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第五十ハ話 動いた

 ……人間が人形に操られるって。

 衝撃の事実を知り、身震いする。

鳥肌がたちまくって肌という肌がブツブツしている。

マリオネットワールドはぬいぐるみがいっぱいのメルヘンな国じゃない。

むしろぬいぐるみいっぱいの恐ろしい国だったんだ。


「レンよ。お前は一人でここに来たのかい?」


オーライバーさんの言葉を聞いてハッとした。

ヤバイヤバイヤバイ!

ミランス、ルロ!

あの二人がいなくなったら、ダメだよ。

僕一人じゃなんもできないのに。

いや、僕が無能とか有能とか以前に、あの二人がいなかったらショッキングすぎるよ!

脳裏に満面の笑みを浮かべたミランスが。

照れながらそっぽ向くルロが。

……いかなきゃ。

気がついたら走っていた。

走って走って……もう周りにあるぬいぐるみが全て本気で怖い。

力なく垂れ下がっている首が、動かない瞳が、なにも発しない口が、全て怖い。

ホントは動くんでしょ⁉ じゃぁ、そんな「わたしぬいぐるみです」みたいな格好してないで動いてよ。

……でも実際に動かれてほしくない。

自分でも矛盾してることを言ってるのはすごくわかる。

それでもこれが僕の本音だ。


「あれ、うーん、レンさんじゃないかな?」


遠すぎて、豆粒みたいに見える動くものが僕を指差す。


「は? あいつがこんなに早く帰ってくるわけないでしょ? まったくホテルはどこなのよ」


「いやいや! あれ、どっからどう見てもレンさんだよ。あの、なんて言うか……冴えないかんじっていうかぁ……」


「確かに。あの素朴で部屋の隅っこでいじいじやってそうなシルエットは、あいつしかいないわ」


 なんかめっちゃ悪口言われているんですが!?

 いやさ、実際垢抜けないような顔とスペックなのは十分承知してるよ?

でもそれを言われたら僕だって傷つきますからね!

……まぁ、これで確信したよ。あそこに二人がいるって。


「おぉーい! 僕だよ、レン!」


「やっぱりレンさんだー!」


「あー、やっときた。でも、あんたなんか目障りだし、もっとゆっくり来てもよかったのよ?」


は?

イラッ。

目障りってなんだよ! ルロのわがままに付き合ったのに。


「あれ? でもルロちゃん『あいつ大丈夫かしら? まったく心配だわ』って言ってなかったっけ?」


「は、はぁ!? 言ってないわよ!」


 ……あ、この感じは心配してくれたんだなぁ。

 男ってものは単純で、好きじゃない子でも女子にキュンとするのだ。

 もちろん僕も当てはまる。だって僕今ルロのことかわいいって思っちゃったし。

 つまりなにが言いたいかというと、女子の諸君、好きな男子がいるなら積極的にアタックするといいよ。

 男子ってちょろいからすぐドキドキしちゃうから(しかしこれを書いているのは風音(じょし)なので責任はとりませーん)!


「……まぁ? 少し心配したんだから、ごめんの一言くらいあってもいいんじゃない?」


「ごめん」


赤面しながら強がるルロに頭を下げた。

……うん、かわいい。

そんなキュンキュン真最中の僕の間にミランスが入ってきた。


「それで、ホテルは見つかったんですか?」


首を横にかしげる仕草がまた絵になる。

あー、ダメだ!

疲れてて女子の動作が全てかわいくみえるよ。


「えーっとね。あ、はっ! そうだ! ここは危険なんだよ! とにかく危ない!」


***********************************************************


 僕は詳しいことを教えながら、二人をオーライバーさんのいる穴へと案内した。

 まだ穴につかない。

 自意識過剰かもしれないけど、ぬいぐるみがみんな僕らを見てきているようで怖い。

 ミランスとルロも僕の話を聞いてぬいぐるみを見る目が悪変した。


「レンさんっ。ぬいぐるみはなんで今動かないんですか?」


「多分、なんか条件があるんじゃない? 条件がなにかはわかんないけど」


 そーですか、とミランスは小さくうなずいた。

 うーん。条件がなにかわかったらいいんだけどね。


「まぁいいわ。とにかくあたしたちは無事にオーライバーとやらのとこにつけばいいんだから」


「うんうん! このままなにも起こらずに行けば、幸せな世界がまっているー!」


 そうだね。

 とミランスの言葉にうなずこうとしたその時、


「キエェェェェェ! うぐあらはい!」


「え、え、えぇぇぇぇぇ!?」


 振り返ると大勢のぬいぐるみが動いていた。

 なんで動いてるのっ?

