ぐるりと転がしたように
“緊急車輌が通過します、緊急車輌が通過します。”
“屋内に居る方は、大変危険です!、直ちに外に出て、指定の避難場所に向かってください!”
# ウーウー “おーい、ここだよ” ファンファンファン
けたたましく様々な警報音や呼び掛けが、いたる所から出て飛び交っているのです。
『何なんだ、この騒々しいのは。人間はこんなに目茶苦茶な処に住んで居るんだ。やかましいのが好きなんだ。』
地べたに座り込んでいる人間もいます。
# キャン、キャン、キャン キャン、キャン、キャン
“ペロ、うるさいよ。吠えるのやめなさい、ただのネズミよ、放っておきなさい。”
『ああビックリした。隣にいたのはあいつ等か。キツネぐらい大きいな、追っかけられるかと思ったよ。』
ペットショップで鳴き声は聞いていたのですが、実際、犬というものを間近に見たのは初めてです。車から走り出してもうずいぶん時間が過ぎています。
やがて辺りは、日暮れ時の陰が多くなり、崩れかけた繁華街の大通りも暗くなっていました。昼間にあちこちから出ていた黒い煙も落ち着いて、夕闇で殆ど見えなくなりましたが、未だに空気は濁っている気がします。すると、なんだか今まで嗅いだことのある臭いがしてきました。
『これは、お店の匂いだ。直ぐ近くだぞ。』
そうです、本当に連れて来られたペットショップに戻って来ていたのです。
肉球の足型のマークがついた看板が抜け落ちて、電灯は総て割れてしまっています。店内はどうなっているのでしょうか。もう夕闇のせいで、人間の目では中に入らないともう確認することは出来ません。間違いなく屋内は、色々な物が散乱し、荒廃した状態になっているのでしょう。
ここで初めて、子兎は今の状態がこれまでとは違うと気付き始めたのです。
『なんだ、此処にこんなに物があったんだっけ。お腹も空いたし、中に入りたいよ。』
入口前の犬ばしりをうろうろと駆け回っています。ショーウインドーが全面に渡って大きくひび割れていますが、近頃の店舗の窓硝子は散乱防止している為、隙間や穴ができにくくなっています。
すると、ありました。勝手口のドアが傾いで下側が半開きになっています。相当狭い幅ですが、子兎の大きさ位には問題無いでしょう。フンフンと少し中の臭いを嗅ぐと、そのまま鼻の先からぐいぐい身体を押し付け、無理矢理ながらも入って行きました。
# ゴソゴソ ゴソゴソ
やはり中の様子は、一度店ごとぐるりと転がしたように、上の方に置かれてあった物と下に備わっているものが、天地が逆さまになって混散した状態です。そして、様々に漏れ出し入り混じった汚臭が立ち込めています。
“クーン、クーン ”“ピッ、ピピ ”“ブフー ”“キャッ、キャ ”
動物達は、無事に生きているのでしょうか。所々で物悲しい鳴き声が聞こえてきます。しかし、もう何処の場所にどの動物達がいるのかも分からないのです。




