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第三十四話 春のおとずれ

 なんだ?

 さっきの冷気がウソのように消えた。

 吹雪なんて降ってない。

 ただの曇りだ。

 ……まぁ、なんて言ってるけど寒いは寒いんだよね、ツンデレ地帯だし。


「レンさん! 終わりましたよ! やりましたねー! イエーイ」


 ガッツポーズを決めたミランス。

 心底嬉しそうだ。

 ……でもどうして?

 僕は地面を見つめて気がついた。

 これ、ミランスが暴れまわって壊したルロの家の壁の破片………!

 そう。氷の塊──ルロの家の壁の破片が落ちていたのだ。

 確かこの氷の塊って冷気を吸いとるんだよね!? だから雪原に広がった寒気がなくなったんだ! はぁー、納得!

 ミランスもそのことを悟ったのだろう。氷の塊を見てニヤッと笑う。


「フルーフのやつ、結局ただ自爆しただけじゃないか」


「ふふ。確かに! 哀れなやつですねー! へっへっへぇ」 


 嘲笑うミランスに少し離れた場所でルロは視線を送っていた。

 ちょっと気まずそうな表情。

 ……僕が悪いんだ。ノーデリカシーだったんだ。

 そう思ってルロを見ているとルロもこっちを見た。つまり目があってしまったのだ。

 うぅぅっ。こりゃぁなんとも気まずいぞぉー!

 慌てて目をそらす。

 あぁ、感じ悪いな僕。悪いことしたの僕じゃん。どうしてこんなに態度がでかいんだ?

 うぅ。どうしよう、どうしよう。


「謝るんですよ」


「へ?」


 ミランスがヘーゼンと言い放った。もうそれが当たり前かのようにだ。いや、実際謝るという行為は人間として当たり前のことだけど……。それよりもなんて言うか、きれいごとが言いたいとかそう言うことじゃなくて、ただただ大真面目に言ってる感じだ。


「でもさっき謝ったら『謝るくらいなら最初から言うな』的なこと言われたよ」


「だからなんですか? レンさんは許してもらうために謝っているんですか?」


 あっ。

 胸の少し上から優しいなにかが落っこちたような気がした。そしてなんか僕の体にしみこんでパズルの一ピースがはまったような、そんな感じがした。

 その通りだ。謝罪ってそういうことじゃない。

 相手に悪いことをしたなって誠意を持って頭を下げるんだ。

 許してもらえなくても謝る。自分の否を認めて相手が正しいって言ってあげるんだ。

 さっきの僕の発言は言い訳でしかない。謝らないための言い訳だ。


「ルロごめん。僕ノーデリカシーだったよ」


 ルロのほうにかけよって頭を下げる。

 うつむいているからルロがどんな表情かはわからない。だけど伝わってたらいいなって思った。


「……ノーデリカシー()()()じゃなくて現在進行形でノーデリカシーでしょ?」


 ……相変わらずの嫌みたっぷりの口調だ。

 だけどなんて言うんだろう? ルロの声色が笑ってる。

 顔を上げるとルロは口元にうっすら笑みを浮かべていた。

 これは、あれだ。きっとキツいジョークってやつだ。多分ツンデレジョーク。


「なんか言いなさいよ。調子狂うじゃない」


「えっ? あっ、えぇ? えーと、このポンコツ野郎!」


「バカ」


 暴言を吐くルロは楽しそうだ(←問題発言)。

 えぇ、感情の浮き沈みが大きいね。もしかして情緒不安定系女子?

 ……なんてことは口に出したらぶっ飛ばされそうなので言わないでおく。


「フルーフはいなくなったのね。ツンデレ地帯は平和ね」


「でも世界は平和じゃないですよ」


 そう、まだ世界は平和じゃない。だから僕らの旅はまだまだ続く。

 嬉しいけど、冒険ができる理由を考えるとちょっと複雑な気持ちになる。


「今更だけど、なんでツンデレ地帯を選んだの?」


「えっ? えーっと、気温変化のこともありますけど……。私情です☆」


 あっさり言ったミランス。

 私情かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 勇者の特権使って旅行しようとしてたんだなぁぁぁっ!

 しかも最後自分で笑ってるし!


「でも運がいいわね。偶然来たらツンデレ地帯を救ったってことよ? それにこんな美人とお近づきになれたんだから」


「結構自意識過剰だね」


「はぁ? 照れ隠しにも程があるわよ。なんで照れ隠しするのよ」


「照れ隠しはキミが一番してるでしょ」


 ぐぅの音も出ない。

 論破って気持ちいいんだなぁ。


「レンさん、楽しんでるところ悪いんですけどもう行きますよ」


「え? あぁ、旅ね」


 僕の本職は学生でもコンビニバイトでもなく、冒険者だ。

 だから行かなきゃ。


「じゃぁね、ルロちゃん! 楽しかったよ!」


 ブンブン手を振るミランス。ルロは少し嬉しそうに小さく手を振り返した。

 よし! 旅の再開だ!

 僕は雪に足跡をつけた。

 続く

























































































「ちょっと! あんたたち! 待ちなさいよ!」


 振り返るとルロが怒ってた。

 え? なにかした?


「まさかだけどあたしを置いてくわけ?」


「へっ? ルロちゃんも一緒に来たいの?」


 ミランスの言葉にルロは顔を真っ赤にした。


「ちちちち、違うわよ! 別に行かなくてもいいわ」


 ……わかりやすい。呆れるよ。

 しかしミランスは純粋すぎてルロの言葉を真面目に飲み込む。


「そっかぁ、じゃぁレンさん、行きますか」


「うん」


 さっさか歩きだす僕ら。

 なんかルロが言いたそうな顔してたけど、気のせいだよね。別に行かなくてもいいって自分で言ってたし(←ルロがいつもの天の邪鬼をやっているのを察しているが知らないふりをする確信犯のレン)。


「はぁ? 誘わないの? あたしよ? ルロよ? 攻撃魔法が使えるのにいいのかしら?」


「確かに……! わたしは治癒魔法しか使えない!」


「でしょう? それなのにあたしを置いてっていいの?」


「ルロちゃんが嫌なら置いてくよ」


 ミランス、キミって無意識に人が触れられたくないことを言うね。

 もちろんルロは苦虫を潰したような顔をする。


「あー、はいはい! 嫌じゃないわよ! ついていくわ」


 ……ツンデレは天然に勝てないんだなぁ。

 なんかわかんないけど勝利したような気持ちがして笑みが浮かび上がってくる。


「なにニヤニヤしてんのよ。一応言っておくけど、これはララのためよ? 魔王を討って恨みを晴らすの。それ以外理由ないから。勘違いしないでよね」


「「……はぁーい」」


 絶対他にも理由あるだろうけど勢いに負けてうなずくしかなかった。

 あぁ、まったく終始一貫素直じゃないんだから。

 僕はこっそりため息ついた。

こんにちはー! 風音です。お読みいただきありがとうございます!

実はお知らせがあります!

なんと桜馬さんとコラボ小説をつくることになりました。

\(^-^)/やったぁー!

本編もコラボも同時進行なので、そこのところよろしくお願いします!

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