第四十一話 三行半を笑顔で突き付けられた
「ふわぁーっ」
いでででででっ。
横たわっていた体をゆっくり起こす。
朝の日差しがまぶしい。
バーでタムさんの慰め会をして、そのまま店内でバタンキューしてしまったようだ。
まぁ、寝てるのは僕だけじゃないみたい。
悪の組織全員とミランス、ルロがソファーや机の上にベロンベロンになって眠っている。
勇者がこんな無防備な姿を簡単に見せていいのかなぁ?
少々心配になる。
んー、まぁいいやっ。
そうだ、せっかくこんなにキレイな町に来たんだ。お散歩にでも行こうかな。
僕は静かーに扉を開けて、静かーにバーを出た。
ピツピツピツ
鳥の声が元気だ。かわいいし、なんか癒されるなぁ。
朝早いからだろう。
人が少なくて静かだ。
いたとしてもジョギングしたり犬の散歩だったりと、やっていることは僕たちの世界と同じ感じだ。
ちょっと懐かしく思う。
……でも、ドルーゴーリマ王国の王様からもとの世界に戻れる魔法具をもらってるから、すぐに帰れるけどね。
そんなこと考えて歩いていると、昨日告白した場所──噴水の前に来ていた。
昨日の記憶が僕の中でよみがえる。
あのときタムさんは、ためらわれることなくふられた。
女性の声は凛としてたし、言葉の一言一言に想いがあった。
二人ともまっすぐな気持ちだった。
だけどその女性のほうがまっすぐすぎて、タムさんと交われなかったのだ。
ズキンと胸が痛む。
まっすぐすぎるから怖い。
ミランスも恐ろしいくらいまっすぐだ。
……簡単にふられる。
脳内がギンギンしてひんやりした。
噴水の水に映っている僕は真っ青だ。
「あっ」
恐怖に浸っていた自分を見て我に返る。
なんで怖がってるの?
僕には告白する相手なんていないはず。
一生非リアだって……。
「うっうっうぅー、うっ」
突然泣き声が聞こえる。
……僕の隣でだ。
女の人がいた。その人は当たり前のように美人っぽかった。
ロングで二重たれ目の童顔っぽい(……ねぇねぇ、僕の周りにいる女性はみんな顔面偏差値三桁以上の人じゃなきゃダメって決まってるの?)
とりあえずムシだ。
だって多分関係ない。星座占いで十二位だったとか、ブロックおもちゃを踏んだとか、そんなどうでもいいことだと思う。
それに僕が関わりたくないのにはもう一つ理由がある。
この女性……タムさんの想い人だ。
もし万が一タムさんに見られたらまずい。
そーっとその場を離れる。
……はずだった。
「うおっ」
女性に服をおもいっきり捕まれる。
ホラーホラーホラーホラー!
泣き顔の女に服をひっぱられるとか、もはや都市伝説なんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉっ?
ガタガタと恐怖でその場に起立。
女性はしめしめとうなずく。
「こんにちは」
「今はおはようございますの時間ですよ?」
「……うるさい☆」
ヘンなツッコミ入れると殴られそうなので黙っておく。
「私はノッカ」
「そうですか」
「そうですか、じゃなくてあなたも名乗るのよ!」
なんか偉そう。ルロほどじゃなさそうだけど。
しぶしぶ口を開く。
「れんです」
「レンさんね、わかった」
女性は満足気に笑った。
真っ赤な目が細くなって不本意ながらもかわいく見えた。
「……どうして泣いていたんですか?」
聞いてほしいんだろうなぁと察し、仕方なく質問してみる。
ノッカさんは嬉しそうに「ダイレクトだね」と嫌そうな口ぶりをしてみせた。
「失恋したの」
「へぇ、失恋。失恋は大変ですね……って、し、失恋!?」
ためらうことなく告げられた驚愕の事実。
うっそーん!
いやだってノッカさん、昨日タムさんのことふったよね!?
その翌日にノッカさんがふられるってどーゆーことぉぉぉ!?
みなさんふられすぎではっ?
驚きを隠せない僕を見て、ノッカさんはクスクス笑う。
「ノッカさんの想い人って、ディートとかいう人ですよね?」
「うん」
静かにうなずく。
その表情はすごく寂しそうだ。
「今朝、手紙がきたの」
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『ノッカへ』
『いい知らせがあるんだ! 聞いてくRE!』
『実はオレ結婚することになったんDA!』
『超かわいくって、天使みたいなやつなんだZE』
『そんな人に出会えてまじ卍! 最&高だわ』
『それを一番最初に、幼馴染みのお前に知らせたかったんDA!』
『……オレ、多分ポロゼにはもう帰らないと思う』
『悪の組織によろしくって言っといてくRE』
『ディートより』
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ノッカさんから手紙を見せてもらった。
……ずいぶん無神経なこと。
ノッカさんの想いをまったく知らないみたいだ。
もう一つ言うならば、語尾もツッコミたい。
なんかチャラ男な雰囲気がビンビン伝わってくるんだけど。
「ディートは旅に出ると言って突然姿を消したの。……あ、でもあなたはそのこと知ってるよね。悪の組織の一員だし」
「違います! あなたの勘違いです!」
即否定&全否定。
だってだって! あんなやつらの仲間だって思われたくないでしょ!?
もう首がはずれる勢いで横に首をふる。
「そ、そんな反応されると、こっちが困るんだけど」
「じゃぁ、信じてください。僕は悪の組織じゃない、僕は悪の組織じゃない、僕は悪の組織じゃない、僕は悪の組織じゃない、僕は悪の組織じゃない、僕は悪の組織じゃない、僕は悪の組織じゃない、僕は……」
「わっ、わかったわかった! あなた怖い!」
引き気味だけど、どうやらわかってもらえたみたいだ。
安堵してため息がこぼれる。
「僕は、たまたま偶然ホンット超ミラクルで悪の組織にあったの! いい? それでタムさんの恋を見守りたいって言う僕の仲間がいたから今ここにいるの! わかった?」
コクコクと早くうなずくノッカさん。
異論はなしだ。
「……そういえばタムさん」
ノッカさんがふられたんだ。
タムさんにチャンスが来たんじゃない?
期待がワッと胸の底から這い上がってくる。
……が、ノッカさんは頭を左右にふった。
「ううん。付き合えても、付き合えなくても、私は私の一番をディートにしたい……ヘン?」
「ヘン、じゃないけど……。そうしたら生涯独身になっちゃうよ?」
「いいよ。私はディートのためになにかしたいから」
ふふっと笑うノッカさん。
でもその笑みには哀愁がただよっている。
「私はディートの一番になれなくても、私はディートが一番なの。だから、ディートを笑顔にしたい」
綺麗事だね、と言おうかと思ったがムリだった。
だって彼女の切な気な表情は、幸せそのものだ。
そんな純粋な想いを踏みにじるのはよろしくない。
だから僕は無機質に、「そっか」とだけ言ってバーへ向かった。
こんにちは風音です!
お菓子をかけて6月は頑張っております。
そしてですね、今気付きました。
今月テストあります(笑)
え、大丈夫? お菓子なしになるやん、と思いましたが大丈夫です。
絶対いけます。
お読みいただきありがとうございました。




