第二十ハ話 ヒス女
水分補給も完了し、あとは登るだけ。
えっほ、えっほ。
いや~、やっぱり疲れるよ。
生まれ変わったら、ちゃーんと現世の分も運動しようっと。
だから現世では運動しない! うんうん。我ながら素晴らしいアイディアだ。
「ツンデレ地帯っていつからこうなの?」
ミランスはそれなりの高さから街をみおろす。
ツンデレ地帯と言わずに他の地帯も見えるくらいかな(盛ってます)。
家や木々が豆粒みたいで面白い。
「一週間前くらいよ」
「ルロちゃんずっと一人?」
「まぁ」
「寂しくないの?」
「別に」
ウソだ。
顔が暗い。口角も下がってるし。目にだって色がない。
しかもこの人はツンデレだ。ツンデレはとーっても寂しがりやなんだ。
でもプライドが高いから弱音を吐かない。
………そんなところが愛らしい、と思う人間(主に男)が多いらしい。
残念ながら僕にはそれがよくわかんない。
だってさ、言ってしまえば強がりでしょ?
強がりなんてみんなそうだよ。
みんな強がって頑張ってるんだから当たり前じゃないかなって思うんだけどなぁ。
……う~ん。やっぱよくわかんない。
「ルロちゃんってかわいいね」
「は、はぁ? いきなりなによ」
あーあ、ツンデレ信者が現れた。
案の定ルロは顔を赤らめてプイッとそっぽ向く。
「そういうところ好き~。動揺してるのバレバレなのに平静を装おうとこ」
キャッキャ楽しそうに指摘するミランス。
ちょっとルロをからかってるかんじだ。
ミランスって意外とS? Mかと思ってた。
「はぁ? 動揺してないわよ。っていうか、あたしがかわいいことくらい当たり前でしょ!」
「えへへー、そうだね。ルロちゃんがかわいいことくらい、世界常識だよね」
褒めるねぇ。
でもミランスの褒めはお世辞というより尊敬に近い気がする。
クラスの女子の褒め言葉には裏があるからなぁ。あー、怖い怖い。
だってさぁ、「〇〇ちゃんめっちゃかわいい」って褒めてるのに教室のはじっこで「〇〇ちゃんダサいよね(笑)」って嘲笑ってるんだよ!? 怖い怖い怖い怖い!
※女子である風音から言わせてもらいますが全ての女子が当てはまる訳じゃありません。しかし裏表激しい女子はめっっっっっっちゃいます。男子のみんな! 女子は一旦疑いの目で接したほうがいいよ! ホントに。
「あ」
登ろうとして前を向いたそのときだ。
僕たちの目の前にはトゲトゲした草がいっぱい並んでいた。
右にも左にも草が広がっていて避けようなんてできるわけがない。
これはもしかして引き返す感じ!?
あー、残念だなぁ。もっと登りたかったなぁ(内心ウキウキ)。
「ツンドラには夏にトゲゴケっていうコケがはえるのよ。触ったら………最悪死ぬわ」
「えぇぇぇぇぇ!?」
死!?
そんな危ない草が毎年はえてくるの?
超迷惑じゃん!
「よーし! 行きましょうか」
「どうやって行くの?」
「え? 普通に踏んで行くんですよ?」
なに当たり前のこと聞いてんの? みたいな顔してますけど………。
「話聞いてた? 最悪死ぬんだよ?」
「レンさん最悪の場合の話ですよ? 最高の場合の話をしましょうよ」
……ポジティブすぎて怖いんですけど。
色んな恐怖でこの場を凍りつかせるなか、ルロが急に怖い顔をしだした。そして
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! なーにやってんだよ! あぁ?」
なんか怒鳴られたんですけど!
えぇぇぇ!? なになになに!?
なんで僕ら怒られてるのーっ?
わけがわからなくなった僕はミランスと顔を見合せる。
僕なにかした? なんもしてないよね?
「黙ってねぇでさっさと答えろやボケ」
へぇぇぇ?
