正直で幸せに
「瞬く間にカブラムの顔色が変わった。そしてブルブルと震えだしたんじゃ。器を用意した者家臣達も、体が凍り付いた様にその成り行きを見ていた。」
「死んじゃうよ、なぜ助けないの?、助けてあげて。」
「まあまあ、落ち着け・・・“皆の者、何をしておる。この者は、我が国の為に命を懸けているのだぞ。ただちに手当てをするのだ。”王の鶴の一言で、我に返った家臣達は、溶液を飲んでしまわないよう倒れているカブラムを横にうつ伏せに寝かせて運び出した。」
「死んじゃったの?」
「アレスには不思議な力がある。アレスが宿ってさえいれば、朽ちたり欠落しない限り、身体は生き続けるんじゃ。カブラムは息を吹き返した、そして、親書を携えて本国に戻ったんだよ。」
「へえ、アレスの力ってすごいんだ、それでこの後はどうなったの?」
「予測通り既にクイムス王には、如何わしい書状と共に遣いの者が訪れていた。敵国に組みするなど微塵も考えてはいなかったが、隣国が敵国の陽動にどの様な考えを持っているか分からない。隣国の王と同様に、どう動けばよいか判断に迷っていたんじゃ。しかし、カブラムの帰国によって、侵攻の脅威にさらされている隣国が、今援助を求めていることが分かった。早速、戦いに備えていた助けの軍勢を隣国へ進めたんじゃ。」
「ふーん、カブラムは偉いんだね、でそれがお喋りのあだ名とどう繋がるの?」
「それこそが幸福証書だったんじゃよ。残念ながら、カブラムは敵国との戦いで命を落としてしまうんじゃが、その誠実という証でミクシスに暮らせることになるんじゃ。何でも正直に話してしまうアレスになったんじゃよ。」
「そうかぁ、カブラムは正直で幸せになったのかぁ。」
カミーユは、子供なりに感慨深げに話を受けているようでした。フクロウみたいなものは、ダイヤルが回るようにクルクルと首をかしげています。
「相手に心から正直になることは、なかなか難しいもんじゃがな。少々長くなってしまったな、だが、カブラムの話をすることになったのも、何かの縁なのかもしれん。」
「どういうこと?」
「つまり、これからのお前が幸せを見つけ出す上で糧になるのかもしれん。わし等は、主のお指図に従って役目を果たしているだけじゃ。総てはアレスをつかさどる主の導きによるものだ。新しい身体に宿った時には忘れてしまっているが、アレスはその始まりからずっと時空の旅の中にあるんじゃ。」
「始まり、アレスの始まりは何処からなの?」
「わしも、ちーっとも知らない。」
「ええっ、だって今言ったよ。」
「そうなっとるらしい。」
「随分いい加減だね。」




