第七十五話 ヤンデレン
絶望的で目の前で起きていることが信じられない。
自分がどこを見ているのかもわからなくて、視界が霞む。
ミランス、ミランス、ミランス!
違う! ディートはミランスのお供じゃない。ホントは、ホントは僕がミランスのお供なんだ!
「王様、聞いてください。ミランスのお供は僕なんです。実は僕タイムワープしてきたんです。それで、前回のお供は僕で、しかも結婚する約束までしてたんです」
「すまん。ちょっとよくわからん」
あぁぁぁぁぁっ!
どうして伝わらない!
僕は真実を話しているのに。
肩を震わせ、体は力んでいる。
なんでわかってくれない!
僕の本気が伝わらない!
信じてよ! ダレか、ねえ!
もう絶望の絶頂に落とされた。
周りの音が聞こえない。
おまけに感覚神経もはたらかない。
ミランスに会いたいのに、ミランスに甘えたいのに、ミランスに、ミランスに、ミランスに、ミランスに、ミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスにミランスに、
「あなたの話は、ホントですか」
そのとき玉座の間に響いた愛らしい声。
それは、優しく、力強い。
そして、まっすぐで温かい。
僕の精神安定剤な人だ。
「ホントだよ!」
茶髪のボブにマリーゴールドのついたカチューシャをしていて、
くりっくりの愛嬌のあるコバルトの瞳と、
白い雪のような肌の頬は赤らみがかかっていて、
鮮やかな赤のドレスに、
百点満点なお日様のような笑顔。
おまけに毎日扉に話しかけて暇潰しをするという、謎なところもかわいい。
そう、僕が待ってた人。
よかった。よかった。
会えた、会いたかった。
簡単な単語しかでてこない。
だって会いたかったから仕方がない。
「ミランス、僕だよ。レン! 千葉レン」
「……レン?」
ミランスは小さく首をかしげてキョトン顔。
ミランスなら思い出してくれる! きっと大丈夫。
なのに、
「すみません」
彼女は急に謝りだした。
ゾワリ
背中がへんに冷えた。
嫌な予感。
……やだ。ミランスに忘れられたくない!
ぞわぞわと蝕むように周囲の空気が冷めていく。
っ! いや、大丈夫、覚えてくれてる!
だってミランスだもん。
そう自分に言い聞かせる。
大丈夫。そう思ってる。いや、そう思わせたい。
ミランスがやっと口を開く。
「──あなた、ダレですか」
あ。
本気だ。
ガチだよこれは。
マジで忘れる。
それを自覚したとたん、涙が勝手に流れた。
一筋二筋。
もう止まろうとしない。
心臓がぎゅっと一瞬へこんだ気がした。
だって辛い。
熱くて冷たい嵐が僕の胸を焼き付ける。
痛い。悔しい。悲しい。切ない。消えたい。
嫌なことしか考えられない。
仕方がない。僕にとってこの世界は不幸に満ちているのだから。
僕は不幸に祝福されているのだから。
『レーンーさんっ!』
こんな風に歓迎してくれたミランスはもういない。
あー、消えたい。
死にたいより消えたい。
このまま、すーっと消えられたらいいのにな。
そんな不幸の沼に落ちた僕を、ミランスが手を差しのべた。
「あなたは冒険家なんですか?」
「……一応、前回は冒険家で通ってましたけど」
「その言い方すごくひっかかりますけど、証拠ありますか? 証拠があれば一緒に冒険します」
ミランスの発言に周りはざわつく。
でも、そんなのどうでもいい。
しょ、証拠?
僕が冒険家だっていう証拠?
そんな、持ってない。
だって前回まではルロからもらった服のおかげで、みんなに冒険家だと思ってもらえたから。
今は学校指定の制服。
なんなら高校生だという証拠の生徒手帳まで胸ポケットに入ってる。
……うん。ダサい。
ルロからもらった服がない限り、僕が冒険者だってことを証明できない。
でも持ってない。
……だから、なに?
「僕に時間とケルベロス車を貸してください」
持ってないんならもらえばいい。
ここからまた始まった。
僕の冒険譚が。
なんかレンくんがヤンデレっぽくなってる(汗)
お読みいただきありがとうございます!




