表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/99

第四十七話 閉じ込められました

 硬い地面を感じる足。

 なぜか震える太もも。

 強く握りしめている両手。

 がちっと固まったように動かない肩。

 わなわなする唇。

 冷たい空気を吸う鼻。

 血の気が引くのがわかる耳裏。

 無機質な部屋を見渡す瞳。

 風になびく髪の毛。

 全身(からだ)が怪しい気配を余すところ無く察知している。

 それはミランスもルロも同じだろう。

 顔がこわばってそのまま静止している。

 あるはずないと言われている第六感というものが僕たちを襲う。


「なに? このプレッシャー。尋常じゃないわよ」


「ととと、とりあえず出ましょう! この部屋にいても、なんにも進歩しません」


 扉のとってに手をかけ、そのまま後ろに引くとまた地獄の螺旋階段が目に映る。

 ……はずだった。

 開かない。開かない開かない開かない!

 ミランスがいくら扉を開けようとしても、そうならない。

 ルロが貸しなさい、と開けようとするがムリだ。1ミリたりとも効果が見られない。


「ひ、開けゴマ」


「なにその効果なさそうな呪文!」


「僕の世界の魔法の言葉だよ」


「あんた魔法使えないでしょーがー!」


「今はこんなことに縋るしかないんだよ!」


 効果はなくても片っぱしから試してみる。

 当たり前だが無意味だ。

 ゴクンとゆっくりつばを飲み込む。


「どうしますか?」


 『閉じ込められた』とはダレも言わない。

 そんなことないと思っていたい。

 現実を直視したくないのだ。

 しかし閉じ込められたことはみんなわかっている。いや、知っているんだ。


「扉をぶち破るわ。木製なのよ? こんなの簡単に……」


  カキンッ


 ルロの細いキレイな足が、かかと落としを決めた。

 ……のに! 扉は壊れない。

 ウソでしょ、とルロは言葉を失う。


「わたしが! やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 脳筋の代名詞であるミランスがアタックしても扉は壊れなかった。

 なんで!? 木製だよね?

 そんな冷や汗をたらす僕らを扉は嘲笑うようにたっている。


「おかしい……よ」


 ミランスの声がか細くなっていく。

 ルロも焦点が定まっていない。

 僕だってそうだ。不安で不安で仕方がない。


「ミランス」


 安心させたくて彼女の名前を言う。

 いや、逆だ。

 安心した顔を見て自分が安心したいんだ。

 しかしこれで落ち着くわけがない。

 ミランスは涙が出そうでウルウルしている瞳をグッとこらえるのに誠意一杯だ。


「ここで暮らすのはどうでしょうか? ベッドも一つだけですが、ありますし」


「一つのベッドで三人はどう考えてもせまくって、ぎゅうぎゅうになるでしょ!」


「そうよ! っていうかミランスと同じベッドは百歩譲ってオーケーだけど、こいつと同じとかマジあり得ない。ぺっぺよ!」


「じゃぁ、わたしとレンさんでベッド使うからルロちゃんはそこら辺で寝ればいいよ!」


「そーゆー問題じゃない! あたしの扱いひどくない!?」


「……多分僕のほうがルロからひどい扱い受けてると思う」


 ボソッと不幸自慢をした僕をスルーし、ミランスはう~んと首をひねる。


「どうしましょう」


 ここから抜け出す方法……。

 僕は部屋をぐるっと見回した。

 使えるものなんてなさそうだしなぁ。


「はっ! あの窓もどきから逃げられるわよ」


 ルロが窓もどきから首をだして外を見ている。

 窓もどき──部屋にある四角く切り取られた穴。さっきミランスがやっほーって叫んでたやつだ。

 確かに外と繋がってるけど……。


「こっから飛び降りるのはちょっと……」


 僕もルロと同じように窓もどきから外を見る。

 意外とのぼったんだなぁ。

 六階建てのマンションを簡単にこえていると思う。

 もしかしたらビルの三十階くらいはいっているんじゃないかな?


