第40話 補給
……余裕ぶって部屋を出ましたけど、ついに時が来てしまったのですね。
よくよく考えてみましたら、わたくしとカラネアの繋がりがバレますと、わたくしが指名手配されるのも時間の問題でしょう。今はまだ証拠がないのか、それともエクソシア公爵家に気を遣っているのか、はたまた泳がされているのか動きはありませんが……。
まぁカラネアはスキアを使用していて、スキアをフォトゥネス教国に売ったのは夜月商会ですからね。いつかはバレると思ってましたけれど!
それにしてもスキアをフォトゥネス教国に売りつけたおバカはどこの誰ですの!? せめて見た目を変えるくらいはしておかないといけませんでしたわね! ……いえ、過ぎてしまったことを悔やんでいても仕方ありません。おバカもおバカなりに頑張っていたのです。……いたのでしょう。はい。
そもそもスキアを売りつけたのは、遠大なる計画の一部なのです。シャノンに同情したところがあることは否定致しませんが。
わたくしの予想では、緑髪との争いがもっと目に見える形で起きて、フォトゥネス寮内どころか、皐月学園全体にまで影響が出るかと思っていたのですけれど……。あまりにサクッとシャノンが追放されてしまって驚きました。 いくらなんでも展開が早すぎますわよ! わたくしが原因ですけど!!
話を先ほどの第3王子との一件に戻しますと、この「ヴィアリスが王子に求婚されるイベント」は原作にもありました。あったのですが、原作ではもっと後になって発生するイベントでしたし、原作ではヴィアリスに求婚するのは第1王子でした。
どうして第3王子に変わってしまったのかはわかりませんが、この世界はゲームの世界とは違うということなのでしょう。まぁどちらにしてもお断りですけど。
原作のヴィアリスもこれを断ります。第1王子の側室になれという話だったからですわね。プライド高い高~い! している原作ヴィアリスさんは、正妻にしかならないということで、そこで揉めるわけですわ。
そしてそのせいで暗殺イベントが起きたりするのですが……。やっぱり起きます? わたくしは命を狙われるようなことなんて何もしていませんのに……。おのれウィングリー王国!!
「エクソシア様、ここにいらしたんですか。あの、大丈夫ですか?」
考えごとをしながら歩いていたところを二条綾子に声をかけられました。
「あっ……あの……」
「どうされました? どこが具合が?」
「お寿司が食べたいですわ!!!」
◇────────────────◇
うまい。うますぎますわ。風が語りかけてきます。
「エクソシア様、泣くほどおいしいんですか……?」
隣で二条綾子がドン引きしていますが、わたくしは気にせず食べ続けます。
あれから二条綾子に案内されて、桜照皇国寮内にあるお寿司屋さんに連れて来て頂きました。一見さんお断りらしいですけど、これで一見ではなくなりましたので、これからわたくしは合法的にスシを補給できるようになりました。学園から片道1時間以上かかるのがネックですが……。
「二条様、どうぞお気軽にヴィアリスとお呼びください。そしてあなたが何か困ったことがあった時にわたくしはあなたに力を貸すことをここに誓いますわ」
「……ヴィアリス様は思っていたより愉快な方ですね。私も綾子で結構ですよ」
「ありがとうございます。でもわたくしはずっとわたくしですわよ?」
ここに来るまでの移動中もずっとお話していたこともあって、二条綾子とは少し仲良くなったような気が致します。
彼女は原作でも、出会った時はクールなタイプなのですが、そのうちにジメジメと生温かい感じになって、最終的には性獣になる人ですからね。結構人気もあったのですわよ? 皆様もジメジメした女はお好きでしょう?
寿司を補給することに夢中になってしまっていましたが、そういえばスキアが欲しいんでしたっけ?
「そういえば綾子様はスキアが欲しいのですか?」
「はい。あの高性能MAには、現在の我が国の量産型MA『神通』では太刀打ちできません。私には……いえ、《《私たち》》にはあの機体の力が必要なのです」
以前もお話しましたが、桜照皇国も内乱系シナリオですものねぇ……。わたくしがスポットで暴れてマギコークスの供給が滞ったり、値が吊り上げられたりしていますから、シナリオの進行が早いのかもしれませんわね。原作ではゲームの進行とともに、価格が上がっていくものだったのですけれど。
それにしてもどうしましょうか? スキアを売りつけても、二条綾子に利はないのですけれども……。
「綾子様、ここだけの話ですがスキアはカラネアの造った機体です」
「はい? ……ええぇっ!?」
「ですから購入するのはオススメ致しませんわよ。いざという時に使える保障がない機体なんて恐ろしくありませんか? 何を仕掛けられているかわかったものじゃありませんわよ」
補修用のパーツなどもいつまで売ってもらえるかわかりませんからね。やはり内製です。内製はすべてを解決しますわ。
「ヴィアリス様はなぜそれをご存知なのですか?」
「それはご想像にお任せしますけど、できれば内緒にしておいて欲しいですわね」
人差し指を口元に当てて、しーっですわ。
「それでも、私には……私には力が必要なんです!」
「覚悟はご立派ですけれど、あなたがそこまでする必要がありますの? それにその道はきっと血塗られてますわ。血塗られた道を行った先輩からの忠告ですけど、他に道があるならお勧め致しませんわよ」
「利いた風な口を聞かないで!!!」
「あらあら、これは失礼致しました。言葉が過ぎましたわね」
カルヴォノ・マギストリアのヒロインって、主人公に選ばれなかった場合は、大体不幸な末路を迎えることになりますからね……。わたくしとしましては、二条綾子にも他のヒロインにも幸せになって欲しいものです。
それから言葉少なになったわたくしたちは、食事を終えると解散となりました。人付き合いって難しいですわね。




