第七十八話 ぶれっくふぁすと
次の日。
約束通りルロと償いをすることになった。
ララは自宅待機。
一日中遊ぶようなので朝食はカフェで済ますらしい。
それで、朝食が終わったら遊園地に行くんだとか。
償い、か。
言い方がキツいけどデートとしか思えないんだよなぁ。
カフェの固めな椅子でため息。
そんなことより、
「なにアホな顔してフリーズしてるの?」
「いや、大丈夫」
僕の正面で、メニュー表を持っているルロを見るとドキッとする。
だっていつもはツインテールにしている髪を、今日はハーフアップにしているのだから。
服もいつものワンピースじゃなくて、ポップな柄のティーシャツにダメージジーンズ。
控えめに言ってオシャレ。
カッコいいし、かわいい。カッコかわいいってやつかな。
ルロの新たな一面を確認できてちょっと嬉しい。
「なにジロジロ見てるわけ?」
「いや、ごめん……。かわいくて、つい……」
「かっ……!?」
ルロはいきなり顔をメニュー表に隠して黙ってしまう。
……どうしたんだろう。
そんなことはともかく!
やっぱり男女二人で遊ぶときにオシャレするなんて、デートだとしか思えない。
「ルロ、これってホントに償い?」
「えぇ、デートよ!」
そう言うルロの顔にはほんのり赤みがかかっている。
手も少し震えてるし、緊張してるのかな?
そんなこと考えていたら、
「……あたしとデートなんてダレも行くわけないわ。それこそ罰ゲームよ」
「え?」
ルロの声のトーンが下がった。
どす黒く、闇が広がっているようなものだった。
途端店の外がみぞれになった。
さっきまでは優しい陽光が地帯を照らしてたのに。
……そういえばルロの気持ちとツンデレ地帯の天気って、関係してるよね。
もしかして、今ルロの気分は下がった?
ルロにも元気でいてほしいな。
「デートだって思っていいかな?」
「え?」
ルロは信じられないものを見るような目をした。
でも僕は本気だ。
ルロとならデートしたい。
「ほ、ホント?」
「うん」
「そ、そう! し、仕方がないわね。あんたがデートだと思うならそう思えばいいじゃない」
とかルロは言ってるけど外は清々しいくらい快晴だ。
……わかりあすいなぁ。
そこがかわいいのかもしれない。
「ちなみにだけど、あんたはデートするような相手はあたし以外にいるの?」
「んー。したい相手はいる。僕の一番大切な女性だ」
もちろん僕が一番にデートに誘いたい人はミランスだ。
前回は婚約する約束までいったから、デートには行けたんだろうな。
でも今回はよそよそしかったよね。
はぁ。
また片想いに逆戻りかぁ。
力なくテーブルに突っ伏す。
「片想い、なのね」
同情するようにルロは呟いた。
そのとき、
「ご注文の品です」
店員さんが僕とルロの前にバターロールパンのようなものと、黄色のスープをだした。
この黄色のスープはなんだろう。
コーンスープかな? それともトウモロコシスープかな(同じやないかい)。
「ありがとうございます」
ルロがお礼を言うと店員さんは去って行った。
「え、僕注文してない……」
「だからなに? 朝食を食べないとダメよ」
「お母さんかよ……。いや、そんなことはどうでもよくて、僕、お金持ってない。日本っていう音節が101しかない国のお金しか持ってないんだ」
「は? なに言ってるかわかんないけど、あたしのおごりに決まってるでしょ」
「そうなの!?」
「そうよ!」
おごりかー。
初めてだよ。ダレかにおごってもらうなんて。
それがルロだとは絶対わからなかったなぁ。
「あのさ、このスープってなに?」
「マリーゴールドよ。肌にいいんだから」
ま、マリーゴールド。
美味しいのかな。
僕の住んでるバナナの消費量が一位だという日本ではあまり馴染みがないんだけど。
恐る恐るスプーンにマリーゴールドの液を入れる。
それをゆっくり口に運んだ。
「……っ!!」
MA・ZU・I \(^o^)/
なんかめちゃくちゃ……なんだろ、酸っぱいじゃないけど、きゅーってなる。
酸味が強い。
鼻の奥がアンモニアを嗅いだときみたいに、刺されたような感じがする。
え、残したいんですけど。冗談抜きで。
そんな僕の気持ちはつゆ知らず、ルロは平然と口を開いた。
「マリーゴールドの花言葉は深いのよ。例えば……って、あんた大丈夫?」
「だいじょばない……。でも食べる!」
おごりなんだから食べなきゃ、食べなきゃ。
もはやマリーゴールドスープを口に持っていく動作は機械的だ。
早くマリーゴールド地獄から抜け出したいよ。
僕は涙目でスープを飲んだ。
ルロちゃんがかわいい。
もう好き!
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