第66話 ジェニシア
「お前が……お前が……! お前だけは許さんッ!!!」
アイゲンブレートは一瞬で立ち上がると全身から《《緑色の光》》が……あれ? これさっきやりましたわね?
ついに主人公もPMCC搭載機に乗るようになりましたか……。原作を普通にプレイしてたら最短でも2年生後半まで乗れませんのにね? どうしてこんなに早く専用機が……。
あっ! わたくしが闘技大会で賞品のPMCCの「ノスタルジー」を回収するの忘れたからですわね!? 大会の賞品にしようと言い出したやつは誰ですの!? 減俸ですわね!
「消えろ消えろ消えろォォォ!!!」
「アインっ!」
跳躍したアインゲンブレートは、両肩に装着されたミサイルランチャーを全弾発射しつつ、右手に持ったアサルトライフルをわたくしにフルオートで撃ちながら距離を取りました。ちなみにですけれど、今のシャノンの「アインっ!」の語尾にはハートマークはついていなかったことを報告しておきますわ。
わたくしは地上でアサルトライフルの弾丸を回避しながら、飛来したミサイルの弾頭をグローシアの腕で払います。なんだか腕から衝撃波のようなものが出せるようになってきたんですのよね。わたくしに爆風も触れることなく、ミサイルはすべて撃ち落とせてしまいました。また闘いの中で成長していますわよ、わたくし!!
「踏み込みが足りませんわねぇ!!」
「エクソシアアァァァ!」
今日は名前を呼ばれることが多いですわね? わたくしは女の子に名前を呼ばれることは大歓迎です。後ほどシャノンにベッドの上でたくさん呼んで頂くことに致しましょう。
「わたくしは疲れたので早く帰りたいんです!」
着地する瞬間のアイゲンブレートの頭上を取り、かかと落としを叩き込んで差し上げると、アインはアサルトライフルを盾にしてそれを防ぎました。結果、アサルトライフルは爆発四散します。
そのまま蹴る殴るの暴こ……いえ、制裁をくわえたところ、アインは叫びながらアイゲンブレートの奥の手ともいえる、左腕の肘に装着された武器をわたくしに向かって叩きつけてきました。
「消えろチート女ァッ!!!」
ドゴンッ! と肘で撃鉄が落とされたような爆音が鳴り響くと、アイゲンブレートの腕から巨大な《《鉄の杭》》が発射されます。いわゆるパイルバンカーってやつですわね。本当に男の子ってこれが好きですわよねぇ……。
動きが読めていたわたくしはアイゲンブレートの左腕に手を添えて、そっと逸らして差し上げました。アイゲンブレートは鉄の杭を発射した反動で腕が伸びきり、大きな隙が生まれました。これがアニメならここで処刑用BGMが流れるところですわね!
「せいっ! そりゃっ! えいっ!」
今度こそ鉄拳と鉄蹴制裁を叩き込みます。破片をまき散らしながらアイゲンブレートは再び地面に沈みました。やっと……やっと終わりました。一刻も早く帰りましょう。それにしてもチート女ですか。わたくしのダサいあだ名がまた増えましたわね……。
『ヴィア! もう1機来ます!』
「誰ですの!? いい加減になさい!!!」
『ご当主! こっちで……嘘だろ、おい。まさか……』
『どうしましたの? シャノン、こいつは任せましたわよ!』
ひっくり返ったままのアイゲンブレートをシャノンに丸投げして、わたくしは前衛部隊の元へと急いで戻ります。やることが……! やることが多いですわ……!
わたくしこの闘いが終わったら絶対に女とイチャつくんですから……!
「誰ですの! わたくしの邪魔をするバカは!!!」
『ご当主! そりゃマズいぞ……』
前衛部隊のスキアたちが揃って同じ空を見て動きを止めていました。そして到着したわたくしも同じ方向、同じものを見つめてしまいました。
恐らくウィングリー王国民のパイロット全員が憧れたであろう機体。まぁわたくしは憧れはしませんでしたが、王立博物館でレプリカも展示されていたのを見たことのある機体です。
その名は「ジェニシア」。ウィングリー王家が所持する世界に数機しかない第1世代マギアスピーダです。
朝日を浴びたジェニシアが空から舞い降りるように、わたくしたちの目の前に今、着地しました。




