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第七十二話 抽選

 ドキドキ。

 わたし──ミランスは落ち着かない胸を押さえながら玉座の間にたつ。

 ここにいる人全員がわたしとおんなじ気持ちだと思う。

 だって今日は


「ミランス様のお供を決める抽選会を始めます」


 わたしのお供が決まるんだ。

 冒険を一緒に進んでいく仲間が決まる。

 それってすごくワクワクしちゃう。

 そしてわたしがもう一つ気になるのは地球人と組むということだ。

 地球人は異世界人のこと!

 わたしの相棒が異世界人だなんて、うん、そりゃあもう、ね!

 うきうきしすぎて胸が疲れた。


「では抽選始めます」


 執事の声が音にはならない歓喜の中に響く。

 ちなみにどうして地球人を、そして抽選で選ぶかと言いますと……。

 昔からのならわしだかららしい。

 先代の勇者のお供を決めるときにも地球人全員参加の抽選をしたらしい。

 地球人だとこっちの世界にはない発想を見せてくれるらしい。

 そして昔は異世界人を召喚する力はあっても、異世界に行く技術がなかったらしいので、人を見極めることができなかったらしい。

 なので公平に抽選にしよう(公平なのかなぁ)! ってなったらしい。

 ……らしいばっかりでごめんなさい。

 ちなみに異世界人の概念を知ったのはとぉーっても昔で、地球で言うニホンに……うーんと、なんだっけ?

 確かお米だっけ? 小麦粉だっけ? どっちかが伝わったときあたりなんだって!

 そのときにヒミコさんっいう人がこっちに転移してきたとかきてないとか……。

 うーん、やっぱり異世界の歴史は勉強が足りないや。


「では取ります」


 執事は大きな大きな正方形の箱に手を突っ込む。


  ワサア ワサア


 わたしたちの好奇心を焦らす音。

 とてもじっとしていられなくて、思わず跳び跳ねる。

 その瞬間。


『ミランスと冒険していいかな?』


「……っ!」


 脳内に声が聞こえた。

 ダレ?

 ダレの声なの?

 優しくて愛おしい。

 そしてまた声の主もわたしを優しく愛おしむように語りかけてくれたような気がする。

 なに、これ。

 絶対知ってる。忘れちゃいけない人。

 心臓が早鐘を打つ。

 それと同時に頭がズキズキ痛い。

 脳の核にドリルを入れられたような激痛だ。

 

『好きだよ、ミランス』


 ダレかの声がまざまざとよみがえる。

 その度に胸が苦しくて切ない気持ちになる。


「ぁう……」


 ダレなの……?

 絶対知ってる。わかってる。

 でもわからないよ!

 どれだけ思考回路をまわしても答えはでてこない。

 急に寂しく、切なくなってきた。

 泣きたいよ……。

 わたしがうつむいた瞬間、



「抽選で選ばれたのは──ディート」



 執事の声がわたしの胸に引っ掛かった。

 ……違う。わたしのお供はその人じゃない。

 そう言いたいけど、まともな理由もないし、客観的に見たらわがままに思えてしまう。

 悔しいな。ディートさんはわたしのお供じゃないっていうのは確かにわかるのに、反論できないなんて。

 わたしの意見はノドに蓋をされたようにでてこなくなってしまう。

 しょぼくれたわたしの顔をお父様は微笑んで眺めた。


「ミランス。頑張るのだぞ。これから一年、魔王討伐の旅にでるために。そして……」


 そこでお父様は目を細めた。


「お供になってくださるディートさんのために、稽古をしてな」


 嬉しそうに笑うお父様を見ると胸がひりっと痛む。

 とても自分は身勝手なのではないかと、罪悪感に襲われる。

 ホントは「頑張ります!」って力強くうなずかないといけないけど、今日はムリだよ……。

 言葉がでてこなくて思わず空笑いしてしまう。


『ミランス、ルロ絶対また会うから、待っててね!』


「うぅ……」


 やっぱり聞こえる。

 その人はわたしを探してくれるのかな?

 ……だったら。

 だったらその人が来るまで、お勉強も運動も超頑張ろう!

 わたしはダレからもらったかよくわからない三角頭のストラップを握りしめて決意した。

あれれ? お供変わってるー!?


お読みいただきありがとうございました!

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