第52話 大事な存在
「佳苗…………」
次の日、央崎は季楽坂を空き教室へ呼び出していた。
「…………」
「…………昨日、一生懸命考えた。俺も、佳苗に側に居てほしい。けど…………」
「…………けど?」
季楽坂は、震える声で聞いた。
「けど、それは恋愛感情じゃない。家族みたいに、守りたい存在なんや。小さい時みたいに横に座ったり、膝の上に乗ってきた時、安心できた。俺にとって佳苗は、恋人としてじゃない、心から安心できる人なんや」
「…………」
「だから――」
「私ね、SNSとか報道を見て、珀多くんが遠くに行ってしまったように感じたの。…………ああ、山志那さんの方が珀多くんに近いんだなって」
「…………」
「けど…………次の日に来てくれたとき、嬉しかった。忘れられて無かったんだって…………満たされたの。初めて会った時にみたいに」
「佳苗…………」
「…………無理に付き合わなくても私、大丈夫。けど、いつも通りに接して欲しい…………小さい時みたいに」
それだけ、それだけで良いから…………。
「…………大事な家族に普段通り、接さないやつがどこにいる」
「え…………」
「テニスだけじゃない。幼馴染として、大事な存在なんや。佳苗のことを一度もテニスだけで繋がれてる絆なんて思ったことない。だから、付き合えなくても、普段通りに接するに決まってるやろ」
「珀多くん…………」
「ごめん、不安だったよな」
――ガバッ
「謝らないでよ…………バカっ!!」
季楽坂は、央崎を肩を力を抜いて叩いていた。
「佳苗のことは見放さない。約束する」
季楽坂の叩く手が止んだ。
「…………約束だよ?」
「おう、これからもよろしくな」




