第16話 気持ちの整理
「セブンゲームマッチ。プレイボール」
よく見たら珀多って、腰落としすぎな気がする…………。
「ほら、応援してあげな」
「あっ、はい。…………いっけーいけいけいけいけ、珀多、おっせーおせおせおせおせ、珀多、いーけ、おーせ、大豆山、珀多!!」
――バコン
「「「おお…………」」」
すごい。あれだけ動けないって言ってたのに、逆方向の球を一発で決めた…………
「やっぱり、応援の力ってのはすごいな。私なんか、全国大会で応援してくれてたん、ろくっちだけやったから、全然聞こえんかった(笑)」
「そうなんですね…………」
「蓮香ちゃんは気付いた?珀多くんが動けない理由――」
「腰の落としすぎですよね?」
「そう、よく気付いてるね。でも、逆方向の球を一発で仕留めた。なんでだか分かる?」
「もしかして…………応援の力?」
「そう。もちろん、フォームを正すことも大事だけど、仲間がいるってだけでこんなにも違ってくるんだよ」
「仲間…………」
確かに、珀多とは何事でも争ってきた。協力なんてしたことが無かった。
けど、
あの夜の笑顔は――
あのダブルスの時の慰めは――
あの応援は――
紛れもなく、私を鼓舞してくれた。
何これ…………家での夜の時とはまた違う。
心の奥底がジンジンするのは一緒だけど、なんだか温かい…………
「ほら、応援は継続が大事だぞ〜」
「あっ、はい。いっけーいけいけいけいけ、珀多――」
その後、試合は央崎のストレート勝ちであった。
「「ありがとうございました」」
全日程が終わり、テニスコートに部員も含めた関係者が集まっていた。
「今日は、ありがとうございました。わざわざ、合宿中に…………」
「いえいえ、こちらこそ。この子たちにも良い経験をさせてあげられました」
「こちらも良い経験になりました。じゃあ、私たちはこれで――」
多堰高校一行が帰るのを待ってから、大豆山高校一行はミーティングをしていた。
「2人ともお疲れ様。良い経験になった?」
「「はい!!」」
「それは良かった。合宿も明日帰ることになるし、私から気になったことを言うわね。まず、珀多くんは腰を落としすぎてるわね。それを改善すれば、後衛も出来るようになると思う」
「落としすぎ…………だから、動きづらいのか…………」
「そう。で、蓮香ちゃんはしばらくは前衛の練習を中心しましょうか。後衛は申し分ないし」
「はい」
「じゃあ、にわっちからも」
「技術面は全部、ろくっちが言ってくれたから省くけど、2人とも仲が深まったね。これは紛れも無い成果だよ。しかも、蓮香ちゃんに関しては、珀多くんが腰を落としすぎてることも気付いてたし」
「え!?そうなん?」
「う、うん…………」
「うんうん。この調子なら、全国大会も夢じゃないよ。帰ってからも私もちょくちょく、見に来ようかな〜」
「にわっち…………最近、文芸部の方に顔を出して無いって噂になってたわよ?」
「あちゃ~バレてたか」
「はぁ…………とりあえず、今日はゆっくり寝ること。以上、解散」
「「ありがとうございました」」
まるで、普通の部活だわ…………珀多となのに。
いや、今の珀多は今までの珀多と違う。だから、普通の部活に感じれるんだ。
これからは、一部員として一仲間として接したら良いんだ。




