第二十七話 絶対零度を貫く瞳
ツルッツル。
外はやっぱり氷でおおわれていて、寒い。
さすがツンデレ地帯だ。
「いつもこんなに凍ってるの?」
何回もしつこいけど、ホントに凍ってる。
だって家とか凍りすぎて入れないところもあるし、家に避難しているのか、ひとっこひとりいない。
ロックダウンそのものだ。
「いえ。こんな街が凍るまではいかないわ」
いつものように冷酷な態度で返すがなにかがおかしい。
鼻のあたりを触ってソワソワ落ち着いていない。目も泳いでいて、まさになにかを隠しているようだ。
「きっと魔王のせいよ。そう、魔王のせいなんだから」
言い聞かせるような口調。
僕に、というよりは自分に言ってるような感じ。
なんか引っ掛かるなぁ。
「レンさーん。見てください、スケートですよー!」
そんな僕らの真面目な会話の横でノーテンキなミランスはずっと氷の上でしゅんしゅんすべったり、くるくる回っている。
あ、危ないよ。
……上手いけどさ。
僕もちっちゃいころはこんなふうにして遊んだなぁ。
学校に行く途中で夢中になってやってたら遅刻したっけ。
懐かしい。
……そんな幼い遊びを二十の女がやるもんなんだね。
「ルロちゃーん! 見て見てっ。わたしツンデレのスケーター」
「……はいはい。すごいわね(棒読み)」
「ルロちゃんもやろうよっ」
「やらない」
ルロの態度はツンデレ地帯くらい冷たい。
どうしてそんなに冷たいんだろう?
「ミランス、お遊びは終わりよ。これから登山なんだから」
「「登山っ!?」」
「そうよ。あたしの妹はこっちのほうに連れ去られたんだから」
僕らの前には雪山がドーンとそびえたっている。不幸中の幸い、山は凍ってなかった。
標高はいくつだろう? 九百はある気がする。
ミランスはワクワク、ウキウキ、遠足に行くようなテンション。目がめっちゃキラキラしてる。
僕はビクビク、しおしお、地獄に行くようなテンション。目がめっちゃどんよりしているのが自分でもわかる。
……これがポジティブとネガティブの違いである。
どっちがネガティブかなんて言うまでもない。
「登山! 楽しみだなぁっ。レンさん、頑張りましょう! ランランル……(以下略)」
「悪いけど、僕は遠慮させていただくよ」
「えー! どうしてですか?」
「えっ。……それは」
僕が運動音痴だからだよ。
ぶっちゃけ僕、通知表で保健体育3しかとったことないんだ(作者は美術がオール3)。
まさにタヌキの行列。それくらい苦手。
中学も放送部だったし、高校は部活無所属。
今までもこれからも、運動とは無縁の人生の予定なんだけど……。
それなのに雪山登山って……。こりゃ大変だよ。
はぁ。仕方がない。ここはごまかすとしよう。
「登山、出来ないんだ」
「えぇー! なんでですか?」
「なんでって……えぇっと、」
「あ、わかりました。おなかすいてるんですね?」
「違う」
「えぇ!? ヒントはなんですか?」
「クイズじゃないんだけど」
「そんなーっ。アンサーください」
「僕の話聞いてた? クイズじゃないんだって」
まぁ、この茶番のおかげで言い訳も考えられたことだし、言ってやろうじゃないか。
「僕ね………………………………登山アレルギーなんだ」
……………………。
……………………………………。
ポクポクポクチーン。
ビシッと決めてみたけど、あたりが静まりかえる。
ミランスでさえ困り顔。
えーっと? なんか僕がスベったみたいになってるけど……。
「つまんな。スベるのは氷だけでいいのよ」
「別にウケ狙いしたわけじゃないよ」
氷のような冷たい眼差しを二人から受けて、気まずい沈黙。
えぇ……。なんで僕が責められてるの?
登山したくないだけなんだけど……。
なんだかすごーく、いたたまれない。
「じゃぁ、行くか!」
申し訳なくなって償いにでもなれと雪山を登りはじめる。
あー、もう! 登りたくないのに!
ルロは僕と目が合うなりいたずらっ子のような笑みを浮かべた。
うわーっ。あいつ、はめたなー!
……しかし、ここで怒るのは武士の情け。
知らないフリ知らないフリ。
僕は前だけ向いて歩く。
「ねえねえ! ルロちゃんの妹ってどんなコ? ルロちゃんに似てる?」
キラキラおめめで聞くミランス。
好奇心たっぷりの犬みたいだ。
どうしてそこまで人に興味をもてるのだろう。
僕はダレも興味ないからよくわからない。
みんなどうなったっていい。僕の知ったことじゃない。
自分のことだって別に関心がない。いや、少なくとも自分には…………、わからない。
なんでだろう。自分のことなのに。
いつからこんな感じなんだろう。
これじゃ疑問が疑問を呼んできりがない。
やめたやめた! この問題は寝る前ベッドで考えよう。
「あたしの妹はララっていうのよ。あたしには似てないわ。どっちかというと、小動物ぽくって、リスに似てる」
「ほぇーっ。衝動物……」
「ミランス、なんか勘違いしてない?」
「つまり、リス似の妹を見つければいいのよ。わかった?」
「「了解」」
僕たちはララというリス似の妹のため、ぐんぐん登っていった。
女子郡は元気で、ミランスなんかジャンプしながら登ってる。
それに対し僕というと……腰と膝が曲がり、ジャンプどころか登山なんてしてる余裕がない。
あぁ、喉乾いた。
残念なことにバッグに入ってる水筒の水、全部飲んじゃったんだよねぇ。はぁ。
「雨でもふればいいのに」
ピクッ
僕の言葉に反応したルロはチラッと僕を見て、近くの木の裏に隠れた。
「え? ルロちゃんどこに……」
ザー
「えっ?」
あ、雨だ。なんで……?
いいや、とりあえず雨水をためて水分補給しよう。
水筒を開けて水を貯蓄する。
おぉっ、たまった!
そう思ったときには雨があがっていてただの雲になっていた。
ま、そんなの僕には良きに計らえ。水筒に入った水をゴクゴク飲む。
……う~ん! 美味しい。生き返る~。
神の恵みを頂いていると、ルロがでてきた。
「どこ行ってたの?」
「あんたには関係ないでしょ。……っていうか、なにボーッとしてるわけ? 早く登るわよ」
強気で言うルロの目には涙がうっすら浮かんでいたのを僕は気づいてしまった。
投稿がまぁまぁ遅れました。すみません。
いや! 言い訳していいですか?
テスト勉強してたんです!
偉いでしょ?(ドヤッ)
……だからってさぼっていい理由にはなりませんよね。すみません。




