第五十五話 オバケはいるよ?
「今日はもう遅いですし、寝ましょう! でも、ホテルとかはないんで野宿にしますか?」
「野宿!? ムリムリムリ! 死んでもお断りだわ」
ミランスの提案を即効拒否したのはルロだ。
首を横に思いっきり振って本気で嫌そうなご様子。
「そうは言っても寝床がないじゃーん!」
「正論でごもっともなのは十分わかってるわ。でも、ムリなものはムリなのよ!」
……すんごくむちゃくちゃ言ってるね。
思わずため息をついた。
「……ルロ、じゃぁどうするの? 解決策がない限り野宿確定だよ」
「……それはそうなんだけど……」
モゴモゴと口ごもる。
どうしても野宿は避けたいらしい。
うーん。でも難しいよね。ホテルのない場所でホテルに泊まりたいって言ってるんだもん。
非現実すぎて頭を抱える。
その横でミランスが勢いよく手を挙げた。
「はいはいはいはーい! わたし名案を思い付きました! ぬいぐるみをホテルにしちゃいましょーよー!」
「「は?」」
ルロと同時に首をかしげる。
天然が言うことは理解ができない。
これは世界共通だ(多分)。
「だからですね! このぬいぐるみたちをちぎって綿にするんです。そしてそのできた綿をくっつけて、かまくらを作るんです」
どうだ! とばかりに見てくる。
が、
「悪いけどやり方がサイコパスだし、どうやって綿をくっつけるの? ってなるからムリ」
「そうよ! ぬいぐるみをちぎるなんてかわいそうじゃない! それに、どうするの? 夜にそのぬいぐるみが霊になって追いかけてきたら」
「戦うけど?」
平然と言い放つミランス。
そのミランスの振るまいに僕らは絶句。
「あ、もしかしてルロちゃんってオバケ苦手なタイプなの? でも大丈夫だよ! わたしは守ってあげ……」
「うるさいうるさいうるさーい! 怖いわけないでしょう! 別に……」
「テケテケさんって知ってる? 夕方遅くまで学校に残っていると、自転車以上の速さでこちに向かって走ってくるっていう。それがねー」
「マジで絞めるわよ?」
ほんの出来心でルロに都市伝説を語り聞かせようとしたら思いっきりビンタされた。
あひゃー、怖い話とか苦手なんだなぁ。
「でも大丈夫だよ。オバケなんて存在しないから」
「「え?」」
僕の一言に女子二人があり得ないものを見るような眼差しを向けた。
え? なになに?
「レンさん、なに言ってるんですか? オバケはいますよ?」
真顔を少しこわばらせてミランスは教えてくれる。
ルロも静かにうんうんとうなずいている。
え? そういうの信じてる系の女子?
純粋な人たちだッ! え、かわいい。
そんなきゅんきゅんしている僕を気にもせず、ミランスは爆弾発言をした。
「オバケはいます! だって、魔王がいるくらいの世界ですよ? しゃべるネコさんにも会ったことありますよね? ルロちゃんだって天気神って呼ばれる存在ですし……」
「はっ……!」
僕は衝撃で動けなくなった。
その通りです。その通りです。
千葉連、高校二年生にしてあっち側の存在を認めました。
確かにそうだ。平気で人が魔法を使ってる世界だ。オバケがいてもおかしくはない。
言ってしまえばルロやミランスも魔女と分類できる立場だ。
……魔女もオバケを怖がるんだなぁ。
っていうか、もう安易にこっくりさんをするのはやめよう(←と言っても、一緒にこっくりさんをする友達が今までもこれからもいない)。
「じゃぁ、あんたホテル探してきなさいよ」
「なんで僕が!?」
「オバケをいないと思ってたからよ」
「因果関係皆無では!?」
しかしミランスも「いってらっしゃーい」と手を振ってるし……。
あぁ、もう! 仕方がない。
僕は歩き出した。
え? どこへって? それはぁ、……僕もわからない。
でも、うん。どこかにはたどり着くでしょう!
ヘンに楽観的になる僕は、これからこの国の真実を見るなんて思ってもいなかった。
こんにちは、風音です。
みなさんはオバケを信じてますか?
私はいたらいいなーなんて思ってます。
お読みいただきありがとうございます!




