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第三十話 善人

「……ってことがあったんですよ。それでルナは天気神って呼ばれるようになったんです」


「そうなんですか……」


 ルナさんの気持ちになってみるとかわいそすぎてなにも言えない。

 ツンデレ地帯も結構荒れてたんだなぁ。

 今のツンデレ地帯はとっても平和だって心底思う。


「ルロはルナの能力を偶然引き継いだみたいでして、あんまり周りと馴染めてないみたいなんですよ」


「馴染めてない?」


「はい。ルロを仲間外れにしたり差別したりするのはもちろんなんですが……」


 仲間外れ……差別……。

 聞いただけで胸の奥がギュッと締め付けられたような感覚になる。

 どこの世界にも嫌なやつはいるんだな。

 ……こんな偉そうに言ってるけど、僕も無意識のうちに差別してるかもしれないよね。

 そう思うとちょっと怖い。


「ルロはルロで自分から壁をつくっているみたいなんですよ」


 トネさんはため息まじりで言う。

 トネさんはルロと仲が良いのだろうか? ルロを想っているのがすごくわかる。


「ルロはルナの話を知ってるので、あまり人を信用してないんですよね。あと、自分は弱いと攻撃されるんじゃないかと思ってるらしく、強がりで偉そうなところがあるんです」


 あぁ、強がりなのは良くわかるかも。

 納得がついてコクコクとうなずく。

 感じ悪いのもそういうことなのだろうか? 

 ……だからって人を不快にしていい理由にはならないけど。


「でもでも! ルロちゃんはなんだかんだ言って人を見捨てられない優しいコですよねっ!」


 ミランスの嬉しそうな声。

 まるでルロの全てを知っているかのようなドヤ顔だ。


「……そう、そうなんですよ。すごく不器用なんですけど、姉御気質で優しいんですよね」


 ふふっと目を細めて笑うトネさん。

 瞳の奥がやわらかく、ルロが大好きなのが伝わってくる。

 ルロはみんなに愛されるんじゃなくて特定の人に愛されるタイプなのかもしれない。

 こういうタイプのほうが幸せなのかな……。


「あぁ、雨が降ってますよ」


 トネさんはカーテンを開けて外を見る。

 しとしと雨は寂しげに降っていた。


「ルロちゃん、泣いてるのですかねぇ?」


「多分そうだと思います。お二人はルロとご一緒じゃないのですか?」


 トネさんの言葉に僕はひゅっと息を飲んだ。

 罪悪感がお腹の底から這い上がってくる。

 それとともに頭が痛くなった。

 そう、僕が悪いんだ。

 僕が勝手にルロを敵扱いしたのが悪い。

 ルロは悪者なんかじゃない。

 善人すぎるほどの善人だ。

 はやとちりしてダレかを傷つけるような僕よりもよっぽど善人だ。

 魔王の手下なわけがない。

 だってあのルロだよ?

 ダレかのために動くルロだよ?

 これほどの善人はなかなかいないよ。

 簡単にわかることなのに……。僕はバカすぎるよ。大バカだ。

 僕は勢いよく立ち上がる。


「レンさん?」


「行こう、ミランス。僕たちは行かなきゃ」


「ほえ?」


「僕らがいる場所はここじゃない」


 ハテ? という顔だったミランスが徐々に確信の笑みへと変わっていく。

 むしろ喜んでいるようにも見えた。


「そうですね! ふぇっふぇっふぇっふぇ!」


 ……独特な笑い方だね。


「トネさんありがとうございました! 僕たち行かなきゃ……」


「あぁ、行ってください。応援してます」


「ありがとうございまーす!」


  ガゴンッ


 元気よく頭を下げて机に頭を打ち付けるミランス。

 おいおい、気をつけてよ?

 

「コーヒーもいつでも用意していますよ」


「「遠慮しておきますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」」


 トネさんの優しさを僕とミランスは全力でお断りしたのだった。


***********************************************************


 再度雪山を登る。

 相変わらず雨は静かに降っていた。

 待っててルロ。すぐ行くから。

 そう僕が思っていたそのとき。


「あっ!」


 ミランスが声を上げた。


「どうしたの?」


「あれ! あれ、ルロちゃんじゃないですか!?」


 ミランスの指差すほうを見ると、うす黄色の髪の女の子がたっていた。

 あの子がルロらしい。

 うーん……僕視力Cだから自信ないなぁ。


「ちなみにミランスの視力は?」


「Aです」


「高っ」


「いえいえ、最高SSS+まであるんですよ」


「はっ?」


異世界(こっち)では透視能力がある人もいますから」


「……それもう視力測定じゃなくて能力測定では?」


 視力Cの僕はどうなっちゃうんだろう……。

 ゲームはやりすぎちゃダメだなぁ。


「ま、そんなことは置いといてルロを助けに……」


「ルロちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」


 ミランスがルロのほうへ突進していく。

 遠くから見ても女の子(多分ルロ)が引いているのが良くわかった。

 ……行動力ありすぎでしょ。

 呆れながらも僕は駆け足でミランスの後を追う、その時だった。


「まちなさい! 来ちゃダメよ!」


「レンさん! 危ないです!」


「え?」


 ナゼか二人から忠告が入る。

 ミランスもルロもかなり焦った様子だ。

 どうしたんだろう?

 首をかしげたときにはもう遅かった。

 だって、横から────道化師の格好をしている刃物をもった女の人がニンマリと笑ってきていたから。

 ルロいいこでよかった♡

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