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嘘つき

 昨日とはうって変わって、今日はしとしと雨の日です。暖かくなってきたとはいえ、陽の無い時はまだヒンヤリとした空気に包まれて、厚手の長袖を着ていないと肌寒く感じます。部屋の中は薄暗く、湿っぽく、心まで沈み込んでしまいます。人間達がいったい何をやっているかなど分かるはずもありませんが、このどうしようもなく憂鬱な雰囲気は、兎にも十分に感じとれるのです。それは、あのハムスターが一緒に居てくれと懇願され、調査隊に発見されるまでの店の中と同じように淋しくていたたまれないのでした。

“ピキ、キキ、キューン、ピキ、ピキ ”

「なんだ、コイツ、やたらに鳴くな。ネズミのくせにチューチューと言わないのか?、変わった奴だな。腹が空いているんじゃないか?、正男、餌をやれよ。」

「餌なんか分からないよ。」

「だって、お前達が世話しているんだろう。」

「世話なんか知らないよ、だって、母ちゃんが持って来たんだから。」

「ババアが持ってくる?、本当か?、独りでまともに歩けないんだぜ、お前また嘘ついてるな。」

「違うよ、なんで僕が嘘つきだって言うんだよ。」

 小さい頃から自分のことを嘘つきだ、ほら吹きだと言われているので、正男は今でもそう言われると嫌でなりませんでした。何故、皆、自分のことを嘘つき呼ばわりするのか分かりません。嘘は悪いこと、自分は悪いことをしていないから嘘つきじゃないのです。

「嘘だってどうして分るんだよ、証拠はどこにあるんだよ。」

「まあ、そんなことはどうでもいい。適当に食べ物をやれば良いんだよ。冷蔵庫に何かあるだろ?、それよりねえな、通帳はどこなんだよ!」

 嘘つきと言われて不満げな正男は、冷蔵庫のドアを開けてみます。

「あ、メロンが入っている。これは俺も大好きなんだ。兄ちゃん、メロンだと喜ぶよね。」

 ゴソゴソと、春男はタンスの引き出しを探っています。

「カブトムシじゃねえんだから、メロンなんか食わね~よ。パンとかソーセージとかねえのかよ。」

「豆腐とか、漬け物とかは駄目かな?」

 外の雨は、相変わらずシトシトと降り続けています。

# ポトッ ポトッ ・・・

 屋根のどこかで雨漏りがしているのでしょう。吊り天井の板に、水滴が落ちている音が聞こえてきます。長い間を経て、壁の隅にところどころ水が少しずつにじんで、カビて黒く染みになっています。

 兎はここでもまた思っていました。ハムスターの憧れていた人間の家というものは、やはり無いのかもしれないと。

『ネズミさん、この人間の住家は薄暗く、じめじめして、心地が悪い所だったよ。嫌な奴が居たけど、まだあのお店の中の方がずっとマシだ。ああ、母さん、どうしているかな、山の暖かい巣穴が恋しいよ。』

 今日は日差しがないので、昼間から室内の電燈を点けて分かりづらいのですが、もう日が暮れたようです。


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