チャーミングポーズ
“こちらが小動物のコーナーです。モルモット、ハムスター、兎、フィレット等が置いてありますよ。お嬢ちゃん、お待ちかねの可愛いのが沢山いるから、好きなの選ぶと良いですよ。”
客が来たようです。明らかにきつそうな店の制服を着ている太った店員が、わざとらしい笑みをしながら商品の案内をしています。
“ママ、こっちこっち。”
“勝手にあちこち行っちゃダメよ、店員さんに怒られるわよ。”
女の子とその母親です。歳は5、6つ位でしょうか、白い水玉模様のピンクのワンピースに水色のロゴが入ったシースルーのTシャツを着て、少し栗色のサラサラとした髪の毛、そのつやつやとした頭は照明で光のわっかができています。店員の言葉はそっちのけで、売り物の動物達を夢中で見入っています。
「あっ、可愛い、このフワフワは何て云うの。」
「お嬢ちゃん、これはお目が高い、コイツはモルモットの中でも、非常に珍しい種類なんですよ。色々な交配を重ねて、偶然できたものです。個体数が少ないので、他のネズミよりお値段が少々張りますが。」
「ママ、これなんかどう?」
「そうね、本当にフサフサの毛並みね。店員さん、子供が飼うのには難しい?、手間がかかるかしら。」
「そうですね、雑種のモルモットなら習性は分りやすく、餌を絶やさないようにして、適度な運動と清潔に保つことに注意してやればそれほど難しくは無いんですけどね。コイツは特定の交配による品種のせいか病気にかかりやすいんですよ。気温湿度を保って健康体を維持する必要があります。お子さんだけでは飼うのは難しいかもしれませんね。」
「そうなの、やっちゃん、これはやめましょう。大人が面倒をみてあげないと駄目みたいよ。」
「ええっ、駄目なの?、凄く好きになったのにつまんない。」
「駄目なものは、駄目なの、うちは共働きよ、ママやパパが世話が出来る訳無いでしょう。やっちゃんだって、学校があるでしょう。この子は一日中見てないと病気になっちゃうのよ、これは諦めなさい、他のにしましょう。」
「ええっ、やだあ。」
「駄目。」
「まあまあ、他にも飼い易いお勧めの可愛いのが沢山いますよ。こっちのケージには、ハムスターがいます。ほら、こちらなんかどうですか。」
店員が、子兎の処へやってきました。どうも、隣のハムスターを案内するようです。
「ほら、ほら、緑のシャツを着ている人間が来るよ。」
“ママ、早く、早く!”
「来た、来たあ、さあ、一番のチャーミングなポーズをとるんだよ。」
ハムスターは、モフモフとチップで敷き詰められた床の上を動き回り始めます。それは漫然とではなく、あくまでもあどけなくです。それから止まって餌を食べながら、黄色と白の毛並み、わざとコントラストが見えやすい部分を向けているのです。先程まであんな生意気に言葉を吐いていたとは思いもつかない徹底したひょう変振り。子兎は感心して見ています。




