第十一話 メンヘラ勇者
ネコを見送り僕たちは一息ついた。
ふぅ、大変だったなぁ。
まぁでも、あのネコも根はいいやつだったし、少しほっこり(?)するかも。
「レンさん…………あの………」
ミランスが怖がるように僕を見た。
目をウロウロさせて、ホントに申し訳なさそうな表情をしている。
「い、一緒に旅に出ませんか?」
何度聞いただろうその言葉。
でも、今の僕はその言葉に感じる気持ちが違っているような気がした。
「…………えぇと」
どうしよう。
………やっぱり僕には荷が重いんじゃないかな。
「やっぱり、遠慮するよ」
「な、なんでですかー!」
世界の終わりを告げられたのかって勘違いしちゃうほどの悲しみよう。
いや、だって…………。
放送室で考えたことがよみがえる。
「僕は普通の暮らしが向いてると思うし、そうしたいんだ。だってそうでしょ? 僕はどこから見ても一般ピーポーだし、人助けなんてしない」
僕が言うとミランスが首をかしげた。
「ふつー? レンさんの言っているそれは理想じゃないですか? それに、レンさんはさっき誰かのために戦ったじゃないですか! …………それならレンさんは今、理想じゃありませんね」
「普通じゃなくて…………理想…………?」
「だってそうじゃないですか? 普通のかたちは人それぞれだと思いますし、レンさんは理想でいたいって言いましたよね?」
ぐわん
僕のなかでなにかが動いた気がした。
なんか、胸にあった空洞をはめられた感じ。
「まぁ、わざと常識からかけはなれたことをして特別になろうとする人はいますけど」
呆れたように言うミランス。
「でも結局それもその人の理想から反した行動をとっているってことですけどね」
僕がずっと普通でいたいと思ってたけど、確かにそれは僕の理想だったのかもしれない。
みんなの理想の少し似ているところが「普通
」なのかもしれない。
…………うーん、頭がグシャグシャになってよくわかんなくなった。
でも、もしかしたらミランスといればわかるかな?
もしかしたら、もっといろんなことがわかるかもしれない。
でも……………やっぱり…………………、
『大丈夫です。わたしがいます』
ミランスが言っていた言葉がよみがえった。
…………信じてみようかな。
「僕、旅に出ようかな。ミランスと」
「!」
キラキラ輝いた目をいっぱいいっぱいに開くミランス。
喜怒哀楽が激しいなぁ。
「ほ、ホントーですか!? これがジョークだったら笑えませんよ?」
「ジョークじゃないよ」
僕、そんなに信用できない?
「あ、でも」
僕が言いかけるとミランスがものすごい勢いで睨み付けてきた。
ちょっ、怖いんだけど!
「レンさん? まさか、やっぱり今のナシとか言うんですか? まさかですよね?」
ニコニコ。
彼女は笑顔で尋ねる。
いや、これを笑顔と言っていいのかな?
もはや営業スマイルって感じなんだけど………………。
「レンさーん! パッと答えられないんですか? …………え、ま、ままま、まさかホントに来ないんですか! そんなぁーっ! ひどいです! この思わせ振りー! 人たらしー!」
「おいぃぃぃぃぃっ! 勝手な勘違いして、ありもしない悪口を言うんじゃなぁぁぁぁぁい!」
もう、僕の人気が落ちたらどうするの!? この物語の主人公なんだよ?(れ、レンくん? なにを言っているのかな? by風音)
「だってぇ」
口を尖らせるミランス。
いや、キミがおかしな方向に妄想を膨らませたんだよ?
「僕は退学届けをださないといけないなって」
「あー、そーゆーことですか。なるほどです。………退学届けですかー。嬉しいなぁ。これでずっと一緒ですね! わたしはレンさんが死んだら一緒に死ぬことを誓います!」
「………あのさ、ちょいちょいメンヘラセリフ吐くのやめてくれる?」
ミランスがこういう性格だってことがわかる人だったらいいけど、初対面で言われたらホラーでしかないから。
まぁ、初対面じゃなくても普通に怖いけど(経験者は語る)。
「そういえば、退学届けは出さなくてオーケーですよ」
「え?」
なんでなんで?
勝手に退学しろと!?
「わたし、ちかご先生と友達なんですよ」
「へー、ちかご先生と。ちかご先生とねぇ。 ………………うぇ? ちかご先生とぉ!?」
「はい」
ヘーゼンと言い放ちましたけど、あの、ちかごティーチャーと!?
ウソでしょ?
「レンさんはなにをそんなに驚いているんですか?」
「いやいや! だって、ちかご先生だよ? すぐ怒るからみんなに嫌われてる、あのちかご先生だよ?」
「そうですよ」
「裏でTKGって言われてる、ちかご先生だよ?」
「そうですよ?」
「最近は朝ごはんもTKGにしているっていう、あのダブルTKGって呼ばれてるちかご先生だよ?」
「それは知りません。っていうか、どうしてちかご先生のプライバシーが漏れているんですか?」
「とにかく! ヘンなジョークはやめてよ」
ちかご先生なんて、名前を聞いただけで心臓に悪い。
それにミランスが友達とかいろんな意味で怖すぎるよ。
「いえいえ、ホントです。昨日、わたしが入学手続きをしにきたとき、道に卵がおちていたので、それをちかご先生にあげたら『友達になろう』って言われました」
ミランスは真顔で語った。
す、すみません。ツッコミが追いつかないんですけど。
………いやまぁ、ミランスの言うことを信じるならば、いろいろつじつまが合うけど………………。
放送室のときとか、ね。
「えっ、じゃぁ僕は退学していいの?」
「はい! わたしが置き手紙しておくので!」
置き手紙…………。
「レンさん、心配そうな顔をしてますけど大丈夫です。友達の友達は友達ですから!」
「いや、ちかご先生と友達になりたくないんですけど。…………って僕とミランス友達だったの?」
「うわーっ! ひどいですひどいです! 傷つくこと言いますね!」
だって僕、友達いない歴=年齢なんだもん。
正直友情とかよくわからない。
「いーですよ! まぁ、行きますか!」
ミランスがボソボソなにかをつぶやくと周りが光りだした。
「ま、まぶしいよ!」
思わず目をつぶってしまった。
レンくーん! がついについに、ミランスのお供になりました!
わーい(*’ω’ノノ゛☆パチパチ
いやー、このままお供にならなかったらこの物語がおわるとこでしたよ。
よーし! ではではついに『抽選で選ばれたので勇者のお供になりました』始まります!




