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運命とは、無慈悲なもの

 子供は、相手が何であっても、お話をするのが大好きです。つまり人形や絵画、写真、小鳥の様な小動物でも楽しく語り合えます。当然、子兎には分かるはずもありませんが、そんなことは構わないのです。お話の相手があれば、楽しいのです。

「小さいから信じてくれるんですよ。“パパやママ達は、こっちに帰って来るためのバスが無くてね、電話も通じないからね、だからもうちょっと我慢するんだよ”って。こ、こんな、こんな馬鹿げた嘘を信じてくれるんですよ。」

 職員も共感し、声が思わず上擦ってしまいそうです。

「い、いじらしいですね。此処に来る人達は、皆さん、希望を持ち続けようと頑張っていますよね。本当にうちひしがれたにもかかわらずです。でも、でも望みを抱いて頑張っています。」

 言葉を進めるほど詰まらせ、声が大きく揺れていました。大災害に見舞われた状況とはいったいどういうことか、身に染みているからなのです。

 すると、20メートル位離れたところで、突然強い調子で声が聞こえて来ました。

”あっ、あった!、あった!、お姉さん、やっちゃん、あったわよ!””パパは、K市のS地区避難所に居るんだってよ。ほら、名前が載っているよ良かったね!”

 喜びと安堵の声が、その周りに居る者にいやがおうでも耳に入って来るのです。人は、感情が心を支配した時は、周りには意識が向かなくなるものです。

“・・・う・・・うぇーん、うぇーん パパ!、ママ!、何処にいるの?、愛美は、愛美は此処だよ!、パパ!、ママ!、愛美は、此処だよ!”

 厳しい現実の明暗を見せ付けられました。運命とは、無慈悲なもの。願っているから、努力しているからとの理由で、希望は必ず叶えられる保証はないのです。

「大丈夫だよ、もうちょっとの我慢だよ。きっともうすぐ連絡が来るからね。それまでおじいちゃんと待っていようね。ほら、兎さんもいるからね。」

 それまでおじいさんは、職員に子兎のことを話していました。しかし急に女の子が泣き出したことで、現実に引き戻されました。

「コイツが来てくれたお陰で、暫くは大丈夫だと思ってたんですがな。アハハ、今日は駄目なようですな。それじゃあこれで帰りますよ。」

 避難所の職員も一緒になって。

「愛美ちゃん、もう泣かないで。お姉さんも、お父さんとお母さんを捜していますからね。また、兎さんを見に来てあげてね。」

 おじいさんは泣きじゃくる女の子を何度も優しくなだめながら、しっかりと手をつないで歩いて行きました。

 女の子には、辛い過去として残るかもしれません。その時、その場所で、心に深く刻まれたものだからです。しかし、暖かく見守ってくれる人が居たことも一生忘れないでしょう。これから歳を取り、いつの日か今度は自分が誰かを見守ることが来た時に、その時見守ってくれた人の気持ちが本当に分かるようになるのです。経験こそが、同じ境遇となった心を理解することができるのです。


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