第八十八話 女たらし
お城をでると街はガヤガヤしていた。
……。
しかし僕とルロの中では気まずい沈黙が流れる。
たまに視線を絡めてはそらし、なにか言おうとしては口をつぐんでいた。
ああああああああっ。
ミランスを困らせて帰るなんて!
最悪だ。まったく。
しかも僕をかばうために声をあげてくれたルロの努力もなにも活かせなかった。
悲しいくらいなにもできていなかった。
むしろ悪化したかもしれない。
悔しくて、辛くて、切ない。
溢れるほどの後悔が募っていく。
「……ごめん」
そんなだんまりとした空間を切り裂いたのはルロだった。
彼女はうつむいて、決まり悪そうにつぶやいた。
かと言って反省していないわけではなさそうだ。
「あたし、レンのためだと思って言っちゃったけど逆効果よね。むしろ重いって思われたかもしれないわよね」
「ルロ」
「せっかくのチャンスだったのに、めちゃくちゃにしちゃったわ……。ホントにごめんなさい」
ルロにここまで素直になられると罪悪感が増していく。
僕は何人の人を悲しませているんだろう。
なんなら僕も同じように悲しい想いをしている。
なにがしたかったのだろうか。
僕は、ミランスと旅をしたかっただけなのに……。
「ルロは、悪くないよ。僕のスピーチの仕方とか、僕の考え方とか、うん、そこが悪かった。こっちこそごめんね。……でも、僕、ルロに助けてもらったときすごく嬉しかったよ」
ニコッと笑った。
ルロが元気になってくれるかなって思ったから。
「ルロのおかげだよ。玉座の間に入れたのも、この服がないと入れないんだから」
冒険者の服をヒラヒラさせてみる。
ルロはやっと顔をあげた。
「それに僕のバックにルロがいるって思うとすっごく頼もしかったよ。安心した。だから……、」
「やめなさい! そういうお世辞は言われたほうが傷つくんだから」
びっくりした。
だって怒鳴られるとは思ってなかったから。
街行く人々は何事だと一瞬僕たちのほうに目をやった。
しかしすぐに慌ただしく右往左往しだした。
「ノーデリカシーよ。ホンット気づかいに欠けてるわ」
ノーデリカシー。
何度もルロに言われたセリフだ。
しかしその言葉が今は神経の中へ中へと染み込んでいく。
「そんなでまかせであたしを元気づけようなんて、はなはだおかしいのよ」
「でまかせなんかじゃ……っ」
「はあ? あんたがあの状況であたしに気を向けるくらい余裕はなかったでしょ? なんならあんたの想い人もいたことだし、余計あたしのことなんて眼中にないに決まってるじゃないの」
ルロは思いっきり僕を睨み付けた。
その迫力に圧倒されて、心臓がひくっとヘンな感じに脈打った。
「でまかせ、なんて……。確かにちょっと盛ったけど……」
「盛ったのね」
こらえきれなかったように、ルロは一瞬真剣な顔つきをやめて吹き出した。まぁ、すぐ険悪モードに戻ったけど。
「でも、ルロがいて嬉しかったのはホントだよ。僕のために代弁してくれたのも嬉しかった。これはウソでもなんでもない。本心だよ」
ルロは顔を少し赤らめてうつむいた。
高圧的な目つきがゆるんだので、少し安心する。
「僕はルロといれて幸せだよ」
「…………よ」
ルロがなにかつぶやいた。
しかし小さすぎて聞き取れない。
「そんなこと、あたしに言ったらダメよ! あんたが言うべき人はもう他にいるじゃない! そういうことは一番想ってる人に言わなきゃダメなのよ!」
また言葉をまくし立てられた。
善意が悪質に変わっていく。
ルロの泣きそうな顔を見て、言おうとした言葉が消えた。
「あんたはあたしをどうしたいの!? なに、キープ? 最低ね」
「違う! 僕はルロに笑顔になってほしくて、」
「またそうやって聞き心地のいい言葉を並べる。呆れるわ」
ルロは突き放すようにそっぽ向いた。
……自分はホントになにをしているんだろう。
なにがしたいんだろう。
また出だしに戻っていく。
それじゃなにも進まない。
ダメだ。進めなくちゃいけないんだから!
「ルロ、ごめん。ホントにごめん」
最上級のお詫びDO・GE・ZA☆ を見せる。
形だけじゃない。心だって行動と同じくらい詫びている。
「でも、ルロ。僕はキミが思っている以上に頼りにしてるし、大切だよ」
ルロはカッと目を見開いた。
驚いているのか引いているのか僕にはわからない。
でも僕の本心は伝わっていてほしい。
「要するに、あたしは都合のいい人どまりなのね」
「都合のいい人じゃなくて、僕の仲間だよ」
「またそうやって期待させる」
ルロは冗談めかして苦笑した。
多分今のルロには伝わらない。
でもいつか伝わるはずだ。そんな気がする。
「……これから、どうするの?」
そうだ、これからどうしよう。
やっと未来について語れる。
そんな僕たちに情報が入ってきた。
「王様たち大丈夫かしら」
「ミランス様も、もう少しで旅立つって言うのに」
さっきまで自分たちのことに必死で聞こえてなかったけど、街のみんなお城の中の話をしている。
「どうしたんですか」
「お城のなかに魔王の下部がいるってウワサがね。それでその下部が今日お城に爆破装置を発動させるみたいでね……、どうしましょ」
魔王の下部。
……それって、
「執事だ」
今まで自分のことに必死で忘れてたけど、執事は魔王軍の人だ(いや、忘れる!? by風音)。
「ルロ、ミランスを助けに行くんだけど、着いてきてくれるかな? 嫌だったら全然……」
「行くわ」
即答だった。
ルロのそんな態度に少し心を痛めた。
まぁ、でもルロが着いてきてくれるなら安心だ。
僕はニヤつきながら玉座の間に戻った。
タイトルがよろしくないですね(笑)
お読みいただきありがとうございます!




