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第五十一話 仮装男たち

 だ、ダレ?

 振り向くと窓から男二人組がこっちを見て嗤っていた。

 一人は白のシルクハットに白一色のマントを羽織った怪盗のような男性。瞳の色がアメリカンチェリーでミステリアスな印象を与える。髪は黒色で、日本人の僕からしたらそんな異常な色の髪の毛ではないが、なんかすごく特別感が感じられる。

 もう一人はピーターパンそのものの衣装を着ていてこげ茶の髪に紫の瞳でこれまたマンガから飛び出してきたみたいな人だ。


「仮装大会ですか?」


 ミランスの純粋な疑問。

 当然の反応だ。こんな格好、ドレスを着る勇者がいてもあり得ない。

 しかし二人組はハハハハと大笑いしだした。


「聞いたかい? 仮装大会だって」


「あぁ、聞いたよ。ボクたちのオシャレセンスに追い付けていないのが目に見える質問だよ」


 くっくっく、と楽しげに会話する二人。

 なーんか嫌み言われた!?

 頭の右のほうがいらっとして右脳が殴られたような感覚がする。


「その厨二病患者みたいな格好がオシャレなわけ? わーけわかんない」


 嘲笑われたら嘲笑い返すルロの精神でナゾの二人組を罵倒する。

 しかし二人は紳士的な笑みを浮かべた。


「かわいそうに。オシャレがわからないなんて、実に哀れだ」


「そっくりそのままお返ししてやるわ!」


 べーだと舌を出して敵対心まるだしだ。

 ミランスは「まぁまぁ」とルロをなだめると二人組の前に立った。


「こんにちはミランスです。あなたたちはどちら様でしょうか?」


 優しく、親切に聞くミランス。

 しかしシルクハット男はそんな彼女を凍りつかせる言葉を放った。


「おれたちは──魔王様の仲間だよ」


 ニッコリ。

 気品のある笑顔なのに言ってることは恐ろしい。

 ミランスは一歩後ずさりする。

 その様子を見たピーターパンもどきは一歩ミランスのほうへ踏み出す。


「残念だね。ミランスちゃんは勇者でしょ? あーぁ、これじゃぁ敵になっちゃうね。悲しいなぁ」


 ちっとも悲しそうには見えない。むしろオロオロするミランスを楽しげに見つめてる。

 もっと意地悪したいと思ったんだろう。

 手を伸ばしてミランスの頭に触れようとする。


「ミランスで遊ぶな」


 僕がミランスの前にたちはだかって、伸びてきた手を払う。

 自分が思ってるよりも低い声がでた。

 そして二人組をにらみつける。


「ぶはーっ! 遊ぶなぁ? 面白い。キミはミランスちゃんのなんなんだ?」


「仲間だよ。そっちこそ何様のつもりだ」


「神様のつもりかな? 名前はグリス。よろしくね」


 優しく笑いかけてくれるシルクハット男──グリス。

 いちいちへらへらしててうざったい。


「ボクはシーングス。よろしく」


 こりゃまた愛想よくこっちを見るピーターパンもどき──シーングス。

 どうも二人の笑顔の裏には陰がありそう。

 とりあえず僕らは三歩くらい下がる。


「あ、あのっ」


 タムさんが僕の横に駆け寄る。


「あの人たち俺にタイムチェンジに入るよう言った人です」


「そうなの!?」


 せっかくタムさんが耳元でこそっと教えてくれたのに大きな声をあげてしまった。

 うぐ……。申し訳ない。


「ボクね。取ってきちゃった」


 グリスがいたずらっぽく笑い、そして


「ジャーン」


 ポケットから小さな金の鎖がついた時計を取り出した。

 この表情で時計を見せてくる……。

 察し能力が低い僕でもなにが言いたいかわかった。

 これは……


「世界の時間を操れる時計──タイムマネジーだよ」


「あんたねぇ! 自分がなにやってるかわかってる? 盗難よ。しかも国家機密のものを」


「あははは。わかってるよ。準々承知してるって」


 シーングスは何度もうなずく。

 なんであんなに緊張感がないんだ?

 始終顔に笑みが張り付いていて気持ちが悪い。

 恐怖すら覚える。


「わかってるんなら返してください」


 ミランスは右の手のひらをグリスに向けた。

 しかし彼は首を横にふった。


「やだね」


 こういう反応は予想ずみだけど……。

 どうしよう。どうしたら返してくれるんだ?

 思考回路をぐんぐん(めぐ)らす。

 だがしかし、なにも思いつかない。


「グリス。そろそろ行かなくてはならないのでは?」


「そうだね。じゃぁ、また会える日まで! さようなら」


「えっ! ちょっと待って!」


 二人はお辞儀をするとボンッと煙をあげて消えてしまった。

 逃げられた。

 突然の出来事すぎてしばし沈黙が訪れる。


「どうしましょう」


 ミランスのつぶやきが沈黙を切り裂いた。

 焦る声とあわない焦点。

 心配になって背中をさする。


「役に立つ情報かどうかはわかりませんが、僕があの二人と一緒にいたとき、マリオネットワールドに行くとか行かないとか……」


「そう言ってたんですか!?」


「……多分そうだと思います。記憶違いかもしれませんが」


 ミランスの不安げな瞳に決意が灯る。

 もちろんルロや僕もそうだ。


「行きましょう」


「もちろんよ。あいつぶっ殺す」


 殺意のこもりすぎている声のトーン。

 あ、改めて言います。……ルロ怖い!


「タムさん、ありがとうございました。敵対してしまったときもありましたが最後は仲良くなれてよかったです」


 握手をかわすミランスとタムさん。

 お互いうなずきあって手をほどいた。

 いいなー、僕もミランスと握手したいなー。

 物欲しげな視線をミランスに向けたが、こっちを見る様子はうかがえない。

 うぅ……悲しい。

 自然と肩が下がる。


「強く生きなさいよ」


 ルロはそれだけ言ってめずらしく微笑んだ。

 へぇー、ルロもあんな顔できるんだ。

 なんて感心してるとみんなの視線が僕に集まる。

 えっ。もしかして僕も一言なにか言えって?

 タムさんにそんな期待の眼差しを向けられたら断れないよね。


「えーっと、両想いになるのが目標じゃないって僕は思ってるから。だから」


 タムさんが語ってくれたノッカさんへの想いが頭の中で全部再生される。

 僕がミランスへ想う気持ちと少し違うとこがある。

 でもそれでいいんじゃないかな。

 愛の特性(かたち)は人それぞれだ。

 結局その人のことが大切だってところに、ありがとうって言いたくなる感情に辿り着けばいいんじゃないかな。

 これが初恋なのにこんな偉そうに言っちゃっていいのかな?

 まぁ、いいいか。間違ってたらまた修正すればいいし。


「タムさんのこと応援してるね」


「……ありがとう」


 タムさんが本気で感謝したかどうかは僕にはわからない。

 でも喜んでくれたのは確かだろうな。


「では行きましょう」


 ミランスは歩きだした。

 僕とルロも後ろからついていく。

 僕らだけじゃない。タムさんだってもう、歩きだしてる。


 

あー! 第四章終了!

疲れたぁぁぁぁ。っていうか四章だけ長くない?

ま、レンくんが成長できた章ですし、いっか!

よーし! 抽えらはまだまだ続きます!

これからもよろしくお願いします!


お読みいただきありがとうございました!

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