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第四十話 後悔告白

 あっ。

 振られちゃったんだ……。

 心臓がギュッと冷たい手に捕まれた。

 ……タムさん。頑張ったよ。


「そ、そう、か。ディートが好き、なんだっ。いいやつ……だもんね! あいつは、スゴいよ。カッコいいし、頭いいし、真っ直ぐだし……」


 カタコトながらも必死にディートという人のことを褒める。

 表情は見えないけど、まだ傷ついてるようには見えない雰囲気がする。

 なんだろう。タムさんはムリやり褒めている感じがした。

 どうしても相手の女性から評価を上げたいがために褒めているように見える。

 もっと言うと「振られてるのにちゃんとディートのこと褒めてる! え、いい人じゃん! やっぱり付き合おう!」みたいなのを期待している気がする。

 でもそれが見え見えなのがまたかわいそう。

 女性のほうも気づいているだろう。

 見ているこっちがツラくなる。


「そうだね、ディートはいい人。ダレかを褒めて自分の株を上げようとか、絶対しないから」


「えっ? え、あ、ぁ、」


 言葉の意味を悟ったのだろう。

 どんどんタムさんの声がしぼんでいく。

 大好きな人に比較されて、けなされたのだ。

 悔しいだろう、悲しいだろう。

 僕まで胸が痛い。

 ……うん、気づいてたんだ。


「タム。私はディートが好きなの。私はディートと映画に行きたい。私はディートとレストランで大好きなものを食べたい。私はディートとデートがしたいの」


 女性はディートが好きなんだ。本気でだ。

 小細工をしたところで彼女の気持ちは変わらない。

 なにをやってもディートへの想いを奪うことができないのだ。

 ……やっと失恋だ。

 じゃ、と手をふって帰る女性。

 タムさんは機械的に手をふり返した。


***********************************************************


「あああああああああああ! もー、あー! うあぁぁぁぁぁぁぁっ」


 一人バーで絶叫して、マスターに「お静かに」と注意されるのはタムさんだ。

 あのあと僕らはタムさんをなだめよう、ということでバーに来た。

 悪の組織もみんな来たから、お店がけっこうぎゅむぎゅむだ。

 一応言っておくけれど僕はお酒飲んでないからね!? おつまみ泥棒してるだけだから!


「タム、よくやったよ」


「でもっ、でもぉーっ」


 タムさんの肩をポンポン叩くのはアントだ。

 ルロは暑苦しっ、と賤しむ。


「いやいやー、しかし、公開告白って結構勇気あるぞー」


 悪の組織の一人がフォロー。

 ミランスもコクコクする。


「そうですよ! 告白成功率は50パーセントと言われているなかでよく公開告白を選びましたね! ホント、心配したくなるくらいの度胸と頭ですよ」


「もしかしてめっちゃディスられてる?」


「自分で考えてください」


 ミランスは失恋直後の相手にさえ、気づかいというものがない。

 だけど気をつかわれるよりは楽だろう。


「でも、悔しいよな」


「まさかディートがなぁ」


 悪の組織たちが複雑そうにため息こぼす。

 確かディートって悪の組織の一員なんだっけか。

 うーん。三角関係ってやつかな。気まずいだろうなぁ。


「ディートさん……」


 ミランスは意味深に彼の名をつぶやく。

 ホントにディートってダレ?

 まさか、ミランスの元カレじゃないよね。

 いやいやミランスはさすがに交際経験ゼロだよ。あんなに無知なんだし。

 それにミランスって結婚相手が初彼! みたいなことがあり得る気がする。

 なんか……一途? そう。


「時間が戻せたらいいのにー」


「なんでですか?」


 タムさんの言葉にミランスが首をかしげた。

 しかしタムさんは堂々と胸を張る。


「時間を戻せたらもっともーっと彼女を惚れさせてから告白するんだ」


「悪いけど、惚れないと思うわ。あのコ、ディートに一直線でしょ? あんたの出る幕はないのよ」


「でも、もしかしたら……」


「その()()()()()()に縋ってたらキリがないわよ。ちゃんとあきらめなさい。それがあんたにとっても彼女にとっても幸せなの」


「そう、なの?」


「答えを聞くヒマがあればすぐに実行しなさい? わかった?」


 タムさんがスゴい勢いで首を縦にふる。

 ルロすごいなぁ。

 姉貴感が半端じゃない。


「る、ルロとか言う女」


「気安く名前を呼ばないでくれる? あと女じゃなくて、お姉さんって呼んでほしいんだけど」


「へっ、へい! 姐さん」


「なーんかあたしが思ってるのと違う気がするんだけど?」


 うん、ルロ予感的中だよ。

 でも、うん、仕方ない。

 ルロの怪訝そうな顔はスルーして、アントはルロに近づく。


「姐さん、………悪の組織に入りやせんか?」


「は? 嫌だ」


 The即答。

 こんなにあっさり断られると思ってなかったのだろう。アントが目をパチパチさせる。


「どうして!? ディートを首にして、姐さんを副リーダーにしてやるぞ」


「もっと嫌だ」


 ルロは断固拒否だ。

 しかしアントも一向に引こうとしない。


「悪の組織に入れば、超逆ハーレムだぜ!」


「こんなむさ苦しい男たちと逆ハーレムなんて罰ゲームだとしか思えないわ」


「それでも、悪の組織には姐さんみたいに気遣いがなくて、デリカシーもない、ズバッとアドバイスできるやつが欲しい!」


「あんたよくそんな誘いかたであたしがついてくると思ったわね。っていうか、デリカシーのなさだったら、あいつがピカイチよ」


「……えっ、僕!?」


 ルロが僕を顎でクイッとさす。

 まさか僕がでてくるとは思ってなかったからすっとんきょうな声がでてしまった。


「いや我々はただデリカシーのないやつを入団させたいんじゃない。センスあるノーデリカシーが欲しいんだ」


 なにそのセンスあるノーデリカシーって。


「ディートもちょっとだけセンスあるノーデリカシーだったんだよ。……ホントにちょっとだけどな」


 ねぇ、ホントにディートってダレ?

 モテるのにノーデリカシーとか意味不明なんだけど。

 一回会ってみたい。

 そんな僕の望みが叶うことは、そう遅くはないのでした。

風音です。

みなさんは悪の組織に入りたいですか?

わたしは……1日だけなら(笑)


お読みいただきありがとうございます!

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