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人間は

「ある日、ご主人様の家に、変な女が来るようになったの。その女は、アタイの傍に近付くことはなかったのね。それまでは、来る人皆、アタイの愛らしい姿を見てくれたり、手に取って触って遊んでくれることもあったわ。でも、その女は違ってた。多分アタイの事を嫌っていたんだわ。」

「ふーん、それで?」

「ある日の夜、ご主人様が凄くめかし込んで出掛けたのよ。何か特別の用があるんだわって感じたの。そしてそれから間もなくだったわ。ご主人様の部屋がどんどん片付けられてって、大きな箱に荷物が詰められていった。そして私は此処に運ばれて来たの。その時、ご主人様はいつものように私を持ち上げてほおずりしてくれたんだ、そして目にいっぱい涙を浮かべてたのを覚えてるわ。」

「ふーん、結局君よりその女の人を選んだんだ。」

「馬鹿言わないでよ、ご主人様は、毎日帰ってきたら、真っ先にアタイの様子を伺って来てくれるのよ。きっと、アタイを嫌ってたあの女に騙されたのよ。」

 2匹が夢中になって話し込んでいるうちに、いつの間にか夕暮れ時になっているようです。

# カラン、カラン、コーン、カンカラーン・・・

 この時刻になると流しているのでしょう、何処かの放送所からカリオンの音で綴られたドボルザークの曲が聞えてきます。

「辛い目にあったんだね。それでも人間に愛想良くしようとしてるんだ。」

「アタイは、このカゴの中でしか生きていけない。自分で食べ物を探したり、住家すみかを作ったりしたことがないのよね。」

「そうか、人間に世話をしてもらうことが一番なんだ。でも、君は可愛い姿をしているから次もきっと良い飼い主に出会えるよ。」

「へえ、アンタって見掛けに寄らず、正直者なのね。」

 こうして、ペットショップでの生活が始まりました。

 それから、ハムスターは子兎に、人間の事を色々と詳しく教えてくれます。

 人間は、いつも怠けたいと考えている、

 人間は、必ず他人より自分の方が優れていて、賢いと思っている、

 人間は、いつも誰かに認められて、ちやほやされていたいと思っている、

 人間は、本当は心が淋しくて、癒して貰いたいと思っている、

 人間は、失意に陥ると、自分の命を絶つこともある、

 人間は、お金や物に執着していて、そのことでお互いに争いを起こしてしまう、などなど。

「でもアタイは、人間に媚びたりしないよ。」

「何で?、世話をしてもらいたいんだよね?」

「そのかわりに、暗くなった気分を楽しくさせたり、機嫌をとったりしてあげてるからね。人間はね、自分独りにならいと素直にならないんだよ。他の人間の前では、つまらないことにムキになったり、疲れていても頑張ったり、何故か心とは裏腹なことをやっている、そのくせ後悔しているんだよ。その辛さを愛らしいアタイ達が和らげてあげるんだよ。」


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