表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/75

可愛い私

「煩いな!、横でピキピキ泣くのはやめてよね。アタイは、メソメソする奴は嫌いなんだよ。」

 横の飼育カゴに居る一匹のハムスターが、噛み付くように子兎に言いました。

「えっ、えっ、君は、誰なんだい?、それに此処に居て嫌じゃないの?」

「嫌?、何を言ってるのか分らないね。アタイは、カゴの中で生まれて育ったんだ。此処は、人間様が愉しむためにアタイの様な可愛い生き物を売る店だよ。此処から出ていくには、人間に愛想を振り撒いて、気に入ってもらうことが大事なんだよ。」

「人間?、愛想を振り撒く?」

「ああ、此処より快適な暮らしをするためにね。人間に買い取ってもらうんだよ。それにしてもアンタは、どうして此処に連れて来られたんだろうね?」

「それはどういうこと?」

「アハハハ、だって、ちっとも可愛くないんだもん。毛並みはゴワゴワだし、色も中途半端にこげ茶色で、お世辞にも綺麗じゃないしね。さっきの鳴き声なんか、耳障りなだけだもん。」

そんな小ばかにした言葉に、子兎は不思議と腹を立てていませんでした。

「そうか、僕は可愛くないんだ。それだったらまたお山に返してくれるかな。」

「なんだ、アンタは山から連れて来られたんだ。どおりで田舎臭いと思ったわよ。ほら、私なんかこんなにあか抜けて、カラフルな毛並み、黒水晶の様な目がクリクリでしょう。人間のご主人様を十分満足させられるからね。」

「本当だ、変わった身体の色だね。でも、そんな目立つ姿だと山じゃあ直ぐに捕まって食われちゃうよ。」

「ええっ!食べる?こんなに可愛い私をかい。アンタ、そんな野蛮な処に住んでたんだ。」

「ああ、空では恐ろしい鷹が狙っていて、草むらではキツネやイタチ達がうろついてたよ。でも、ちゃんと安全な巣穴があったし、見付からない岩場で食事をとって、日向ぼっこしてたんだよ。綺麗な水と空気の中で最高に快適だよ。」

「そりゃあ、野生育ちのアンタには良い処かもしれないけどね。まあ人間の家の中には比べものにならないよ。」

「人間の家の中?」

「ああ、アタイは、此処に来る前には、人間に飼われていたんだよ。もうそこ程幸せな場所は無いんだよ。清潔だし、夏は涼しくて、冬は暖かいし、何時でもご飯が食べれるし。たまに、ちょっと遊んであげれば、人間は大満足さ。」

「へえ、遊んであげるって、大変なの?」

「簡単、簡単、手の上で寝転んだり、身体に乗って走り回れば良いんだよ。」

 ペットショップでの、お昼前の穏やかなひと時です。ハムスターが夢中になって、子兎に喋り続けている時でした。

“ママ、早く、早く!”

“やっちゃん、そんなに急がなくても、ネズミさん達はいなくならないわよ。”


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