悪魔のネズミ
さて、なぜ兎がこの屋敷の庭の塀に置かれていたのか説明しましょう。
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“ぼ、僕は独りぼっちなんだ。母ちゃんは病院で、兄ちゃんは出て行ってしまいやがった。アイツは、アイツは、本当に酷い奴だ。母ちゃんも俺も見捨てて、自分勝手な汚い奴だ・・・どうしたら良いんだよ、どうすれば良いんだよ。”
もう雨は上がってしまったようです。正男は、泣くだけ泣いてしまうとその場でふさぎ込んでしまいました。
# キューン ピキ キューン
“お腹が空いて倒れそうだ、何か食べさせてくれよ、もう、死にそうだよ。”
# キューン ピキ キューン
兎は、出来る限りの愛想を振りまいて、正男の気を引こうとしています。
“煩い!、ピキピキ鳴きやがって!、お前にかまっている暇はないんだ!”
# キューン ピキ キューン
“煩い、煩い、だまってろ!、お前が来てから家がおかしくなったじゃないか。今まで皆で仲良く暮らしていたんだ。お前が来てからだ、母ちゃんが病気になり、兄ちゃんの頭がバカになった・・・そうか、お前が悪いんだ、お前は、悪魔のネズミだな。”
そうしてその夜、飼育カゴを抱えて、通りをうろつく人影がありました。
雲の切れ目から星が瞬いているのが見えます。月は残念ながら、雲隠れしているようです。
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ということなのです。
幸四郎は気持ちが高ぶっているようで、顔を上下させながら言いました。
「ほら、なんだか元気になっているように思わないかい。」
その様子が見えるはずもないのですが、幸四郎は兎が目を覚ましたことに気がついたのです。
「本当だ、よく分かりましたね。フンフン鼻を鳴らしていますよ。」
「そうかぁ、嬉しいよ。きっとお腹が空いて、何か食べたいと思ってるんじゃないかな。獣医さんから貰った元気になる食べ物をあげてみたらどうかな。」
「そうですね、少しあげてみましょうか。」
半畳はあろうかという大きなアクリルの飼育ケースです。側面にも取り付けてある小窓引き戸をスライドさせ、手を伸ばして、その特製の飼糧を入れた食器を置きました。
「ほうら、ご馳走だぞ、・・・でも、こいつが兎だったとは驚きました。どう見てもただのネズミにしか見えないですよね。」
「さすが、動物のお医者さんだよね、ちょっと身体を診察し始めたら、”おっ、これは珍しい、これをどこで手に入れたんですか?”って言ったんだよね。」
「ナキウサギって、そんな兎がいることも知りませんでしたよ。鳴くんですよね、庭で聞いたやつですよね、この姿であんな声を出すんですね。」




