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第七十四話 再来のドルーゴーリマ

「ぬあぁぁぁっ」


 まぶしい光を越えると、近代の西洋のような景色が目に入る。

 何度見ても素晴らしい。

 しゃわーっと流れる噴水。

 赤茶色のレンガ地面。

 美男美女ぞろいの街。

 はぁ。ため息がやみませんよ。

 あー、ドルーゴーリマ……来ちゃった。

 そうそう! 今回はリュックに必要なものをもってきたんだ。

 前回みたいに教科書をムダにつめてヒィヒィ言いたくないし。

 えー、お財布。スマホ。マッチ。筆記用具。ノート。ミニアンブレラ。そして一番大事なゲーム機。

 そんなとこかな。

 ホントに必要最低限しかもってきてない。


「えーっと、お城は……」


 辺りをぐるーっと見回す。

 すぐに見つかった。

 でかいし、超豪華。

 これを見つけられない人はいないと思う。

 あそこにミランスがいる……!

 そう思うとムダに腕が力む。

 ワクワクするようなドキドキするような、興奮状態に陥った。

 怖いなぁっ。でもここで逃げたら絶対後悔する。ま、まぁでも? 逃げる気なんてさらさらないからね!(汗)


***********************************************************


「あぅぅ……」


 ついに来てしまった、お城の前。

 ゴメン。本音を言わせて。

 どうやって入ったらいいんですかぁぁぁぁ!?

 鉄格子のドアの前で今、とても泣きたいです!

 いやいや、だってさ、こないだはミランスがいたから入れたじゃん?

 でも今回は僕1人だよ?

 終わったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ。

 しかもこの入り口のところに兵隊がダレ1人としていない!

 だから「いれてくださーい」って頼める相手がいないんだよ……。

 っていうかここ警備しなくていいのかな?

 悪者たち楽々と侵入可能なんだけど。

 ミランスのあの平和ボケな性格はここからきてるんだろうなー。しみじみ。

 なんてことはともかく!

 どうしよう、もう勝手に入っちゃっていいのかな?

 えぇ……。


「おじゃましまぁす」


 いかにも小物っぽい声と仕草で大庭園に足を踏み込む。

 当たり前だけどお城の庭はすんごくキレイだった。

 真っ赤なバラの低木は小鳥が乗っていて癒されるし、庭のど真ん中にある噴水はもう太陽に反射してキラキラしてるし。

 ……はぁ。もう僕の貧乏さが痛いくらいわかってしまうよ。

 きょろきょろ見ながら歩いていると、


「貴様! 何者だ」


「ふぁえ!?」


 上半身裸。

 異常な筋肉量。

 モヒカン頭。

 そしてなにより頭に残るヤバそうな顔。

 ……こいつ見たことある。


「おうおう、お前何しに来たんだ? YOUは何しにお城へ? なんつって」


 がはがは笑うのはダレがなんと言おうと、筋肉野郎。

 久しぶりの再開で抱き締めあうなんてことはなく、僕の頭に浮かんだ言葉は、

 くっそつまんねぇー!

 である。

 ……が、素直にそんなこと口にするのはよろしくないので、ゴホンとひとつ咳払い。


「えー、僕はミランスの……、ミランス様の、お供です」


「……お前が?」


「うん」


 筋肉野郎は僕の下から上をじろじろ見る。

 なんか疑いの視線をビンビンなげかけられてる気がするんだけど……。

 いやいや! でも僕は抽選でミランスのお供に選ばれる運命なんだ!

 ここは自信をもって言おうじゃないの。

 僕は澄まし顔で筋肉野郎を見下す。


「王様とご対面するんだな。俺がどうこう言えることじゃねぇ」


 筋肉野郎は僕をお姫様抱っこするなり、走り出した。

 うわっ、速いっ。

 顔面に向かい風が勢いよく吹きつけてくる。

 こいつがただ者ではないことは知っていたけど、僕を持ち上げてここまでの速度が出せるなんて。

 うーん、さすがだ。ヤバい。


「おらァッ」


「んがぁっ」


  ガゴーンッ


 筋肉野郎は僕を放り投げた。

 いや、床に打ち付けたという表現が正しい気がする。

 とにかくめちゃくちゃ痛い。

 頭の上でヒヨコや星がキュルキュル音をたてて回っているが、僕は急いで辺りを見回した。


「あっ」


 はちゃめちゃでかい部屋。

 その奥には王冠を被った男の人が待ちくたびれたように座っている。

 あ、ここ玉座の間だ!

 座っているのは王様かな?

 僕は王様の前にそそくさと、でも失礼にならないように足と腕を九十度にして向かう。


「お主、何者だ」


「僕は千葉連です。抽選当選者であると思います」


 深々とお辞儀をし、王様の目の前にひざまづく。


「ふぅむ」


 王様は僕にコバルトの瞳を向けるなり、首をかしげた。


「抽選とはミランスのお供のことをさしているのかね?」


「はい、もちろんです」


 僕の即答に王様は困ったように顎の髭をいじりだした。

 周りの兵士もザワザワしている。

 ……なんかスゴく嫌な予感。

 胸の奥からふつふつと沸き上がってくる正体不明のモヤが僕の不安を煽る。

 なにか温度差を感じる。

 僕が真実を話しているはずなのに、周りは怪しいものでも見るような目で僕を見る。


  ドグンドグン


 なんなの?

 不吉で、怖くて、不安で胸の奥が冷える。


「なにか……勘違いしていないかね?」


 王様は困ったように口を開いた。


「えっと……?」


 王様の発言の意味がわからず口ごもる。

 かんち、がい?

 別に僕、なんにも間違ったこと言ってないよ。

 そんな僕に王様は容赦なく言葉の矢を放ってきた。


「ミランスのお供は──ディート様だぞ」


 え?


「え、いや、僕がミランスの……」


「いや、お前さんじゃない。ミランスのお供は抽選でディート様に決まった」


 王様は放心状態の僕に釘を刺した。

 いや、ちょ、え?

 どういうこと?

 だって、だってだってだって。


「抽選は僕が当選したんじゃ……?」


「違うディート様だ」


 筋肉野郎も言葉の矢を放つ。

 待って。

 えっ、ちょ、え、あ、え、あ、えぇ!?

 つ、つまりそれって……、


「僕はもう、ミランスのお供じゃない……?」

レンくんドンマイ(笑)


お読みいただきありがとうございます!

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