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第五十三話 怪しい友人

 今日から高校生か。

 桜の木は桃色にそまり、まだ少し冷たい空気がほっぺたをつつく。

 僕は南星中学校を卒業し、高校生になってしまった。

 第一志望の高校だったから嬉しい。

 でも、ホントに底辺校だから、名前は言わないでおくね。

 僕は頭もよくないし運動神経もよくない。

 特に変わった才能もあるわけでもなく、ちょっと背の高い地味っ子だ。

 陰キャやって約十年。

 高校は、友達できたらいいな。

 なんて期待を胸に教室へと向かった。

 ***********************************************************


 新しい校舎に新しい教科書。新しい同級生に新しい自分。

 全てが特別に見える。

 とりあえず自分の席に座って先生を待つ。

 もう教室には結構な人数いるが、みんな凍りついたみたいに動かない。

 緊張してるんだなぁ。

 緊張してるのは僕だけじゃないって家で何度も言い聞かせてたけど、実際にホントにいるとすごく安心する。


  ガラガラガラ


「おはようございます」


 先生が入ってくる。

 女の先生だ。どうも気弱そうで、いかにも生徒になめられそうだ。

 歳は五十代だろうか。顔がたるみだしていて髪に白髪が混ざっている。


「今年一年よろしくお願いします……ね」


 愛想よく接したつもりなんだろう。

 でももとから目が細いからそれでもっと細めると少し不気味だ。


「えーっと、今日からこのクラスを受け持ちますね。川と口で川口(かわぐち)ですからね。覚えてくださいね」


語尾に()が多いなぁ。


「では、自己紹介してもらいますね。五十嵐くんからお願いしますね」


 自己紹介かぁ。

 僕は千葉だから真ん中あたり。

 もしかしたらラッキー苗字かもしれない。


「どうも五十嵐です。黒が好きです。中学のときはバスケ部に所属していました。高校もバスケ部に入るかどうかは決めていません。でも体を動かすのは大好きです。よろしくお願いします」


 五十嵐くん。

 整った顔に凛とした声。

 長い前髪とメガネのせいでよく目が見えない。

 でも、そのミステリアスな雰囲気がイケメン度をさらにあげた。

 キレイな顔だなーって思って見てたら、びっくりした!

 目があっちゃった。

 五十嵐くんは不思議そうに僕を見ると笑った。

 ──悪魔のような笑みで。

 えっ。そういう笑い方なのかな。

 本能が目線を今自己紹介している人に戻し、五十嵐くんを視界に1ミリもいれなかった。

 ……なんかすごく寒気がする。

 触れちゃいけないものに触れたみたいだ。

 冷たい心臓を落ち着かせ、机に頭をつっぷした。


「……次は千葉くんですよ」


 前に座ってる男の子が優しく教えてくれた。

 僕は小さく「ありがとう」と言って立った。


「えーっと、千葉連です……」


 たくさんの人の視線が集まってる。

 そう気がついた瞬間、全身鳥肌が立った。


「ゲームが好きですっ。よろしくお願いします」


 もっと言うこと考えていたのに勢いよく切り上げてしまった。

 はぁ……。こういう事件は新学期あるあるだよね。

 僕は再度机に頭をつっぷした。


***********************************************************


 休み時間。まだ教室のみんなは一人でいる。

 仲がいい人がいてもこんな空気じゃ会いづらいよね。


「千葉くん」


「はいっ!」


 後ろから声をかけられた。

 メガネのイケメン──五十嵐くんだ。

 な、なんだろ。

 なんか悪いことしたんじゃないかと、とりあえず焦る。


「よろしくね」


「え、あ、は、へぇ? よ、よろしく……?」


 会釈すると気が済んだのかどこかへ行っていしまった。

 ゆっくり僕は席についた。

 な、なんだったんだろ。

 五十嵐くんは自分の席で本を読んでる。

 『拝啓、気持ちは夏ですか?』

 表紙にはそう書いてあった。

 まぁ、いたって普通の本だ。

 うーん。面白そうなタイトルだなぁ。僕も今度読んでみよう。


  パチンッ


「さようならー」


「ふぇっ!?」


 外は黄昏にそまっている。

 もう夕方? さっきまで休み時間だったよね。

 みんな次々と教室を出ていく。

 えぇ……春ボケかな。きっと疲れてるんだよ……多分。

 僕も教室を出てバス停に向かう。

 中学までは徒歩で学校に行く感じだったからバス通学はワクワクしている。

 バックについた八つ橋のストラップが揺れて肘に当たる。

 中学校か。懐かしいな。

 って言ってもまだ卒業して1ヶ月そこそこしか経ってないけどね。

 やっぱ新しいとこに行くとホームシックになるなぁ。

 そういえば中学のときも五十嵐くんっていたな。そのこも結構顔面偏差値高い気がする。

 どこに行ったんだろう。

 少なくとも僕より偏差値高いところにいるだろうな。

 きっともう友達できてるんだろうな。

 妄想が働く。


「五十嵐くんは人生勝ち組だからね……」


「ふふふっ。嬉しいな」


 声がして振り返ると五十嵐くん(高校の方の)がいた。


「あ、キミじゃないです」


「そうなの? 自惚れてしまったみたいだね」


 悲しいなぁ、と苦笑する。

 五十嵐くんのメガネが夕日に反射して光る。


「五十嵐くん……もこっち側なの?」


「んー。そういうことにしておくかな」


 含みのある言い方。

 また警戒する要素が増えた。

 実はあの笑みを見たときから怪しいと思って見てたんだ。


「ははは。そんな警戒しないでよ」


 五十嵐くんは僕の目線を手で払う。


「親がいないんだ。だから寂しさをまぎらすためにキミといるんだよ」


 えっ。一人暮らし?

 そう聞きたかったけど触れていい話題なのかわからずなにも言えなかった。

 言葉が選べず沈黙が流れる。


「ねぇ、友達になってよ」


 唐突なお誘い。

 見開く目が大きくなってばっかだ。


「いい……よ」


「やったー。ありがとありがと」


 どうしてここまで喜ぶかはナゾだけど、とりあえず握手してペコリ。

 五十嵐くんはニヤニヤ嬉しそうだ。


「友達は助け合っていくんだよ。裏切りとかなしだからね?」


「う、うん」


 急いでうなずいた。

 だってなんとなく五十嵐くんが必死に見えたからだ。


「ずーっと味方でいてね」


 僕に笑いかけるなり、すぐにスマホを取り出した。

 そしてその後は一切僕に目を向けずスマホで音ゲーやってた。

 いいな。僕も音ゲーやってみよっと。

 これが僕が音ゲーに沼ったきっかけである。


「──敵対してしまうかもしれないからね」


「え? なんて言った?」


「いつか教える」


 このとき五十嵐くんが不敵に笑ったのくらい顔をみなくてもわかった。

夏休みだ!

たくさん執筆します。


お読みいただきありがとうございます

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