第八十九話 ウソ偽りのないエゴ
「ミランス!」
躊躇うことなく玉座の間に戻った。
部屋のみんなはうんざりしたようにこちらを見る。
しかし今はどうでもいい。
「……どうしたの」
ミランスは無事みたいだ。
彼女は不思議そうに首をかしげている。
隣にはディートと……執事がいた。
「お前は何回ここに来たらわかるんだYO! ミランスはお前のもんじゃないんだZE卍 いさぎよく諦めろYO!」
ディートは若干キレ気味だった。
執事はおとなしく僕らを眺めている。
「ごめん。僕は今そんな言い合いっこしをしてる場合しゃないんだよ」
そう言って執事を睨み付けた。
彼は驚いたように目を見開く。
そしてその動揺を隠すかのように咳払いをした。
「レンさん。なにをしに来たかはわかりません。ご用がないのならお帰りいただけませんか?」
「帰りません。でも、帰るのはあなたのほうですよ──魔王の下部」
僕の発言に周囲がざわつく。
ミランスも警戒モードに入って身構える。
「ほう? なぜそのようなことを言えるのですか? まさかですけど、ミランス様のお供になるためのでたらめではないでしょうか?」
「いぃや! 僕は……その、なんて言うか……そう! 人の本質を見抜く力があるんだ。その力が発動しましてね。執事が魔王の下部だと訴えかけてくるんですよ」
本質を見抜く力なんてないけど、仕方がない!
ここはこう言って乗りきろう。
「貴様はなにを言っているんだYO! うちの執事を侮辱するNA(*`ω´*)」
「いっててて……」
ディートは素手で僕の頭を叩いた。
それなりに痛かった。
「お前は結局ミランスのお供になりたくて戻って来たんだRO!? しつけーYO! オレがお供だって言ってんDA! もしかして聞こえてねぇのKA? 耳悪いNA! 眼科行ってこい( ;゜皿゜)ノ」
……耳が悪いなら耳鼻科では?
ツッコミたかったが、空気を読んで黙っておく。
「お前は早く消えRO!」
もう一発、とディートが僕を殴る。
これじゃ全然平和的じゃないよ!
「やり返さないのかYO!」
パンッ
ディートは不満そうに僕の右頬をビンタする。
痛いなぁ。
右頬が広がるような痛みと共にジンジンする。
「ミランスを困らせてるクセになに正義面してんだYO! オレにはそれが気味が悪くて仕方がないZE!」
「正義面なんてしてないよ。むしろ僕はミランスに迷惑をかけて申し訳ないと思ってる」
「はっ。笑わせるNA草。じゃあなんで戻って来たんだYO! なんでそんなに頼もしそうな表情なんだYO!」
ディートの表情はマスクとサングラスでよくわからないが、多分嗤ってる。
かすかに見えるサングラスの奥の瞳が、軽蔑するように嗤った気がした。
「どうしてお前はそこまでミランスと旅がしたいんDA(-ω- ?) ここまでズタズタにされておいてNA!」
「それは、」
色々と思い出した。
ミランスが僕の家にアポ無しで凸って来たこと。
ミランスが大金よりマンゴープリンのほうを大切にしていること。
天然にツンデレはかなわないこと。
これまであったことが走馬灯のようによみがえる(死ぬわけではないのでご安心を!)。
「──僕のエゴだ」
「なんだそれは!」
王様から反感の声が上がる。
しかしこんなのじゅーじゅーしょーち。
だって仕方がない。
ホントに僕のエゴなんだから。
ウソ言って取り繕うのはよくない。
「僕はミランスと一緒にいたい。だって楽しいし、優しい気持ちになれるから。僕はミランスと戦いたい。ミランスとやってるとなんだかやる気がわいてきて、なんでもできそうに思える。ミランスといるとゾーン状態に入ったみたいな感じになるんだ。僕はミランスと旅にでたい。絶対楽しいはずだから」
周囲は沈黙に包まれている。
そのときルロと目があった。
彼女の切な気な瞳に思わず心臓が跳ね上がる。
しかしあちらはすぐ不適に笑って、力強くうなずいた。
それを合図に思いっきり息を吸う。
「僕は! 僕はミランスを笑顔にしたい。だってそれが僕のエゴだから!」
ディートは黙った。
僕の思想が気に入らないのだろうか?
王様も黙った。
こんな大バカに娘をまかせられないと思ったのだろうか?
ルロは嬉しそうだった。
よく言った! というような表情をしていた。
ミランスは──微笑んだ。
幸せそうに優しく、温かく、包み込むような微笑みだった。
「……レンくん」
彼女はそうわずかに僕の名前をつぶやいた。
その声に脈が早くなっていく。
「あなたをわたしのお供にはできません」
「そーだZE! だってオレがお供だからNA! (@^▽゜@)ゞイエイ」
「ディートさん、うるさいです。あと絵文字の使用はもう少し控えてください。文字数稼ぎだと勘違いされますから」
ミランスが作者の心を揺さぶる発言をしつつも、僕に瞳を向ける。
「あなたと、その後ろにいるかわいい子を旅の付添人とします」
「付添人?」
「だってレンくんはわたしと旅がしたいんでしょう? 残念ながらわたしのお供にすることはできないけど、付添人……まぁ、わたしの犬だと思ってもらえればいいかなー」
「ミランスの犬!? これって喜んだほうがいいの!?」
動画サイトで黒髪マッシュでマスクして片目しか見えてない人に「飼われたい」と言ってる人もいますが!(←元ネタ知ってるやつ感想プリーズ)。
「……わかった今日から僕とルロはミランスの付添人ね」
「女の子のほうは人扱いでいいよー」
「なんでぇぇぇぇっ!?」
ミランスのさすがな天然発言に、玉座の間は温かい空気に包まれたのでした。
やっとですよ……
疲れたけれど、めちゃくちゃほっとしています。




