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第六十五話 めいどいんじゃぱん

 グリスとシーングス……!


「なによ! あんた、こないだミランスのことかわいいって言ってたのに、今は殺そうとするの? 意味わかんない」


 ルロの的確なツッコミに二人はクスクス笑いだした。

 そんな態度にルロは敵対心を増すばかりだ。


「あはは、そうかっかしないで。せっかくの美人が台無しだよ」


「あんたらに美人だなんて言われたくないわ。吐き気がするのよ」


「そんなこと言うと、ボクたち泣いちゃうよ?」


 シーングスが泣き真似をしてルロを見る。

 こうやって異性の気をひこうとするやついるよね。

 正直な感想をのべるとすれば……うぜー。


「勝手に泣いてください。その前に、タイムマネジーを返してくれませんか?」


「ミランスちゃーん。そんなドライな反応しなくてもよくなぁい?」


「嫌悪感がするので近づかないでください」


 ミランスに歩み寄って来るグリスをシッシと追い払う。

 ミランスがこんなに冷たい反応するなんてめずらしい。

 いや、魔王がからむとそんな感じか?


「ねーねーミランスちゃーん。楽しいことしない?」


 あー、こりゃナンパの王道の誘いゼリフだ。

 それを華麗にできてしまう彼らが憎たらしい。


「た、楽しいこと?」


「そうそう楽しいこと。遊ぼうよ」


「えっ……」


 待って。ヤバイヤバイ。

 ミランスがなんか興味持っちゃってる!?

 引き留めなくちゃ。


「うちの嫁に、やめてください」


 グリスとミランスの間に入り、やつをにらみつけた。

 するとグリスの瞳孔が一瞬大きくなった。


「嫁? なにを言っているのかい? お前とミランスちゃんが釣り合うわけないだろう?」


「レンさんはわたしの夫です」


「「は?」」


 ミランスはきっぱり言いきった。

 もちろん彼らは目を点にして僕を眺める。

 ふっ!

 ちょっと誇らしくて、そしてなによりミランスが断言してくれたのが嬉しくて、ニヤニヤが隠しきれない。


「聞いたかシーングス。あいつがミランスの夫みたいだよ」


「あぁ、そんなことあってはならないのに……」


「レンとか言うみたいだね」


「作戦変更、レンを──殺す」


 彼らはうなずきあい、僕の方へと笑顔で向かってくる。

 え、え、え、えぇ?

 なんか物騒な単語が聞こえたんですけど。

 とりあえず僕はミニアンブレラをとりだした。


「キミたちはこれが欲しいんだっけ?」


 グリスはタイムマネジーを右手で掲げるようにした。

 そしてシーングスがいまいましいあの笑顔でゼンマイのようなものをこちらに見せつけてきた。


「これはタイムマネジーをうごかすためのゼンマイだよー。欲しいよねぇ」


「欲しいです……」


 ミランスは即答だ。

 グリスはニヤリ、いや、ニタリと笑った。


「じゃあさ、婚約破棄してよ」


「こんにゃく?」


「違うわ、ミランス。結婚することをやめることよ」


 ルロの訂正にミランスがハッと僕を見た。


「こんにゃくのやつはしません! わたしはレンさんと一緒にずっとずっとずぅーっといるって決めたんです」


 ミランスは堂々と言い放った。

 え、控えめに言って照れるなぁ。

 非リアだった僕にとって、なんかこの感じごほうびでしかないんだけど。


「あっそ。面白くないなぁ。んじゃあ、三人には死んでもらわないとね」


 グリスはそう言い終わるか終わらないかで、かぶっていたシルクハットをブーメランのようにこちらへなげてきた。

 わ、ど、どうしよ!

 オロオロしていると、


「ハイパーハイドラオクシジェン!」


 ルロが氷を飛ばして守ってくれた。


「あ、ありがとう、ルロ」


「お礼はこいつらを倒してからよ」


 さっぱりと言い捨て、ルロは次々と攻撃呪文を発動させる。


「やぁぁぁぁぁっ!」


 ミランスは剣を抜いてシーングスを追いかける。

 シーングスは武器を持っていないのか、身を揺さぶって逃げるばかりだ。


「よそ見禁止」


「はっ!」


  カキンッ


 グリスの剣が振ってきたので急いでミニアンブレラで防御する。

 っていうかこの傘、剣からの攻撃も耐えられるってすごいな。

 日本製だからかな。さすがメイドインジャパーン。


「やぁっ」


 ミニアンブレラを振って振って振りまくる。

 しかしグリスからの攻撃も受け止めながら攻めなくちゃいけないのが、難しい。


「プロミネンス」


「あちゃちゃちゃちゃっ」


 ルロの炎が見事グリスに的中。

 彼のシンボル的存在、シルクハットが燃えてなくなってしまった。


「ぐ、グリス!?」


 シーングスが慌てて駆け寄る。

 それを絶好のチャンスにしたのか、ルロは不適な笑みを浮かべた。


「バーカ。プロミネンス!」


 二人が炎のなかに包まれる。

 外からは影しか見えない。


「やっつけた?」


「いや、いるわ」


 炎が消え、それでもなお二人は生き延びていた。

 ……強い。

 もちろん服は至るところに穴があき、オシャレだとは思えないのが現状だ。


「ミランス……あれっ。ミランスどこ!?」


 さっきまで隣にいたはずなのに、いなくなっている。


「あそこよ」


 ルロのスッと指を指す方向はグリスたちの後ろだ。

 確かに、ミランスはいた。

 だけど……なにしてるんだ?

 ちょこちょこ動いてよくわからない。


「ミランス、早く帰ってきなさい」


「お母さんかよ……」


 と、ツッコミを入れつつ僕も早く戻って来ることを願う。

 ミランスは「はーい」と無邪気に返事をして戻ってきた。


「あーあ、おれたちのファッションが台無しだよ」


「もとから台無しだと思うけど……」


 ボソッとルロが言ったけど、怒りがたまり始めている彼らには聞こえていない。

 ヤバイ、あの二人イライラしだしてる。


「……グリス、これは最終手段を使うしかないかな」


「そうだね」


  ひゅーうぃっ


 シーングスが口笛を吹くと、どこどこどこどこと地鳴りが始まった。

 それは──ぬいぐるみたちが迫ってくることを意味するのだった。

丁寧で悪い人って不気味ですよね


お読みいただきありがとうございます!

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