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第39話 拒絶

「あ、あの……すいませんがそろそろ始めて頂けますか?」


 審判に促され、わたくしと二条綾子は気まずい空気でもう一度挨拶を交わしますと、開始位置へと移動致しました。わたくしの人生で初の令嬢的言霊(コトダマ)バトルをまずまずの結果と言ったところですわね!


 しかし慣れないことをするものではありません。やはりわたくしにはそのような回りくどいことは似合いませんわ。最後は拳で語り合うしかないのです!


 わたくしのスキアは、今日は剣と盾を持っています。流石に盾2枚はダサすぎると、父からクレームが入ってしまいました。意外とちゃんと見てくださっていたんですわね? 今日のこの剣は父の奢りですわ! 流石お父様、話がわかりますわ!


 対する二条綾子の神通は薙刀なぎなたを持っています。皆様は「おいおいロボットで薙刀かよ」と思われるかもしれませんが、あの赤い3倍の人だって振り回していた由緒正しい、歴史あるロボット兵装ですわ。神通が持っているのものは、ビームではなくて金属製ですが。


「3……2……1……開始してください」


 試合が開始すると両機は互いに接近します。遠距離武器を持っていませんから当たり前ですが……。


 それにしても神通の動きはどこか滑らかといいますか、自然な動きをしています。剣で薙刀を相手するのはリーチ的に不利ですから、しっかりとゴリ押ししないといけませんわね!


 初撃は向こうから上段への攻撃と見せての脛狙いでした。わたくしはそれを盾で防ぎます。なぎなたは剣道と違って脛も有効打と認められていますからね。しかしそれは武道の話。これはMAでの殴り合いですし、なんだったら機体性能が違います。それにこちらは重量級の機体で向こうは機動性重視の軽量機体です。力でも勝っていますわ。やっぱりゴリ押しで解決するのが一番ですわ!


 珍しい会話のない静かな戦いが続きます。最近はリスペクトの足りない方との戦いが多かったですから、なんだか嬉しいです。わたくしはいつだって対戦相手の方をリスペクト致しておりますのよ?


 しばらく打ち合っていると、最後はあっけなく終わってしまいました。わたくしが振り下ろした剣を二条綾子が薙刀の柄で受け止めた時、バキッと大きな音を立てて薙刀と剣、双方が折れてしまったのです。


 この大会で使われている武器全般の質が悪すぎますわよ! 殺し合いではありませんからしょうがないのでしょうけど、わたくしだって別に折りたくて折っているわけではありませんからね!?


「……参りました」


 仕方がありませんので、左手で盾パンチをしようかと腕を上げたところ、二条綾子は降参致しました。これにてわたくしは無事に決勝進出となりました。なんだか張り合いがありませんけど、よくよく聞いてみると、大破するまで戦うことってあまり起こらないみたいですわね……。


「ありがとうございました。二条様とはもう少しお話したいですわ。今日はお時間ございますの?」


「でしたら後ほどサロンでお待ちしております」


 初めてこの闘技大会で和やかに決着することができました。決闘などと言い出さないだけで、こんなに爽やかに戦えるなんて……。わたくしは驚きましたわ。



◇────────────────◇ 



 二条綾子とお茶ですわ! と、るんるんしながら廊下を歩いておりました。それはなぜか! もちろんお胸の大きな女の子とお話するのが楽しいこともあります。否定は致しません。しかしそれよりもわたくしの心をときめかせているのは食事です!


 原作では二条綾子とのお食事イベントがあるのですが、お寿司! お寿司に連れて行ってもらえるのです!


 わたくしの生まれた国、ウィングリー王国はモデルになった国が、飯マズなことで有名な国でもありますから、お食事事情があまりよろしくないんですわよね……。


 ニシンの頭が刺さったパイやハギス(羊の胃袋に麦やミンチなどを詰め込んだもの)は流石に食卓に上がりませんが。


 我が国の人々はいろどりなんてあまり気にしませんし、お料理も全体的に茶色い感じでして……。味は意外と普通なのですけど……。


 とにかくお寿司に連れて行ってもらいましょう! 今最も大事なことはお寿司なのです!


 決意を新たにわたくしはサロンの扉をくぐりました。


「エクソシア嬢、少し時間をもらえるか?」


 ああ、神よ……。そこにはウィングリーの第3王子が立っていました。


 いいわけありませんわよね!?!?!?!? わたくしは今とっても忙しいのでおどきなさい!


「はい……」


 権力には勝てませんでしたわ……。今は耐えるのです、わたくし……。いつかこいつもぶん殴るのですから……!


 そしてあれよあれよという間に個室にご案内されてしまいました。おファック!


 部屋に入ると人払いがされ、わたくしと第3王子の二人っきりにされてしまいました。お付きたちが何やら微笑ましい感じをかもし出していたんですけど、一体何が始まるんです? 嫌な予感しか致しません。


「突然呼び出してしまってすまない、エクソシア嬢。いやヴィアリス、俺と婚約してくれ」


「嫌です」


 あっ……思わず即答してしまいました。


「なっ!? ……いや、わかっているんだ。エクソシア嬢が自分より強い男が好きなことは……」


 そういえば以前そんな話を致しましたわね? わたくしは「強い男が好き」などとは一言も言っておりませんが……。


「話はそれだけですか? でしたら失礼致しますわね」


「ああ……。俺から忠告できることがあるとすれば、身辺には気を付けた方がいい。君が危険な組織と取引していると、王国諜報部が内偵を進めている」


「なぜそのようなことをわたくしに教えてくださるのですか?」


「……なぜだろうな? 君のことが……」


「はぁ、そうですか。ご親切にありがとうございます」


 わたくしは第三王子の言葉を遮って個室を後にしました。わたくし、忙しいので。

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