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第二十話 偽善者

 ミランスぅ!

 やめてくれぇぇぇぇ!

 あぁぁぁぁ! 生き地獄がこーゆー状況を指すことを改めて知ったよ。


  ダンッ


 ミランスの足が執事の部屋に勢い良く入っていく。

 もう、ホント部屋の床が抜けるんじゃないかって思うくらいの勢い。

 あわわわわーっ。


「み、ミランス!?」

「み、ミランス様!?」


 執事と王様の驚き声がピッタリ重なった。

 そりゃそうだよ。

 こんな密会場に堂々と入ってこられちゃ、驚くのもムリはない。

 まぁ、追われてる王様は捕まるんじゃないかっていう心配も結構抱えてたかもしれないけどね。


「お父様、とくに執事、なにしてるの?」


「いや、えぇっと…………ミランス様、これには海よりもふかーく、山よりもたかーい理由がありまして………」


「説明してくれる?」


 ギラリとミランスの瞳が鋭くなった。

 すごく怒ってるみたいだ。

 その迫力に思わず身がすくんでしまう。


「その、王様の息子さんが病気になってしまったんですが………」


「そうなんじゃよ」


「………息子さん? なにを言ってるの? お父様にはわたしとお姉さましかいませんよ?」


「「……………っ!」」


 絶句してる王様と執事。

 だけど、二人ともそれぞれ違う表情をしている。

 王様は盲点だった、と言わんばかりの驚き顔。

 執事はヤバい! と青ざめた表情。

 この流れから見ると、やっぱり執事が黒幕かな。


「まさに目から鱗だわい………!」


「お、王様っ! 騙されてはいけません。息子さんはいます! ほ、ほらアレですよ。生まれてきたのですが捨ててしまった………みたいな」


「わしは子供を捨てたりなどしない! これでもこの国の王なのだぞ!」


 よしよし。王様も完全にこっちの味方だ。

 ミランスを見るとちょっと誇らしそうにしていた。

 ………う~ん。ミランスには悪いけど、王様に息子さんがいないって気がついたのは僕なんだけど。


「──はぁ。バレちゃしょうがないですね」


 丁寧な口調で語る執事はもう執事じゃなかった。

 ヘンな、いや不穏な、まぁどちらにせよ良くない雰囲気をまとっていた。

 口があがっていて笑っているのに目が笑っていなくて、どうも不気味だ。

 執事の周りが気味悪い膜に包まれている気がした。


「執事………?」


「ふふ、ミランス様の呆け顔は最高ですね。いつ見てもかわいらしい」


 はぁ!? なになになに!?

 怪しい雰囲気をまとっているのに、ミランスのことめっちゃほめだしたんだけど。

 うわー。怖っ! ゾッとする。


「うおぉ!」


「危ないですよ?」


 腰についていた剣をニッコリ笑顔で僕につきつけてくる。

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い!

 サイコパスだ!


「執事! レンさんにをなにしているの!?」


  パンッ


 執事の頬をおもいっきりミランスがビンタする。

 なにがおこったのか一瞬わからなかったのか、執事が目を見開いた。

 執事の左頬が真っ赤になっていてジンジンする様子が伝わる。


「ミランス様…………。なにをしているのですか?」


「先にわたしが質問しています。質問を質問で返さないでください」


「相変わらず真面目ですね」


「ほめてないんでしょう?」


「ええ、もちろん」


 執事が微笑み、僕に向けていた剣をおろした。

 おおおっ。怖かった。


「レン様はジャマなんですよ」


 えっ? ジャマ?


「レン様は魔王討伐の一員です。ミランス様お一人なら魔王討伐はムリです。しかし、レン様がいると話が変わってきます」


「そんな! わたしが無力だって言いたいの?」


「はい、もちろんでございます」


 うん。僕も声にだしては言わないけど、ミランスだけじゃちょっと心配だよ。

 ………それと


「魔王討伐ってなに?」


 僕、初めて聞いたんだけど。


「えっ。言ってませんでした?」


「言われてないよ!」


 もしかして、結構重要案件?


「えーっと…………、世界平和の旅にでる話はしましたよね? 実はその旅の目的って魔王討伐なんです」


「それを先に言えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 重要案件どころか、超スーパー重要案件じゃん!

 ナゼそれを早く言わない!

 まぁ……今更ミランスのお供やめるなんて言わないけど。


「……というわけでレン様がジャマなんですよ。消えてほしいなって心底思ってます」


「執事は──魔王側の人なの?」


「話の流れを見ればわかるでしょう? 魔王側ですよ」


 ヘーゼンと言い放った執事。

 お城の唯一の執事が魔王側の人とか怖すぎるんだけど!

