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誠意への賭け

「そうだな、隣国の王はカブラムの話を聞いて大変驚いたそうじゃ。話が家来達に漏れれば、国中が混乱してしまうのが目に見えるものじゃった。確かにカブラムが生きていれば、いつぞや自国を危機にする情報を漏らしてしまうかもしれん。殺してしまえば、それは防げるだろうが、クイムスとの友好は断たれるじゃろう。もし敵国の攻撃にあった場合、自国だけで戦って勝てる見込みはほとんど無い、例え休戦に持ち込めたとしても、国力は疲弊してしまうことは必至だ。罪人を生かせなかったとは言え、本来の目的である盗まれた情報と策略が何だったかは、カブラムのお陰で分かった。今後どうするべきか、隣国の王は、悩み込んでしまったんじゃ。」

「そうか、それでカブラムの口を利けなくしたんだね。」

「いや、そうではない。隣国の王はそのような愚行に走るような者ではなく聡明なベルグじゃった。カブラムの誠実さを信じて、逆に正直に自分の本心を打ち明けたのじゃ。“敵国がそなたの国と駆け引きをしようとしているのか。もし双方が結びつき強大となってしまっては、小弱なる我が国が戦って勝てる見込みはない。今ここでそなたを殺したとしても、何の意味もない。両国の友好が切れるのを早めるだけのこと。同じ結果であろう。それにこれから下臣共と協議にかけたところで、無駄に混乱を招き、国から逃亡する者さえ現れるだろう。総ては今まで通り、そなたの国と共に力を携える道が、最も良いのだ。そなたを信頼して良いかどうかを迷っておるのだ。”」

「カブラムを信頼するってどういうこと?、何かを頼んだの?」

「少しは考えるようになったようじゃな。賢いカブラムは王の真意が分かって、ある申し出をしたんじゃ。“それではお願いしたいことがあります。ここにデービンの根を絞って作った溶液を用意いただけますか。”そうして、カブラムの前に1つの器が用意され、隣国の王は尋ねた。“このしびれ薬をどうするつもりなのだ。”カブラムは、自分の前に置かれた器に手を伸ばし、両手でゆっくりと持ち上げ、中の液体の様子を覗き込んだ。そして自信をもって答えた。“もし私を信頼していただけるのなら、本国に戻り、あなたの親書をクイムス王にお届け致します。必ずや私の姿と共に、あなたの真心が我が王に伝わるはずです。”すると隣国の王も、その言葉に感付いたのか、カブラムを諌めようとした。“そなたは、自分の口封じのために、その劇薬を煽るつもりであろう。しかし、命を落としては元も子もなくなるぞ。”」

「それで飲んじゃったの?、死んじゃうんじゃないの?」

「そうじゃな、飲んでしまえば死ぬだろう。じゃが、そこにカブラムが隣国の王への信頼を証明しようとした狙い目だったんじゃ、そして、国王にこう告げた。“仰せの通り、これから私はこのデービンの液を口に注ぎ致します。次第に身体が痺れてくることでしょう。しかし今申し上げた通り、我が王の下へ出来れば生きて戻り、貴方様の心を伝えることが本望。私の表情が変わった時に、なにとぞ慈悲じひの措置を取っていただきたい。“そう言って、器を取ると口を着け、そして一気に服した。」

 さすがのおちゃめなカミーユも、信念を貫こうとするこの凄まじい話に、息をのんで言葉を失っています。


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