思いをはせる
ハムスターの言っていた理想郷に辿り着いていたのです。そして、人間世界というもの、人間そのものについて思いを巡らしていました。
『ネズミさん、君の教えてくれたことは本当だったよ。』
~人間は、いつも怠けたいと考えている
必ず他人より自分の方が優れていて、賢いと思っている
いつも誰かに認められて、ちやほやされていたいと思っている
本当は心が淋しくて、癒して貰いたいと思っている
失意に陥ると、自分の命を絶つこともある
お金や物に執着していて、そのことでお互いに争いを起こしてしまう~
確かにそうでした。でも、そんな人間達が、どうしてハムスターの言う、快適な心地良い住み家に居る意味がよく分かっていませんでした。
『人間は、自分のことばかりなんだ。だから淋しく、孤独なんだ。そんな自分を幸せにしようと居心地の良い所を探し求めているんだ。君の言っていることが分ったよ、ネズミさん。』
ハムスターは、自分勝手に行動し、自ら淋しい状態に追い込んでいる愚かな性分を話していたのです。人間を知ることこそ、その世界で生きていく術を身につけることになるのです。人間世界で生まれ育った動物が、どうすれば生き抜いていけるのか、母親から教えられていたのです。兎は、愛想を振りまくということの本当の意味が分かりました。つまり人間にとって、愛想を振りまいてもらうことも居心地が良いことの1つなのです。
すると僅かですが、何処からか、ある音色が流れてきました。
『あ、今日も聞こえてきたぞ。これは何の音だろう?』
今まで聴いたことのない滑らかな音の繋がり、不思議な響きなのです。
『なんだろう、聴いていると切なくなってくるよ。』
心がその音に向いてしまうのです。いや、惹きつけられて、その感傷に入り込んでいくのです。
それは・・・
山から広い広い大地に吹き渡る風の様に、
何処までが青いのか分からない空の様に、
燦々(さんさん)と降り注ぐお日様の下で揺らめく木々の葉の様に、
そして、温かく心を安らぎで包んでくれる触れ合いの様に、
伸びやかで、染み込んで、時には煌めき、深い優しさを持っているのです。もう、北の大地にも自然の潤いが感じられる季節になります。雪が溶けて、ゴツゴツとした岩場でも、小さなせせらぎが現れます。 そして巣穴にぬくぬくと寝てばかりいた子兎も、ようやくおんぼに出ていました。
『母さん、食いしん坊のシマリスのオジサン、嫌だったけどイタチやキツネ、皆、今頃はどうしているんだろう?・・・元気にしているのかなあ。』
子兎は成長しました。いつの間にか、皆のことを心配するようになっていました。




