第65話 破綻した設計の妥当な末路
アリシアの怒気を孕んだ絶叫がアラフニス2の外部スピーカーから反響し、わたくしは、アリシアに最悪の展開が訪れてしまったという現実をようやく飲み込むことができました。
本当に最悪です。原作のわたくしことヴィアリス=エクソシアに行われるはずだった実験は、アリシアに行われてしまったのでしょう。
実験の内容は、洗脳と感応器官の強化……だったはずです。しかし偶然にも、副産物としてエメラルドアイの因子を持つものを強制覚醒する方法が見つかってしまうのですわ……。
正直なところそんな気はしていました。わたくしがアリシアのシナリオを覚えていないばっかりに確信が持てていなかったのです。
「もはやウィングリーに慈悲は必要ありませんわね!」
「ヴィアリスウゥゥゥエクソシアアァァァ!」
アラフニス2の脚の先端からエネルギーブレイドが生じると、グローシアに向かって襲いかかりました。
なんということでしょう! 視界がエネルギーブレイドで埋め尽くされてしまいました!
「避けられませんわ~~~~! ……なんて言うと思いましたか?」
エネルギーブレイドはエネルギーの部分にさえ当たらなければいいのです。簡単、簡単!
振り下ろされるエネルギーブレイドの合間を縫うように回避し、それを支える脚をぶち折っていきます。わたくしってこういう節足動物の脚を折るのは得意なんですよ。日頃の行いの賜物ですわね!
飛びながら蹴りで叩き折ることも、殴って装甲をぶち破ることもいつもより上手くできている気が致しますわね。これも今は亡き師匠との組み手のおかげですわ!
「アリシア! 今、助けてあげますからね! 眼鏡は遺書でも書いてなさい!」
迫り来る脚を次々にぶち折っていくと、1分も経たないうちにコアだけになってしまいました。ゲームで何回も倒してますけど、部位破壊箇所が多すぎますわよ、本当に。次からは脚にもエネルギー障壁を張っておくんですわね!
「ヤメロォォォォ!!」
「はい、もう終わりますからね~? そりゃっ!」
コアブロックに残された最後のブースターを蹴り壊すと、煙を大量に吐き出しつつ横回転しながら地上へと堕ちていきました。原作でも弱かったですけど、本当に弱かったですわね、アラフニス2……。これに乗せられた原作のわたくしって不憫ですわ……。
「うわああああっ!?」
「おっと、いけません」
あのまま墜落したら中のアリシアが死んでしまいます。眼鏡の断末魔は心地よいですが。落下地点に先回りしコアブロックをキャッチしてミッションコンプリートですわ~~~!
◇────────────────◇
「ご当主! シャノン嬢の掩護を!」
「何なんですの!?」
前衛部隊と合流したわたくしにジェイムス隊長が叫びます。視界を後衛部隊に向けると、そこには謎の機体と睨み合うシャノンの姿がありました。わたくしはすぐさまコアブロックをジェイムス隊長に投げ渡すと指示を出します。
「中身にまた眼鏡たちが入ってますから拘束しておきなさい! 中に居る女の子に傷一つでもつけたら一兵卒に落としますからね!」
「そんなもん投げないでくださいよ!?」
謎の機体に近付くにつれ、見えてきた姿にわたくしは懐かしい気持ちになりました。あれは主人公専用機「アイゲンブレート」……それも傭兵ルートに入った時限定の機体カラーです。深緑の迷彩がかった装甲が地味なオーラを漂わせています。寮所属の時は寮のカラーになるんですけど……。主人公はフォトゥネスに戻らなかったのでしょうか?
「俺と一緒に行きましょう、シャノン様!」
「アイン、私は戻りません。それにフォトゥネス寮はどうしたのですか?」
「あんなところに未練はありません! 俺にはシャノン様が、シャノンが……!」
「ちょぉっとお待ちなさい! わたくしキック!」
グローシアの足がアイゲンブレートの背中を蹴り飛ばすと、アイゲンブレートは前のめりに倒れ伏しました。シャノンは優しいから強く言えないのでしょう。わたくしが代わりに言ってあげます! この法治国家エクソシア公国の中では無体な行いは許されませんわよ!
「何をするッ!?」
「このストーカー男! わたくしの女に手を出すんじゃありませんわよ!!!」
「ヴィアっ!」
聞きました!? 今の「ヴィア!」の語尾には絶対ハートマークが付いてましたわよ!!!




