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俺達は商品なんだよ

『確かに此処は店の中だよな。食べ物は何処にあるんだろう。』

 フンフンと鼻を鳴らしながら、美味しい匂いがしないか探している時でした。

“痛いよ、狭いよ、怖いよ、此処から出してくれよ~。”

 突然、下の方から苦しげな悲鳴が聞こえてきます。子兎は声のする飼育カゴに積み重なった掲示板の上に乗っていました。見ると、金網の隙間から二つの光っているものが見えます。

『あっ、こ、コイツは、嫌な奴の目だ。』

 確かに声の主は、小動物の天敵であるイタチの仲間です。子兎は気が付かないふりをして、そっと通り過ぎてしまおうとしました。

「まっ、待ってくれよ。君の臭いが分かっているんだ、返事をしてくれないかい。カゴがひっくり返って、何かに挟まって動けないんだよ。それに身体中が痛いんだよ。」

 それは、子兎が知っている怖い獣ではなくなっていました。必死で、助けてもらいたいと願う一匹の弱った生き物です。どんなに強く、また強がっていたとしても、誰でもいつかはそうなるのです。

「もう痛くて痛くて、助けてくれよ、出してくれよ。聞こえているんだろ、お願いだよ。」

 次第に憐れで、可哀相に思うようになりました。でも、いくら飼育棚から落ちたとしても頑丈なスチールの枠組みのカゴは、到底壊れているようにもなく、非力な小動物ではどうすることもできないでしょう。

「助けてあげたいけど、君よりも弱い僕なんかじゃ、この囲いを開けるなんて無理だよ。そのうち人間が来てくれるだろうからそれまで我慢するしかないよ。」

 けれどもその獣は、なげいているばかりです。

「人間なんかあてにならないさ。あいつらは、自分さえ助かれば、後はどうにかなると思っているんだ。俺達が此処で死んだとしてもお構い無しさ。」

「どうして?、だって僕達は、人間に売るための大事な商品だよね。」

「お前、良く俺達のことを知っているな。」

「うん、だって僕もついさっきまでこの店で飼われていたんだよ。」

「なんだ、そうなのか。お前は、売られた奴なのか。それでなんで、店にいるんだ?」

「僕を運んでいる時、カゴがどうゆう訳だかひっくり返って、抜け出して夢中で走ってきたんだよ。そうしたら、此処に来ちゃったんだ。」

「勝手に連れて来て、また他の人間に売り付け、俺達の自由を奪った処だと分かってて戻ってくるとはな。今、お前が言ったように俺達は商品なんだよ。使い物にならなけりゃ、売る価値もない。傷付いて動けなくなった生き物を助けようとする人間なんかいるもんか。」

 希望を失った言葉に、子兎は返事をすることが出来なくなりました。もう、すっかり夜になっています。

“ギギ、ギギ ”“クオーン ”“ピチチチチ ”

 悲しげな鳴き声が、あちらこちらで聞こえてくるのです。もう自分に牙をむくことはありえません。

その獣に尋ねてみました。

「僕はネズミの棚に居たんだけど、此処からどっちにあるか知ってる?」


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