 スーっと背中に冷たい汗が流れた。


「ヤバいわ」


「なんでヤバいのー? ぬいぐるみが動いてるんだよ! すごいねっ」


「「すごくない!」」


 ミランスの能天気さにはたびたび驚かされる。

 もうルロは呆れちゃってるよ。


「ミランス、こいつらは僕たちを殺してくるかもしれないんだよ?」


「……はっ! そうかっ。ん? っていうことはすごく危ないじゃないですかぁ!」


「そうだよ!」


 今更すぎる危機感にツッコむ。

 そんなことしてる間に、大きいコス○コにあるようなティディベアがミランスの目の前にやってきた。


「わ、あわわわっ。死にたくないですよ!」


「プロミネンス」


 オロオロするミランスの横からルロの炎が飛んでくる。

 見るとティディベアは燃え、灰になっていた。


「ミランス、逃げるわよ」


「……うん」


 うなずくミランスは涙目だ。

 怖いだろうに。

 僕らは必死でオーライバーさんのいるところへと走る。


「がああああああっ」


 今度は手のひらサイズのリスのぬいぐるみが十匹ほどこちらにやってくる。


「リス……ララ……ッ」


 リスを見たルロはララを思い出したのだろう。直立不動だ。

 僕もララが殺されたあの現場を思い出し、鳥肌がたつ。


「ルロ、大丈夫?」


 フラッシュバックしてしまった後の苦しみはひどい。

 ルロはうずくまって頭を抱える。


「レンさーん」


 ミランスから目を離したのが悪かった。

 彼女はリスのぬいぐるみに手足を押さえつけられていた。

 そこにいろいろなぬいぐるみが集まってくる。


「わぁぁぁぁぁぁぁぁっ! あぅ、触らないでください」


 ミランスがいる場所はぬいぐるみの山になっていて、姿が見えなくなっていた。

 どうしようどうしよう。このままじゃミランスが死んじゃう。

 とりあえずミニアンブレラを右手に持ち、ぬいぐるみの山の麓に立った。


「ミランスー! 聞こえる?」


「はい、聞こえま……うわぁぁっ! 痛い痛いっ。痛いです、やめてください。あぁぁぁぁぁぁぁっ」


 ──ミランスが、大変だ。

 もう気が気じゃなくなっていた。

 ミニアンブレラを野球バットのように振って、ぬいぐるみたちを蹴散らしていく。

 しかし量が多すぎて減らない。

 もう、どうすればいいの?

 途方にくれた。

 泣きたい。泣いてダレかが助けてくれるのを待ちたい。

 そうしたいのに僕はまだミニアンブレラを振っている。

 ミランスに生きてほしい一心で振る。

 どうしてミランスを助けるのが僕しかいないんだろう。

 もっと強い人が勇者のお供だったらよかったのに。

 だから、もう疲れたって泣いて、ヒーローが現れるのを待ちたい。ダレかが、絶望的なこの状況を覆してくれるのを待ちたい。

 じゃぁ、なんで僕は歯を食いしばってミニアンブレラを振ってるの? ()()()を待ちたいんじゃないの?

 思考と行動が矛盾し、自問自答する。

 うあああああああっ! 腕に力が入らない。

 どこの筋肉使ってるかわからない。

 でも振る。

 だって……だって!


 ──ダレかが来てくれるわけないんだから!


 こんなところにダレも来ないよ。

 それがわかってるから足掻いてるんでしょ!

 なのに現実逃避しちゃって。

 ダレも来ないから僕が助けるんだ。

 ミランスは僕が助けるんだぁぁぁぁぁぁぁ!


「アンブレラアターック」


 その瞬間、周囲が目がくらむ光に襲われた。


 ──レンの奇跡(まほう)はダレかをホントに想うときに発動する。

けっこー遅れましたすみません


お読みいただきありがとうございます!

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