 っていうかお城の警備大丈夫かな。


「ミランス様、こんな重苦しい話題は終わりにしましょう。では、ゲームをしませんか?」


「ゲーム?」


「そう、ゲームです。ルールは簡単。どちらかを選ぶゲームです」


「………わ、わかりました」


 急になにを言いだしたんだ?

 でもなにがしたいかが全くわからない。


「カレーとハヤシライス、どちらがお好きですか?」


「か、カレー」


「では、夏と冬どちらがお好きですか?」


「夏」


 二人がやっているのはごくごく普通のどっちがいいゲーム。

 王様も理解が追いつかなくてフリーズしちゃってる。


「では、」


 執事はニンマリ笑った。

 そして


「──世界平和と王様、どちらが大切ですか?」


 王様に剣を向けた。

 ハッ………! 人質作戦だ。汚いやつめ。


「えっ………うっ………ぁう」


 うろたえまくるミランス。

 そりゃそうだよ。究極の選択だ。

 僕だってこんなこと聞かれたらこうなるよ。


「世界平和と王様一人ですよ? 極端かもしれませんが、七十億人と一人です。どちらが大切ですか?」


 ひどい質問だ。

 ミランスから汗が一筋こぼれおちる。


「お父様の存在はいらない……と言いたいの?」


「ハッキリ言ってしまうと、そうですね」


 うわー。ひどい言いようだよ、まったく!

 人の命をなんだと思ってるんだよ。

 怒りを感じているのはミランスも同じだ。

 上目遣いで執事を睨み付けている。


「じゃぁ………」


 ミランスは一息ついた。

 そして再度執事を睨み付けた。


「お父様の存在がいらないのなら、わたしが産まれるのも別にいいってことだよ! わたしがいらないってことは──世界救えないでしょ!」


  シュバッ


 ミランスの足払いが執事に炸裂!

 執事が頭から倒れこむ。


「お父様、逃げて!」


「お、おう!」 


 王様はあわてて部屋を出てった。

 ふぅ、よかったよ。

 この国の王様だ。簡単に死なれちゃ困る。


「……逃げられ………た? ハハッ、ハハッ。ハハハハ!」 


 突然執事が笑いだした。

 お腹を抱えて、心の底からおかしそうにしている。

 その姿がただただ底気味悪い。


「ミランスさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! あなたはひどい! 勇者だというのに私を裏切った。ハハッ! 勇者だと名乗っておいて偽善者だったのですね」


 執事はそう言ってミランスのほうに近づいた。

 それに気がついたミランスは走って部屋の奥に逃げる。


「ミランス様、なぜ逃げるのですか? なぜ気持ち悪そうに見つめるのですか? なぜ瞳の奥は優しいのですか?」


 眉間にシワがより、目尻があがり、瞳孔がひらいてミランスに迫る執事。

 必死そのものの表情だ。


「わたしが偽善者だからだよ」


 冷淡に無情にミランスは言い放つ。

 執事に見せる顔は冷ややかで、温かみなど全く感じられない。


「わたしは勇者なの。世界平和をするために産まれてきたの。だから、世界を平和にできない人にはこうするしかないんだ」


「そんなっ。ミランス様、優しい者は平等に優しくしなくてはいけませんよ?」


「わたしは優しくない。偽善者(ゆうしゃ)なんだよ。ごめんね」


 ミランスはそう言って執事の近くに落ちていたクッションを投げつけた。

 ぼふんと執事の顔に命中。


「ああああああああああああああああっ!」


 精神崩壊した執事は机の上にあったハサミを手にとった。

 そして、ミランスのほうに体を向けた。

 ヤバい! ミランスを刺すつもりだ。

 そう思った瞬間、僕の体が動いた。

 僕は執事の腰を両手で抱き込んでいたのだ。


「ミランスは僕が守る」


 ミランスが偽善者なのかはわかんない。

 ………でも、ミランスのことが大切だから守りたいんだ。

 ミランスが正しいことをしてなくったっていい!

 僕はミランスの味方でいたい!


「放してくださいよ! うあぁぁぁぁぁぁっ!」


 執事が手に持っているハサミを振り回す。


「うぁっ、いたっ!」


 腕から赤いものが流れだした。

 あぁ、ハサミが腕に当たったんだ。

 でも、執事の暴れようはそれだけじゃなかった。


「さようならぁぁぁぁぁ!」


 僕の頭の上でハサミを振り上げる。

 どうしよう! 頭に刺されて終わっちゃう!

 僕が目をつぶった、その時──


 なかなか投稿できませんでしたー!

 すみません・゜・(●´Д`●)・゜・

 いやぁ………。話変わりますが、地震大丈夫ですか?

 わたしは被害少なかったので大丈夫です。

 みなさんも余震や他の地震に気をつけてください!

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