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第八十六話 リップサービス

 扉の向こうは密だ。

 いたるところに兵士の列。

 ダレ一人として動かない。

 人間の置物が並べてあるようだ。

 この部屋の奥には椅子があり、そこには王様がすかした表情で座っていた。

 そして、その横には……っ。

 思わずゴクリとつばを飲み込む。

 凛々しい顔つきでこちらを眺めるのはミランスだ。

 ヤバイ。めっちゃ緊張してきた。

 手汗がじわじわと溢れてくるので、急いで手のひらを服に擦り付ける。


「こ、こんにちは。レンです。戻りました」


 ぎこちなくミランスのいる方へ向かう。

 ルロがどんな表情でいるのかは全くわからないが、足音が後ろから聞こえるのでついてきていることはわかった。

 王様の前に立ち、僕はお辞儀をした。


「見てください。これ、冒険家の証しです」


 これがあれば、ミランスとまた旅ができる。

 だから、早く冒険家と認めてっ!

 僕の焦燥感が王様にも伝わったのだろう。

 王様は僕を「まぁまぁ」となだめ、口を開いた。


「お前さんが冒険家なのはわかった」


「……! それなら!」


「そう急ぐでない」


 王様はぺっと僕の口をふさいだ。

 ちろっとミランスを見ると、とくに情のあるような顔はせず、僕を怪しむように見ていた。


「レンよ、社交辞令というものを知っておるか?」


「え」


 社交辞令ってあれだよね。相手を喜ばせたり、相手との関係をスムーズに進めたりするために、おざなりなことを言うんだよね?

 それがどうしたんだろう。

 ポカンとする僕に、王様は厳しい現実を突きつけた。


「──ミランスは、社交辞令を言ったのだぞ」


 ………………………え。

 一瞬言われていることがわからなかった。

 ミランスが、社交辞令……?

 だってそういうことを言うタイプじゃない。

 そんなのウソに決まってる。

 ……でも、それくらい僕が迷惑なことをしてた?

 血の気がスーッと引いていくのがわかる。

 さらに背中に冷や汗が流れた。


「ウソ……、でも、僕……」


 泣きたいけど泣きたくなくて、必死に目尻と口角に力をいれる。


「だって、ミランスのお供は……僕なのに……」


「違うぞ、レン。ミランスのお供はディートだ」


「いぃや! ミランスのお供は僕だ! ……ミランス、覚えてない? 一緒に旅をしたよね」


 僕はミランスの真っ正面に立ち、縋るように彼女を見た。

 しかし彼女の表情は浮かない。とても困惑している。


「そ、その、ごめんなさい。わたし……覚えてない……」


 今にも消え入りそうな声で話すので、僕にすごく気遣っているのがわかる。

 それがとても悲しかった。


「レン。ミランスのお供はディートだと何度も言っておるだろう?」


 まったく、と息をつく王様。

 しかしここで引き下がるわけにはいかない。


「なにを言われても僕の意見は変わりません。ミランスのお供は僕、千葉レン一択です」


 王様の目を見た。

 彼はとても困ったようにミランスと目をあわせる。

 ミランスも同じだ。

 二人は唇を噛み、なんとも言えない表情で見つめあっている。

 その(ほか)の兵士たちは僕を嘲笑するように僕を眺めている。


「レン。お前さんは疲れているのではないか? 言っていることがおかしい」


「んなっ! 僕はホントの話をしているのに、……どうしてわかってくれないんですか」


「わかってないのはお前だRO()


 チャラい声が聞こえた。

ツイキャス始めました!

毎週木曜日です。時間は不定期!

小説の裏話徒かをする予定です。


お読みいただきありがとうございます!

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