第94話 エリザベート姫
あれから何度か合格をいただくまでやり直しをさせられたりもしましたが、わたくしは元気です。
結局昨日はお泊まりしたのですが、翌日は朝からグローシアの検査だとかで研究所内でグローシアの操縦をさせられてしまい、さらに何やら色々なデータを採取されたりしました。
アペルピシア山脈で拾った書物によってグローシア自体を改造できるようになったのかと思ったのですが、そういうわけではないようです。何を作ろうとしているのでしょうか?
まぁなんでもいいですわ! わたくしもう1泊して帰るんです! ……と思ったらその日の夜に目の笑っていないシャノンがヘーメラーでやってきて、わたくしを拉致して帰るという恐ろしい事件も起きたりも致しましたが、わたくしは元気です。でももうサインは嫌ですわ!
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王都のクーデター未遂の影響でウィングリー王国内は混沌とした状況になってまいりました。
我がエクソシア家とウィングリー王家は交戦中ですが、さらにウィングリー王家とウッコネン公爵家、それに類する貴族家が敵対し、ウィングリー王国内はまさに乱世乱世でした。さらにリュドヴィック共和国も何やら国境で不穏な動きを見せています。
そして再び静かな膠着状態となったたまま8月を迎えました。炎天下の太陽が照り付ける真夏のある日、ウッコネン公爵家から使者がやってまいりました。はちゃめちゃに遠いのに、まぁよく遠いところからいらっしゃいましたわねぇ……。
ウッコネン家はわたくしにとっては遠い親戚……と言いましても会ったこともない他人ですし、会談に出席する気もなかったのですが、これもお仕事だと言われてしまっては致し方ありません。大いなる力には大いなる責任が伴いますものね!
渋々とドレスに着替えて市街地にあるエクソシア城へ出向き、サラとシャノンを連れて城内をトコトコと歩いていると、見知らぬ少女に道を塞がれました。
「あなたがエクソシア女公爵ね!」
気の強そうな少女がビシリとわたくしを指差して仁王立ちしています。背はわたくしよりはるかに小さい140から150センチくらいでしょうか? 中学生くらいの年齢で顔立ちは幼いですが、貴人であろうオーラのようなものを感じました。陶器のように白い肌。そして腰まで伸びた銀の髪。ですがよくよく顔を見てみましても、この少女に心当たりはありませんでした。
「エリザベート様、勝手にお部屋を出られては困ります」
「お、お嬢様!? 早くお部屋に戻りましょう」
シャノンがわたくしの前に出ると、その少女……エリザベートと呼ばれる少女に注意します。その少女の後ろでは老齢の男性がぺこぺこと頭を下げています。
「聖女、あなたもエクソシア公爵も当てになりませんもの! ですのでわたくしは直談判に参りました! エクソシア公国の最高権力者に直接頼むことが、一番早いと気がついたのです! リュドヴィック王朝再興に手をお貸しなさい!」
……確かに一番偉い人なんですけど、わたくしに言われても困りますわ!? そっとシャノンの耳元に顔を寄せると、小声で囁きます。
「どうなってますの? わたくしリュドヴィックの亡命政権についてはあまり話を聞いていないのですけれど……」
「ひゃっ!?」
耳雑魚聖女様は顔を真っ赤にしてしゃがみ込んでしまい、残されたわたくしと気まずそうな顔のエリザベート姫と目が合いました。困りましたわね……。
「……こほん。初めまして、エリザベート様。わたくしはヴィアリス=エクソシア女公爵と申します。残念ですがわたくしたちは現在戦争中ですの。ですからお助けすることはできないですわ」
「それが終わってからでいいって言っているの!」
「でしたらウィングリー王家との戦いが終わるまでに、あなたがわたくしたちに次の戦争をさせるために何ができるかを考えておいた方がよろしいですわね」
「それについては安心なさい! あなたは女性が好きなんでしょう? わたくしを好きにすればよろしいですわ!」
自信満々に、不敵に笑みを浮かべながら、わたくしの目をじっと見つめるエリザベート姫。そしてびしりと人差し指をわたくしに突き付けます。ドヤ顔ちんちくりん少女が鼻息をむふむふさせていますわ!
「ちょっとシャノン!? 何なんですのこのおかしな子は!?」
「だって……何だか小さなヴィアみたいで強く言えなくて……」
「髪の色くらいしか似ていないでしょう!?」
結局エリザベート姫は、彼女を探していたメイドたちに引きずられるようにして連れ去られていきました。また変な女が増えましたわね……。




