでバカじゃないです」


 いや、バカだよ。

 ここにいるダレもがそう思っただろうけど、さすがに口をつぐむ。


「ミランス、お前さんは……」


「うおぉぉぉぉぉぉぉ! ただいま帰ったZE()☆」


 真面目な空気を乱す声が玉座の間に響き渡る。

 玉座の間はぽかんとしたなんとも言えぬ、まぬけな雰囲気が漂う。

 声の主はそんなことお構いなしにずんずかと王様のもとへやってきた。


「執事は黒でしたYO()! オレがマンゴープリンを人質にして執事に色々問い詰めたら、しぃーっかり白状してNA()!」


 ハッハッハと高嗤いするのはディートだ。

 このバカ高いテンションにダレもついていけない。


「んで、このオレが執事を抹消したわけDA()v(=∩_∩=)」


 僕が飲み込むのに時間がかかるなか、ミランスはハイテンションでディートに近づく。


「さすがですディートさん! 執事を何秒でどうやって抹消したんですかっ? ハイエナアタックですか? それともモルモットアタックですか?」


 なんか後半の攻撃かわいいな。

 っていうかミランスはなぜディートが執事を秒単位で倒せると思ってるのー!?

 僕のツッコミが追いつかないが、ディートはまんざらでもなさそうな表情で口を開いた。


「何秒で倒したかはわからないZE()☆(←ドヤるな)でも、とどめはハリネズミをひたすら投げたんだYO()!」


 執事もハリネズミもひたすらかわいそう。

 哀れみの瞳で執事を思い出す。


「やっぱりすごいです! ディートさんは世界一の獣使いですね!」


 ミランスの称賛に、まわりも「キャー」とか「ワー」とか「ギャー」という歓声があがる。

 なんだかそれがとても気に入らなかった。

 痛む胸をおさえ、ミランスの誇らしげな横顔を眺めた。

90話目だ!!

100までもうちょっと!


お読みいただきありがとうございます!

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