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俺は外の人間だ

 隊員の1人が気付いて、声の方に振り向きました。しかし、誰かがその場に名乗り出でいることはありません。

“すみません、ご親族がいらっしゃるようでしたら、付き添っていただきたいのですが。”

 誰が声を掛けたのか分かりませんが、その子供とは誰なのか、あたりをつけました。この時分に自宅に居るのは、殆ど女性やお年寄りばかりです。見物人の中にいる若い成人男性はというと正男しか居ないからです。隊長は、尋ねてきました。

「患者さんの親族の方ですか?」

 心臓が飛び出るくらいドキドキして、錯乱状態に陥りそうです。

「ぼ、・・ぼ、・・僕は、ぼ・・くは・・。」

 それ以上、言葉が出ません。

# ピーポー ピーポー ピーポー ピーポー

 数分後、母親を乗せた救急車は、玄関先から病院へ出発しました。するとどうでしょう、潮がさっと引いていくように、集まっていた見物人達は、散り散りにこの場を離れていきます。暖かい日差しが大分傾きはしましたが、救急車の居た道端にもう何事もなかったかのように、黄金色の日向の中を猫がトットと歩いていきました。まだ微かにですが、遠くで鳴るサイレンの音が聞こえています。

 そうして翌日。

“まったくよ、ババアは世話ばかりかかせやがって。急に病院に来いと言われて、もう昨日は無茶苦茶になったじゃねーかよ。”

 母親は、急性の心臓病を発症していたのでした。当面の間病院で療養ということです。ですから、入院生活のために必要な物を持参することになります。パジャマはもちろん、替え着、歯ブラシ、コップ、タオル、上履き、靴下などです。

「兄ちゃん、これから俺はどうすれば良いのかな?」

 正男と春男は自宅に戻って、早速、病院から依頼された持参する品々を探し出していました。 

「今、用意してやっているんだよ。暫くは病院暮らしだからな、ほら、これが健康保険証で、印鑑だ、失くさないようにしろよ。言われたものはリュックに入れといてやるから、しょって行けよ。」

「兄ちゃんも、持ってくれるんだろ?」

「俺は、行かねーよ。」

「ええ、どうしてだよ。母ちゃんだけじゃ何もできないって言ったのは春男兄ちゃんだよ。行ってくれないといったい誰がやるんだよ。」

「バーカ、決まってるだろ、お前だよ。俺は外の人間だ、何で、面倒を看てあげなきゃならないんだよ。お前の母ちゃんだろ、当然だよな。それよりどこだ、ババアはどこに定期預金通帳隠しやがったんだ、お前、聞いてないか?」

 すると、飼育カゴに居る兎が鳴き始めました。

“ピキ、キキ、キューン、ピキ、ピキ ”


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