第30話 闘技大会開始
ゴールデンウィークが明けますと、すぐに皐月学園でMA闘技大会が開催されます。
わたくしは適当に予選落ちして本戦には参加しない予定だったのですけど、クラス内で行われた予選でクラスメイトと戦ったところ、半ば強制的に参加させられることとなりました。
と言うのも、闘技大会のMAは1クラスにつき最大で2機、各国の量産機が寮から提供されます。わたくしと第3王子は自分のMAを持っていますから、強制参加となってしまったわけです。クラスごとに最大で4人参加できますから、これで定員はいっぱいです。
あとクラスの方たちと模擬戦をしてみて思ったのですけど、スキアが高性能すぎますわね。
学園に持ってきているものと、フォトゥネス教国に納品したスキアは、カラネアが使用しているものと比べると、ダウングレードバージョンなのです。ウィングリーの量産機「ミューβ」と比べると、性能5割増しと言ってもいいくらい差がありました。ちなみに「ミューβ」は、二足歩行の地味で一つ目のダッサいMAですわよ。
わたくしが「スキア」で、第三王子が「ミューα」と言う近衛仕様のちょっといいミューで、アリシア嬢と、モブっぽい男性Aが、寮から提供される「ミューβ」で参加することとなりました。
ちなみに参加機体は量産機でないといけませんから、グローシアでは参加不可です。もちろん出す気はありませんでしたが。
スキアは、もしかしたら量産機の定義を満たすことができないのではないかと心配しておりましたけれど、フォトゥネス寮に納品したおかげで、無事に量産機認定を頂けたようです。これで大手を振って高性能機で出場できますわね!
我がクラスの選手たちは、アリシア嬢はヒロインだけあって、なかなかいい線いってそうな感じが致しましたが、男子生徒の方はパッとしませんわね。第3王子はミューαなだけあって、まぁいいとこまでいくんじゃありませんか? 知りませんけど。
闘技大会の対戦は1VS1で行われます。それが4ブロックに別れてトーナメント戦を致します。会場は、仮設で建てられたおバカデカいスタジアムベンチで囲われた、荒地で戦います。
開会式と閉会式が講堂で行われるのは幸いでした。屋根のないプラスチックでできたベンチに座りながら、長々と話を聞きたくはありませんものね。
校長先生たちって、何故ただ挨拶するだけなのに、あれほど話を引き延ばせるのでしょうか? 何かの特殊能力ですわよね、あれ。わたくし不思議でなりませんわ。
参加者は5ヶ国×5年で各国4人ずつですから、最大100人です。細かいことは省略して簡単に言いますと、5戦勝ち抜けば決勝トーナメントです。各トーナメントを勝ち抜いた4人で、またトーナメントをします。3位決定戦はありません。
期間は7日間。大体1日1戦すれば終わりなので、今週はゆっくり出来そうですわね。
わたくしの1回戦の相手はリュドヴィック共和国の3年生で、政治家の息子らしいですわ。共和制も大変ですわね!
「準備はよろしいですか? ボ……嬢様」
「楽しみにしてますよ! ボ……嬢様」
「そのボ嬢様って言うのおやめなさい! 出ますわよ!」
ハッチを閉め、夜月の整備士たちに見送られながら格納庫から出ます。
わたくしは真っ直ぐにスタジアムベンチに囲まれた荒野を進みます。何もない荒野のど真ん中に、スタジアムベンチが突如として現れるの、本当にシュールですわね……。
ちなみにここはスポットの中ではありません。一般の方もいらっしゃいますし、万が一客席が魔獣に襲われるようなことがあれば、大問題ですからね。
大会で使用される弾丸は、貫通力が低いものを使うように指定されていて、スタジアムの前には、巨大で透明な防弾シールドが設置されています。
ウグイス嬢が淡々とした口調で、わたくしとリュドヴィックの政治家の息子の紹介をしているようです。なんだか日本の夏の風物詩みたいですわね……。サイレンが鳴ったりしません?
わたくしが初戦ではなく、この前にすでに何戦か行われており、その中ですでにスキアが勝利を収めています。謎の量産型MAとして話題になっているようでした。
今のところフォトゥネス教国以外に売りつける予定はありませんが、皆様でたくさん噂して頂きまして、もっと謎が謎を呼んで頂ければ幸いかと存じますわ。
わたくしの「スキア(弱)」と、対戦相手の「エグズルテ」が並びます。見た目は、わたくしが、リュドヴィック共和国と国際問題を起こすきっかけになったタンク型の機体、「アクラマシオン」を2足歩行にした機体になります。膝が逆関節になっているのは、ちょっとお洒落で好きですわよ。
「両者向かい合って並んでくれ」
闘技大会運営委員会のMAが、わたくしたちを誘導します。運営委員会と言っても、中身はほとんど生徒会ですけど……。
対戦の前にはハッチを開けて挨拶をしなければなりません。実際挨拶は大事なのでしょう。……メタ的な話をするならば、この挨拶がありませんと、主人公がヒロインたちの顔を見る機会がないからなのですけれど。
わたくしと対戦相手は、ハッチを開けるとヘルメットを取り、立ち上がりご挨拶致します。
「ごきげんよう、短い間ですがよろしくお願い致しますわね」
「ほぉ! 1年の盲目姫っていうのはお前か。気に入った俺の女にしてやろう!」
「えぇ……?」
ハァ……リュドヴィックって、こんなのしか居ませんの? まぁ原作でも、全体的に女癖悪いタイプの男しか居なかったような気が致しますし……。そういえば、アナ弱さんもルートによっては、大変な目にあいますものね。
「お断りしますわ」
「なんだとっ!? 俺は元老院議員の息子で、さらにハンサムで金持ち! しかもMAの操縦の才能まである! どこが気に食わん!!」
「全部ですけど……」
「ならば決闘だ! 審判、立会人を頼む!」
「わかった。それでいいか? エクソシア選手」
良いわけねぇですわよね!? こいつらグルなのではなくって? まぁいいですわ。わたくし、こんなのに負けませんし。
「ではわたくしが勝ったらそのMAを頂きますわね?」
「ふんっ! 俺のエグズルテがそんなにうらやましいか? よかろう! 聞いたな、審判! 俺が勝ったらお前は俺の女だ!」
「ああ、この会話は録音されている。この戦いは校則に基づき正式な決闘となった」
MAは別にいらないですけど、適当に夜月商会に押し付けることに致しましょう。それならばできるだけ綺麗に処理しませんとね。
「今夜が楽しみだな!」
「はいはい。いいですわよ~」
話を聞き流しながらスキアのコクピットに戻り、ハッチを閉めます。
開始までの間、スキアのモニターに映った観客席を拡大して見ておりますと、父と母が来ているのが見えました。わたくし頑張りますわよ~! と手を振ると、会場に決闘になった旨のアナウンスが流れます。
父が渋い顔をしながら胸の下を押さえています。胸焼けでしょうか? 歳を取ると油物がキツくなってきますものね……。
「ルールはわかっているな? 制限時間は15分。行動不能、頭部の破壊、降参で決着だ。時間切れの場合は運営委員会が合議して判定する。試合中に対戦相手を死亡させた場合失格となる。……が、決闘を伴う試合では失格とはならない。留意するように」
「ああ、了解した!」
「は~い。よろしくてよ~」
なんでもいいから早く始めましょう。早く殴りたいんですわ、わたくし。
わたくしたちが開始位置に移動するとウグイス嬢がカウントダウンを始めました。
「3……2……1……開始してください」




