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第79話 本

「何これ? 本?」


「ほ、本ですって!? アリシア! 離れなさい!!!」


 こんなところで見つかる本なんて、そんなの絶対に正気度が下がるタイプの本に決まっていますわ! わたくしはすぐにアリシアを抱き寄せて確保しておきます。役得ですわね!!!


「人の皮か何かで装丁されているに決まっているんですから! 開いたら変な呪文覚えちゃいますわよ!」


「ちょっ近っ!? そ、そうなの?」


「アリシアはそこで待っていてください。わたくしが見てきますわ!」


 アリシアをかばうように警戒しながら近付くと、ぼんやりと輝く台座の上に置かれた本の束をわたくしは順番に手に取り、タイトルを確認していきます。


 えーと……「猿でもわかる最強マギアスピーダ製造・改訂版」「鉄炭会皇大 装甲板物語・鉄壁」「PMCCピュアマギコークスクリスタルはどこへ消えた」「実弾武装を撃つのは楽しいかね?」……。


「何なんですの! このふざけた本の数々は!?」


「何だったの?」


 二人で本をパラパラとめくって内容を確認してみますが…………。


「わかります?」


「わかるわけないじゃん……」


 ふざけたタイトルの癖に、すこぉ~~しばかりわたくしたちには難解な内容のようでした。神話技能が足りていないのかもしれませんわね。


 わたくしたちがページをめくりながら唸っていると、突然頭上で炸裂音が鳴り響きました。


 断続的に発砲音が鳴り響き、ガランゴロンとわたくしの頭より大きい薬莢が空から降ってきて、辺りに火薬の匂いが充満します。このままですとわたくしたち「アーサーなんだぜ」になってしまいますわ!?


「……雪猿がこっちに来てるわよ。はやく帰って来て」


「うるさいですし危ないですわね!? 当たったらマジで死にますから、さっさとずらかりますわよ!」


 わたくしは左脇に本を抱えて、右脇にアリシアを抱えるとまだ垂れ下がったままの簡易エレベーターに飛び乗ります。


「ヴィアリスさんは細いのにどこにそんな力があるの?」


「生まれつきですわ」


 ゆっくりとウインチがワイヤーを巻き取っていき、わたくしたちはアグリオスのコックピットに向かって昇っていきます。ちなみにウインチとはワイヤーを巻き取る機械のことですわよ。


「……ほんとに急いで」


「そんなこと言われても急げませんわよ!?」


 未夢に急かされてもウインチがワイヤーを巻き取る速度は変えられません。未夢の声色に不安を感じたのか、アリシアはわたくしにぎゅっと抱きついてきます。役得ですわ~~~~!!!


「……ヤバっ!? 腕が」


 ぐらりとアグリオスの体が揺れると鈍い音が響きました。岩がアグリオスの装甲に激突した音です。左側から飛来した岩を防ごうとしたところ、腕が動かなかったために体で止めたといったところでしょうか。


 わたくしは冷静にそう分析しながら、アリシアが落下しないように抱き締めていると、拳くらいの大きさの石がこちらに向かって多数飛来してきているのがわかりました。


「きゃっ!?」


 可愛らしいアリシアの悲鳴を聞きながら、感応器官を活性化させると飛来する石をサイコキネシスで叩き落としておきます。この力って使う機会がほとんどないんですわよねぇ……。最近は紅茶のスプーンを動かす時くらいにしか使ってませんわ。


 わたくしが感応器官を活性化したことで髪が緑色に淡く輝きます。アリシアは間近でゲーミングわたくしヘアーを見て、感嘆の声をあげています。


「わ! さっきも緑色になってたけど、ヴィアリスさんって進化したの?」


「進化ですか? よくわからないですけどそんなものBボタンを押しておきなさい。帰りますわよ」


 アリシアは怪訝な顔で「Bボタン?」と呟いておりました。そういえばアリシアもエメラルドアイに目覚めたんでしたっけ? どのくらいの力なのか興味がありますわね。


 そして無事にアグリオスのコクピットに入ったわたくしたちは、荷物を床に転がすと操縦席に座ります。


「……大丈夫? 怪我してない?」


「問題ありませんわ。さっさと帰りましょう」

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