「あんた、頭かったい! バカね。そんなんだからモテないのよ」


「いいもん! っていうか、そういう偉そうなルロだってモテてないじゃん」


「高嶺の花はモテないっていうでしょ」


「口の悪い高嶺の花がいるものでしょーか!?」


 一瞬沈黙が訪れた。

 が、僕の正論を聞いていなかったかのように受け流す。


「あんたは下を向きすぎなのよ。上を見て暮らしなさい。日常のクセがいろんなとこで影響すんのよ」


 上?

 窓もどきから上を覗いてみる。


「はっ!」


 ね? と勝ち誇ったようにルロは笑う。

 それは盲点だったよ。


「塔の頂上が見えない。まだまだ上にあるってことだ。だからもう上るの諦めてここで暮らそう。そういうことだよね?」


「そんなわけないでしょ!」


 えーっ! 自信あったの考察だったのに怒られた! ガックシ。


「やっぱり飛び降りるのー?」


 ミランスが首をかしげる。

 その仕草にルロはため息ついた。


「あたしはねぇ、ここからみんなを飛び降り自殺をさせたいわけじゃないの。安心安全で行きたいのよ」


「ほへぇー」


 わかってるんだかわかってないんだか、ミランスは相槌をうつ。

 ミランスの「ほへー」はかわいい! 記念物だよ!

 キュンキュンしてる僕の横でルロが口を開いた。


「よーく見なさい。上にも窓もどきがあるのよ」


「「そうなの!?」」


 窓もどきから再度顔をだし、じーっと観察。


「……ホントだ! 窓もどきがある!」


 僕が覗いている窓もどきから5メートルくらい上にもう一つ窓もどきがあった。

 ミランスもわお、なんて言ってうなずく。

 ルロはなにが言いたいんだ?


「ここからジャンプして上の窓もどきに入るのよ」


「いやいやいやいやいやいやいや! むちゃくちゃだよ! 自殺者だしたくないとか言ってた人が言う作戦じゃない!」


「なんで?」


「リスクがどう考えても大きいでしょ!」


 こっから約5メートルだよ?

 ちょっとキツいなぁ。


「あ! はいはいはーい! 氷を使うのはどうでしょうか?」


 挙手で自信満々に発言するミランス。

 僕とルロはキョトン顔で見合せる。


「ルロちゃんの氷だったら足場が作れるんじゃないでしょうか?」


「そうね。名案だわ」


 褒められたミランスは照れたように笑い「ありがとうございます」と会釈する。


「ハイパーハイドラオクシジェン」


 ルロの手のひらから大きな氷の塊ができた。それを螺旋階段のような形にして窓もどきと窓もどきを繋げる。

 うーん、さっきさんざん上った螺旋階段を見ると、すごーくいやな気持ちになるなぁ。

 まぁしかし脱出するためだ。

 僕らは慎重に氷の螺旋階段に上る。


「よっし!」


 無事上ることができた三人。

 途中ミランスが足を滑らせてヒヤヒヤしたけど、まぁ、終わり良ければすべて良しだから!


「うわー、なんの部屋でしょうか?」


 着いたところは螺旋階段でもベッドが一つしか置いていない場所ではなく、少しだだっ広い部屋だ。

 とくに家具もなにも置いていない。

 ホントにガランとした部屋だ。


「あーあ、抜け出しちゃったんですかぁ」


 ダレ?

 部屋の奥から人影が見える。

 その人は一歩ずつこっちに近ずいてきた。


「ここは神聖な場所だから、墓場にはしたくないんですけどね」


 男の人のゆっくりとした低い声。

 ……この声聞いたことある。


「ミランスさんたち準備はいいですか?」


 不敵に笑う男。それは

 ──タムさんだった。

あっちー!

グダグダしたい風音です!

みなさん熱中症には気をつけて!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