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第46話 借りを返す

 貴賓席の前に着地したエフカリストを操り、わたくしは第3王子が乗ったままのコクピットブロックを地面に叩きつけました。


「まだ居るかァ? お偉いさん方よォ!!」


 途端に客席から悲鳴と怒号が上がります。貴賓室に居た各国首脳陣たちの内、まだ逃げて出していなかった呑気な方々が、逃げ惑っているのが見えました。


「聞け! 我々カラネアの目的は、エメラルドアイの人体実験及びエメラルドアイの生体素材としての利用を止めさせることにある!」


 わたくしが貴賓席の前でそう宣言すると、ギャーギャーと喚いていた一部の人物が静かになりました。思い当たるところでもあるのでしょうか? ここで殺しときます?


「すべての国に通告しておく。即刻中止しない場合、我々は本格的に5ヶ国のマギコークス採掘及び流通を妨害し、研究関連施設を破壊する実力行使に移る。我々の作戦行動を妨害するものたちも同様に排除する」


 まぁ通告する前からやってますけどね!


「お前は何の権利があってそんなことを言っておるのだ!!!」


 小太りスキンヘッドのブルドッグみたいなおじ様が、貴賓席から身を乗り出して、ツバをまき散らしながら抗議してきました。というか今も現在進行形で吠えています。躾のなってない犬ですわねぇ……。


──ドンッ!


「お前は何の権利があって俺の前でわめいているんだ?」

 

 肩のショットガン「歓迎光臨」に吹き飛ばされた赤黒い染みは、もう何も喋りません。……自分でやっておいてあれですけど、グッロいですわねぇ……。皆様も決してMAの手で人間を叩いたり、大口径の銃で人間を撃ったりしてはいけませんわよ?


「折角、平和的に通告しに来てやったのによォ! ここで皆殺しにしてもいいが、それだとお前らやめねぇだろ? 止めるなら殺さないでおいてやるって言ってんだよ!!」


 ああ、わたくしはなんて慈悲深いんでしょうか。決して、潰しても潰しても湧いてくる研究施設とのイタチごっこに嫌気が差したではありませんわよ!


「逃げちまってここに居なかったとしても、『聞いていなかった』は通用しないからな。すぐに中止しろ。通告は以上だ」


 わたくしは各国の首脳たちに、そう宣告致しました。


 結局持ってきたものの、使わないままうめき声をあげているだけのコクピットブロック(第三王子)に、とりあえず蹴りを入れると放り捨てます。それと同時に会場にMAが雪崩込んできました。


 ざっと見ただけでスキアが6機、その他20機以上の近接装備をした量産機の群れが、こちらに向かってきています。まぁ今わたくしに遠距離から攻撃をしたら、客席が大惨事になるでしょうからね。


 ここだけの話なのですけど、実はフォトゥネス教国にスキアを売りつけた時、お値段が半額だったのですけど、あれって実は残価設定ローンだったのですわよね?


 ですからここであれを返してもらっても問題ないでしょう! わたくしローンにはまったく詳しくありませんし、フォトゥネス教国の方たちはそんなこと微塵も知りませんでしょうけど!


 わたくしはパイロットスーツのフロントファスナーを谷間が出るまで下ろしますと、そこに刺さっていた《《物》》を谷間から抜き取ります。それはスティック状の無線スイッチでした。谷間に収納していた理由はパイロットスーツにはポケットがないからです。他意はありませんわ。


「ポチッとな!」


 わたくしが軽やかにスイッチを押下すると、先頭を走っていたすべてのスキアの動きがゆっくりと止まり、コクピットのハッチが開きます。


『な、なんだ!? どうなってるんだ!?』


 わたくしの感応器官を通して、スキアのパイロットたちの困惑する声が聞こえてきました。まだまだこれからですわよ!


 バシュッ! と小気味よい爆発音を立てて、コクピットから座席が射出されました。もちろんパイロットごとです。


『うわああ~~~~!?』


『どうなってんだこれぇ!?』


『わあああ!? ママー!!!』


 皆様の情けない悲鳴助かりますわ~~~~!


 コクピットから前方に射出された座席には、もちろんパラシュートなんて付いておりませんから、そのまま地面に落下していきます。


 ごろごろと受け身も取れずに転がっていくパイロットの方たちは、なんだか不憫ですわね。遠くで主人公が乗っていたスキアの座席もふっ飛んでいて、思わず笑ってしまいそうになりました。ですがここは戦場ですわ! 気を抜いてはいけません!


 そして残された機体は、ただいま到着致しましたカラネアのスキア部隊が回収してくださることでしょう。ついでにその他の量産機たちがスキア部隊によって撃破されていきます。わたくしにはそれを見守ることしかできませんでした……。ああ、資材がいっぱい手に入りますわね……。


「ルイスを解放しろ!」


 わたくしの仕事も終わりましたので、作戦を次の段階に移行しようとしたところ、目の前に金髪のイケメンが現れました。どこかで見たことがあるような……?


「ルイスってのはこれか?」


 わたくしはベコベコに凹んでいるコクピットブロックを、ショットガンでガンガンと叩きながら答えます。


 誰でしたっけ? ウィングリー王家の紋章が入った無駄に豪華な服を着るこの男は……? ああ? ああああ~~~!!! こいつ第1王子ですわ!!!


「そうだ! そこにい」


──ドンッ!


 第1王子討ち取ったり、ですわ~~~~~~!!!!


 今後ウィングリー侵攻の最大の障壁となるであろう、ウィングリー最強キャラが血煙となって消滅致しました!!!! 最高ですわ~~~~~~!!!


 それにしても第3王子より王位継承権が高いでしょうに、何をふらふらと生身で敵の前に出てきているのでしょうか? 第3王子がそんなに大事だったのでしょうか? 不思議ですわね。まぁこれもわたくしの生まれ持った天運というものでしょう!


「借りは返したぞ。ウィングリー」 


 お腹を撃たれたの、痛かったんですからね!!!

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