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第七十七話 快楽

 は……っ!

 とても懐かしくて切なくて、ほのかに温かいものが胸の奥でもやもやする。


「ルロ……」


 待ってた。ホントにルロにも会えるのを待ってた。

 いや違う。会いに僕が行ったんだ。

 だって会いたかったから。

 興奮で体がじわじわする。

 涙が出そうなのに出ない。

 でも泣いたらルロに迷惑かけちゃうよね。


「あんた、どうしてあたしの名前をしってるわけ? もしかしてストーカー? きもっ」


 うん、ルロだ。

 今はルロに暴言を吐いてもらうと脳からドーパミンが放出される。


「もっとチクチク言葉をつかってくださいぃぃぃぃ」


「なんかよくわかんないけどヤバいやつね」


「ララも同意だぞ」


 二人はドン引きで僕に視線を向けているがそれも嬉しい。

 ちゃんと僕のことを見てくれてる。

 二人はちゃんと僕と向き合ってくれてる。

 僕の存在をわかってくれてる。

 ルロは僕のことを覚えていない。 

 でも優しくしてくれる。

 感謝感謝!

 快楽が全身を巡り、気持ちがいい。

 まるでという快味という名の沼にはまってしまったようだ。


「そしてあんた名前を教えなさいよ」


「レン。よろしく」


「よ、よろしくするつもりなんてサラサラないけど、仲良くしてあげるわ」


 握手を交わして微笑みあう。

 ララもにこやかに見つめている。

 相変わらずルロはツンデレだ。


「あ、ルロ。この服って冒険者のやつじゃ……」


「そうよ。よく知ってるわね」


 見にまとってるものをヒラヒラさせて口を開く。


「どうして僕に着せたの?」


「は、はぁ!? あんたの服がぼろくて目障りだったのよ。だからこの服をあげたの。その服、どうせだれも着ないわ」


 そっぽ向いて教えてくれたルロ。

 言い方は刺々しいけれど、愛情がこもっていた。

 胸が温かくなる。


「ありがとう」


「別に、感謝されるためにやったわけじゃないわ。あとひとつ言っておくけど、その服なら熱とか寒さとかを軽減できるから」


 やったぁー!

 服も手に入ったし、熱さとか寒さに耐性はついたみたいだし、僕の人生は順風満帆だ。

 にやにやしていると、ララが僕を軽く睨んだ。


「ちょっと、お前はなにもしないのか? だぞ」


「え?」


 ララは呆れたようにため息をついた。

 それはルロも同じだった。


「そうね。こんなに素晴らしいことをしてもらったんだから、お礼とかないのかしら?」


 お、お礼?

 言ってることの真意がわからず、思わず首をかしげた。


「僕、なんにも持ってないよ」


「ウソをついちゃダメだぞ! お前リュックもってるぞ!」


 ララはビシッと僕のリュックに人差し指を向けた。

 え、あぁ、これ?


「いや、別に面白いものなんてないんだけどなぁ」


 そうぼやいて二人にリュックを渡してみる。

 ……だって必要最低限しか持ってきてないし。

 リュックのなかを見た彼女たちも浮かない顔だった。


「ホントね。くだらないものばっかだわ」


「つまらないぞ!」


 いや、だからそうさっき言いましたやん。

 困惑する僕を横にルロはいたずらっ子のような笑みを浮かべた。


「体で支払ってもらうわ」


「えっ」


 肉体労働とか、そういうこと?

 ルロのことだしビシバシスパルタでやられそう。

 うぅ、地獄だ。


「別に言うほど大変じゃないわよ」


 ルロの声色は楽しそうだ。


「あんたにはあたしと遊んでもらうんだから」


「え?」


「もしかして不道徳なことを考えてたわけ?」


「いや、別に」


 えぇーっと、遊ぶ?

 それって僕に損はなくない?

 ルロの思考がよく理解できない。

 でもムダに突っ込んだらよくない気がしたので、言葉を引っ込める。

 だからもうひとつ気になったことを聞いてみることにした。


「僕とルロで遊ぶって、それってデートにならない?」


「ひゃ、はあ!? ち、違うわよ。なにひとりで勘違いしてるわけ? ただの償いよ」


「そっか」


 わざわざ僕をデートに誘うなんてことしないよね。

 でも……。

 僕の脳裏に浮かんだのは魔王城でのルロだ。

 あのとき彼女は泣きそうな顔で僕たちへの愛を語ってくれた。

 しかし同時に彼女は僕に愛してほしかった、と。

 五十嵐くんはそう言っていた。

 それはどういうことだろう。

 ルロは僕に恋愛感情をいだいていてくれたのか。

 そうなのだとしたら僕は盛大にルロを傷つけたことになる。

 ……わからない。

 ルロは僕たちがお似合いだとはやし立てることもあった。

 仮説と彼女の行動が矛盾して、頭がくらくらする。

 こうやって僕を遊びに誘ったのも僕に気があるからなのだろうか?

 でも、いいや。


「わかったルロと遊ぶよ」


「遊ぶじゃなくてデート(つぐない)って言いなさい」

私もルロとデートしたい(切実な願い)


お読みいただきありがとうございます!

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