三十六話 丁寧語の真相
ガウガウ! とケルベロス車がタイムタスク王国へ向かう。
あの後、予告状の主が魔王だと知ったとたん、ミランスは深刻な顔つきになって僕とルロをケルベロス車に乗るよううながしたのだ。
まぁ、ルロは「なに? この怖い生物! 乗れたもんじゃないわ」とケルベロス車を非難した(もちろんケルベロスは怒ってめっちゃルロに向かって吠えてた)。
だけど「じゃぁ、こなくても大丈夫だよ?」というミランスの無神経な気づかいに言葉を詰まらせ、しぶしぶ乗ったのだった。
「そういえばルロちゃんってどうして国家機密をどうやって知ったの」
ガタガタッ
ケルベロス車が石にひっかかって揺れる。
ルロはミランスの問いかけに1ミリも動揺を見せずに返した。
「あたしのことよ。国家機密くらい知ってて当然だわ」
「わたしが聞いたのは『どうして知ってるか』じゃなくて『どうやって知ったか』だよ?」
ド正論。
相変わらずのミランスの真面目な態度にルロは苦笑してフリーズしてる。
こりゃマジレスの天才だなぁ。
僕は二人の様子をはたから失笑する。
いや~、こういうのは傍観者であるべきなんだよね。うん。ムダにあのナンセンスな世界に入ると我を失ってしまう。
「な、なんだっていいでしょ! そんなことより、ほらさっきミランスの言っていたナルトッツォって……」
「レンさん見ましたか? ルロちゃんが話をそらしましたよ?」
「うん、見た」
僕とミランスで涼やかな視線を向ける。
案の定ルロは顔を真っ赤にさせていた。
……図星だね、うん。
「なによ、あんたたち! もっとあたしを信頼したらどーなの!? っていうかミランスはどうしてあいつには丁寧語なのよ。なに? あたしは尊敬してないってこと?」
「そんなことないよ! なんでそう卑屈になっちゃうの? ルロちゃんのこと尊敬しまくってるよ! でも友達だし……」
ルロは『友達』という単語にボッと赤い顔を更に赤くする。
もう完熟ピークのリンゴみたいだ。
「あ、ごめん! ルロちゃんは友達って思ってなかった!? 図々しいよねっ。ごめん」
「え……? 僕が友達拒否したときと恐ろしいほど反応が違くない?」
「……だ、大丈夫。ととと、とも、友達よっ。だ、だから、あ、安心しなさい」
プイッとそっぽ向いちゃうルロ。
しかしその一方で、キラララーン☆ とミランスの瞳がきらめいた。
口のはしっこが持ち上がっていて、喜んでいるのが一目リョーゼンである。
うん、かわいい。
「……あ! ってことはあいつとは友達じゃないってこと?」
ニマニマ、ニヤニヤと僕を指差して眺めてくる。
うっわー。すっごい悪意ある顔してるよ。
こういう人間にはならないようにしようっと。
他山の石、他山の石。
「わたしは友達になりたいんだけどレンさんは認めてくれなくって……」
「ふーん? ミランスの努力不足とかが原因じゃないの?」
「辛辣ッ!」
「まぁ、でもいいんじゃない? あんなやつと友達になってもプラマイゼロだと思うわよ」
「ルロ、さっきからずっとキミの一言で他人の心がズタズタになってるって知ってる?」
「大丈夫ですよレンさん。レンさんはプラスになる要素がなくても、マイナスになる要素もないんですから」
「それはそれで悲しい」
自分は人になんの影響も与えられないということだ。つまり存在してる意味がないのに等しい。
……でも、僕は十年とちょっと生きているけどそんなにダレかに影響与えてないかも。
トホホ……。
「だけどわたし、レンさんと友達になっても丁寧語のまんまだと思うなぁ」
「へぇ……。どうして?」
ルロが興味深そうに眉を上げた。
これには僕もルロに同感だ。
「だって……レンさんには……旅についてきてもらっている立場なので……。はい」
ミランスは寂しげに笑った。
その切ない表情に僕の心はキュッと締め付けられたような痛みが走る。
だって、それは違う。
最初はミランスのことも、抽選で選ばれたことも、全部イヤだったさ。
どうして僕がバカ勇者のお供しなきゃいけないんだって思ってた。
どうして僕が世界平和の責任を取るような立場にならなきゃいけないんだって思ってた。
なんで平々凡々な僕がって。
……でも今は、どうしてこんなに楽しいことを味わえるんだって思ってる。
それこそなんで平々凡々な僕がって。
それに……あれだ。最終的に旅に出るって決めたのは僕だ。
そうミランスに伝えたかったけど、やっぱりちょっと恥ずかしい。
それにミランスと友達かもよくわかんない。
でも、ミランスと旅に出れてよかったとか、ミランスと旅に出たいって言えたらいいな。そう心の中で願った。
「……待って。あたしだってついていってあげてる立場じゃないの!?」
ルロが不服そうに声をあげる。
「へ? ルロちゃんって来たくて来てるんじゃ……?」
「は? なんでそう思うのよ!」
いや、わかるよ。
だってミランスには及ばないかもしれないけど、キミもウソ下手だもの。
「来たくないなら帰っていいんだよ?」
「あー、はいはい! 行・き・ま・す~!」
ルロはほっぺたを右だけ膨らませた。
ルロが不機嫌な理由が不明なのか、ミランスはきょとんと首をかしげる。
……帰っていいんだよ、の一言強いな。
ツンデレにはツンで接しるのも一つの手かもね。
「友達になりたいなら、勝手に友達だと思いこんでたらいいじゃない」
「え?」
ルロがぼそっとこぼした言葉。
声が小さすぎるのか僕の耳が悪いのか(多分前者)、なにを言ってるかよく聞こえなっかった。
「ちょっと休みませんか?」
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