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第75話 アリシア

 それはもうウキウキした気持ちでアグリオスに乗り込んだわたくしと未夢。しかし世界はそれを許して……これ前もやりましたわね!?


 操縦席は2人乗りどころか、5つの座席が全て残っていました。撤去しませんでしたのね……。試作機ですし、案外そういうところは適当なのかもしれません。


 そしてわたくしがメインの操縦席、未夢が砲手担当の席に座りました。他の席はアラフニス2の複数の脚を操作するためにあったのでしょうか? 折角の5人乗りのロボットなのですから合体機能を付けてみてはいかがでしょうか? 翠蘭に進言しておかなければいけませんわね……。


「ではハッチ閉めますわよ」


「……いつでも」


 スイッチを入れるとブンッと低い音がしてコクピットの中が緑色に染まります。あらあら、4本もピュアマギコークスクリスタルを使ってますのね。なかなかよろしいんじゃありませんの? 元は5本と翠蘭が言っていた気がしますけど……。


 わたくしが操縦桿を握り魔力を流すと、出力が上がるどころかシステムがダウンしてしまいました。あーこれって……。


「……キャアァァァァァァ!!」


「はぁ……また怨霊憑きMAですの?」


 未夢の事件性のある悲鳴を聴きながら、わたくしはまたかとうんざりしてしまいました。しかも目の前に立っている半透明の少女は、どこかアリシアに似ていたのですから……。



◇────────────────◇



「というわけでアリシア嬢、ご協力をお願いしますわ」


「ヴィアリスさんは相変わらずだね……」


 ベッドで半身を起こしたアリシアは、未夢が剥いてくれた梨を食べています。わたくしもシャリシャリと食べています。やっぱ梨ですわ、梨。


 あれから時間も経ち、お薬も抜けてきたアリシアは元気そうに梨を頬張っています。どうせ暇でしょうからちょっとお手伝いをお願いしに来たわけですわ。


「それは別に構わないけど、私たちはこれからどうなるの?」


「これが終わったらウィングリーに帰ってもいいですわよ。でもまた戦いに巻き込まれるでしょうし、ここで捕虜ライフを送るのもいいんじゃありません? 眼鏡のあいつはどうするか協議中ですわ」


 協議中も何も眼鏡はいまだに取り調べ中ですけど……。現在進行形でこってりがっつり絞られておりますわ。


「そっか……。私はどうすればいいかな?」


 緑色になってしまった瞳でわたくしのことを見ながら、はぁと小さくため息を吐くアリシア。相変わらず垂れ目ですわね。


「アリシア嬢の好きにすればいいのではありませんか? ただウィングリーに戻ってもロクな目にあわないと思いますけど……」


「あはは……やっぱり?」


「シャノンみたいにうちで働くか、先ほども言いましたが当分捕虜ライフを送ってもいいですわよ。うちはエメラルドアイの保護に力を入れていますからね。ご安心ですわ」


「ああ……そうだね……。そっちはもう少し考えさせてもらおうかな?」


「ええ、もちろん。では明日の朝迎えに来ますから、準備しておいてくださいまし」


 そして翌日、わたくしたち3人がアグリオスに乗り込むと、再び怨霊が出てきました。しかしアリシアの説得により、無事アグリオスを起動することに成功致しました。


 アリシア曰く自分の異父姉妹ではないか、と言っておりましたわね。家庭環境複雑すぎませんこと? やはり鬱シナリオライターとウィングリー王国は滅ぼすべきですわ。


「あまり乗り心地はよくありませんわねぇ……」


「……比較対象がグローシアなのが悪いんじゃない?」


「でもエフカリストがかなりの厚着をしたわたくしとしましたら、このアグリオスは着ぐるみを着たわたくしですわよ?」


「……なんとなく言いたいことはわかるけど、それならグローシアは何になるの?」


「全裸のわたくしですわね!」


「あはは……ヴィアリスさんはいつも元気だね……」


 そんな他愛もない話をしながらわたくしたちはスポットの北部最奥に位置するアペルピシア山脈へと向かいました。あそこは寒いんですわよねぇ……。

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