いつも口悪いけど、今のはいつもの十倍くらいありそう。
なにに対してなのかがわからないんだけど、ヤバいことは確かだ。うん。
こういうの、ヒステリー女って言うんだっけ?(略:ヒス女)
まさかヒス女に出会うとは思ってなかったよ。
「おいおいおいおいおいおい! 早くなんか言えよって! 言葉もわかんねぇのかよ? ぶっ〇すよ?」
ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!
恐ろしい!
なんて身をすくませた瞬間!
ガラガラガラー!
「「ひょえっ」」
うっ。ミランスと一緒に乙女みたいな声出しちゃった(照)。
……ことはともかく! 急にカミナリふってきたんですけどぉ!? しかもホント目の前。腕を伸ばしたら触れてしまうくらいの距離だ。
ここの天気どうなってんの!?
……でも、カミナリのおかげでトゲゴケが燃えてなくなってる。よかった……のかな?
「トゲゴケなくなったわよ。さ、また登りましょう」
平然と登り始めるルロ。
……はぁ?
さっきまであんなに不機嫌だったのに、もういつものルロに戻ってる。なに? 気分屋?
ちょっと前は泣いてたみたいだし。次はぶちギレて……。なんなの?
ルロの自己中な態度に不満を感じる僕。もうやってらんないよ。
……あれ、でも、ちょっと待って。ルロが癇癪起こした後って天気変わってない?
なんだか重要なことに気がついてしまった気がする。
雨が降ったときルロ泣いてたし、カミナリが降ったときもルロ怒ってたよね。
やっぱり……それって……。
信じたくないが説明がつく。
……まって!
「ツンデレ地帯をカチンコチンにしているのは、キミなの? ルロ」
ぴくっ。ルロの足がとまった。
しかしこっちを向く様子はない。
「ねぇ。ルロ、どうなの?」
「違うわ! 違う! 違うんだから!」
やっとこっちを向いてずかずか降りてくる。
あ、図星だな。
わかりやすいほど真っ赤にした顔とつりあがった眉。これを図星の表情と言わず、なんの表情だと言うのだろうか。
「なにを根拠に言ってるわけ? あたしがそんなことするわけないわ!」
さっきも大激怒してたけど、怒り方が違う。
今のルロは本気だ。
「ルロが癇癪を起こすと天気が変わってるでしょ? さっきのカミナリ見なかったの?」
「たまたまよ! バカ言わないでほしいわ! 頭おかしいんじゃないの?」
「る、ルロちゃん。少し落ち着こうよ。今のルロちゃんおかしいよ」
「はぁ? なに部外者が口出ししてるのよ? あんたは黙ってなさい!」
「ルロ! そんな言いかたはないでしょ!」
「うるさい!」
野生のハイエナのような鋭い瞳。
温かみの「あ」の字もないルロはただただ恐怖しか感じさせてくれない。
いや、実際ルロのほうが恐怖を感じているようにも見える。
「そんなわけないわ! あたしがそんなこと……!」
「ルロ、自己受容しないと前に進めない」
「うるさいって言ってるでしょ! あたしのことなんにもわかってないくせに偉そうな口するんじゃないわよ!」
「ゆっくりでいいから、自己受容だよ」
「黙って黙って黙って黙って黙って黙って黙って黙って!」
そう僕に怒鳴りつけるルロの声はもはや悲鳴だ。
見てるこっちが苦しい。
「あたしは……! あたしは天気なんて操ってないんだからー!」
ガラガラガラー!
本日二度目のカミナリ。
……これでもう真実が見えた。
つまりルロが天気を操っていることが証明されたのだ。
ルロはハッと悲しそうな表情をすると走ってその場から姿を消した。
「ルロちゃん……っ」
ミランスの悲しげな声は白銀の大地で小さく響いたのでした。
ルロぉぉぉぉぉ!
行かないでー! 作者である風音はキミが大好きだぁぁぁぁ! 今すぐ抱き締めたいよー!
……ミランス&レンが不審そうな目でこっちを見ているのはともかく!
いやー! わたし結構ルロが好きなんですよねぇ。だから今話はすこーし胸が痛いんですよ。ハイ。
だからね、みんな。風音を優しく扱ってね。割れ物注意のお荷物くらい優しくしてください(潤んだ瞳)。




