第51話 想いを背負う
「(珀多くん…………ちょっと来てほしい)」
学校中からの囲み取材を耐えた央崎は、放課後になり帰ろうとしていた。
そして、声をかけられた央崎は季楽坂と空き教室に入った。
「どうしたん?」
「あのね、その…………私、珀多くんのことが…………好きだったの!!」
央崎は、大きく目を見開いた。
「昔から、私に優しくしてくれて…………ずっと、好きだったの。地区大会の時に再会してから、スキンシップを取ってたとき、ずっとドキドキしてた。それで、私のことも気遣ってくれて…………そんな、優しい珀多くんのことが好き!!…………ずっと、側に居て、ほしい」
央崎は目を見開いたまま、十数秒間無言のままだった。
「…………大事なことやから、返事は待って欲しい」
「…………いつでも、返事待ってる」
季楽坂は空き教室を出た。
…………佳苗、俺のこと好きだったのか。
守ってやりたい。俺も側に居てほしい。けど…………何かが違う。
央崎は、スマホの写真フォルダーに目を移した。
「…………っ、」
央崎は、思わず胸を手で抑えた。
この胸のドキドキは…………蓮香に向けたもの…………。
――全国大会の2日前に感じた、あの気持ち
…………佳苗には向けてない。でも、佳苗と距離ができるのはイヤや。
じゃあ、俺は佳苗に、蓮香に
――どう接して欲しいんだ
佳苗が勇気を持って告白してくれた今、2人への気持ちが曖昧な状態で返事をするのは、佳苗を突き放すのと同然や。せめて、蓮香に対するこの気持ちの正体を知りたい…………
央崎はもう一度、全国大会の時の写真を見た。
恋…………なの、か?
良きライバルに対する気持ちじゃない。
しかも、昔との関係性も違う。隣に立ちたい…………けど、ライバルとしてじゃない。
もし、恋だとしたら…………、
佳苗の気持ちを踏みにじることになるのか?
央崎は、さっきまで季楽坂の立っていたところに目が移った。
…………いや、違う。地区大会の後も、ゲリラ豪雨の時も、昨日も、心の底から安心出来た。佳苗のスキンシップから感じるこの安心は、失いたくない。
――自分が壊れてしまいそうだから。
――自分の目標を、佳苗を失ってしまいそうだから。
佳苗も安心すると言っていた。
恋じゃない…………けど、失いたくない。
家族みたいに守りたいもの、だ。
どっちも失いたくない。
このまま曖昧にして、過ごせたのならどれだけ楽やろうか。
けど――
――伝えないと、どっちも失う。




