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しぶしぶ

 さて、翌日です。

 たっぷりと水をもらったお陰で、新緑の植物達の枝葉は勢いを増しているかのように、更に色濃く太く見えています。道端には所々水溜まりが残っていて、その1つに小さな雨蛙が顔だけ出していました。

 さっそく吉野は役所を訪れました。そこには地域防災センター防災管理課という札が掛けられています。

「ん~、知らないな。」

「そんな事は無いですよね。掲示板に張ってあるものですよ。ほら、ここにT地区緊急避難所って、分かります?」

「あ~本当だ、臨時に設置した仮設緊急避難所の1つだね。でもT地区避難所の何処のことなんだろう。ん~、動物を飼っていたなんて聞いたことないよな。」

 職員の態度は、見るからに対応するのが面倒くさそうな様子です。すると、その横から別の職員が話に割って来ました。

「状況報告書を見れば、分るかもしれませんねえ。」

「マジ?、報告書がどれだけあるか知ってて言ってるんだろうな。それに、そんなこと報告書に載せる訳無いよ。被災状況、配給物資の在庫確認、避難した方々の健康状態とかを記述するようになっているからな。」

 吉野は、何とかして手掛かりを掴もうと食い下がります。

「でも、避難所の人気者になっていたんですよね、施設には日誌みたいなものとかなかったのでしょうか?」

「そうです、避難所の掲示板の傍に置いてあった市民自由帳がありました。早川さん、地下倉庫に行って、探してみましょうよ。」

「あ?・・・ああ。」

 やる気は、人によって度合いが随分違うものです。同じ仕事をやっているのに、前向きに取り組む人となかなか取り掛かろうとしない人がいます。それは自分への損得で物事を測ろうとする意識がどこかで働いているからです。

 それから職員2人は、吉野を席に待たせて、地下への階段を降りていきます。中ほどを折り返すと急に薄暗くなって気味悪い感じさえします。少し錆び付いて、埃っぽい鉄の扉の前に着きました。

# ガチャガチャ・・・カチャン

鍵を回して、くすんだ銀色のノブを引きます。開くと入り口の手前の電灯スイッチを押します。

 踏み込む足場も無いほど色々な資料や物品がふんだんに積まれていました。

「此処に入ると、何処に何があるのか部署の数人しか分からないですよね。」

「ああ、松尾ちゃんが行きましょうってよく言ったなと思ったよ。僕は、正確な場所は分からないからな。」

「ええ?、冗談ですよね、此処の整理担当は早川さんでしょう。こんな状態だけど、把握してるんだろうなあ、凄いなあって思っていたんですよ。」


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