第24話 舐めてかかるわたくし
ところで皆様はショートケーキの苺はいつ食べますか? わたくしは最初に食べる派なのですけれど、あれってマナー違反なんですって。よくわかりませんけど、そのマナー講師のお口に、このショットガンを突っ込んでやれば解決する気がいたしますわね!
跳躍。一瞬だけバーニアを吹かし、あとは慣性の力で可能な限り静かに聖女様が率いる寮軍の一団に飛び込みます。魔獣退治が終わった弛緩した、油断した空気によって、彼らの奇襲への対応は遅れました。
「こんばんはァ、聖女ちゃん」
わたくしは《《男》》の声で話しかけながら、聖女が駆るヘーメラーに蹴りをいれます。
『誰ですか!? キャァーー!!』
可愛らしい悲鳴を聞き、アトロポスたちがこちらに振り返りました。
わたくしは間髪を入れず、左手に持ったエネルギーブレードを振るい、防御しようと前に突き出されていたヘーメラーの両腕を斬り飛ばしました。そして右手に持った夜月謹製ショットガン「歓迎光臨」を、至近距離でコックピットに当たらないように射撃致します。エフカリストの両肩のウェポンラックにも同様のショットガンが装備されていますので、それらを合計3丁同時に連射。一瞬でヘーメラーは大破。沈黙致しました。
射撃が苦手でも、近寄って撃てばいいんですわ! わたくしったら賢い!!
と言うわけで、苺ごちそうさまでしたわ。まぁ普通にヘーメラーに後方支援されると、はちゃめちゃにキツいからなんですけれど……。
それにしてもこのショットガンは素晴らしいですわ! ドラムマガジンの重さもMAだと気になりませんし、面倒なリロードもMAなら自動でやってくれますし、装弾数32発は、下手っぴなわたくしがフルオートで散弾をばら撒くのに便利です。
余談ですが、肩のウェポンラックからドラムマガジンのショットガンを構えますと、銃を上下逆さに構える形になりますから、円形のドラムマガジンが外側にいくのです。未夢曰く、「ネズミの耳みたいで可愛い」だそうですわ。
『聖女様ァ!! 総員聖女様をお守りしろ!』
では残りを掃討致しましょう。
『クソッ! カラネアか!? 聖女様に当てるなよ! ぐわぁぁっ!』
わたくしの数ある特技の中の一つなのですが、わたくしは感応器官を使って敵の通信を直接聞くことができます。
『悪魔だ! 撤退の準備を! ぎゃっ!? て、撤た……い……』
ただ100メートル圏内くらいしか聞こえないんですわよね。
『撃ちまくれ! 近寄らせるな! 来るな! 来るな! 来るな! うわあああああ!!』
あとすべての通信が同時に聞こえてしまうので、おバカうるさいのが難点です。ここでくるっと回転しながら蹴りで決めポーズですわ!
「お前が最後らしいぞ?」
エフカリストの蹴りで転倒した推定主人公機を踏みつけながら、ショットガンを突き付けます。わたくしイケボ~~~~~!
『だ、誰だよこいつ!? こんなやつ実況動画には出て来なかっただろ!?』
お前動画勢ですの~~~~~~~!?!?!?
なんだか無性に腹が立ってきました。わたくしは、そういう《《先の展開が読めてるからって舐めてかかる輩》》が一番嫌いなんですのよね! サクッとエネルギーブレードで、主人公機の左腕を斬り飛ばします。
『嫌だ! 死にたくない! カラネアって何だよ!? DLCか!?』
でぃーえる……しぃ? ま、まさかダウンロードするって言うんですの!? 追加ディスクを!?
『隙ありッ! 俺はハーレムを作るまで負けられないッッ!!!』
あっけに取られて止まってしまったわたくしを蹴り飛ばし、素早く立ち上がった主人公機は、エフカリストに向けてにアサルトライフルを射撃しながら、ヘーメラーの方向へと移動して行きます。
新車に傷がつくと最悪な気分になりますので、わたくしは弾を回避しながら主人公機を追いかけます。
あとハーレムは絶対許さねぇですわ!!! わたくしが作るんですのよ!!!!!!
『なんでこんなに動画と違うんだよ! これゲームだろ!?』
「アイン! 逃げなさい!」
「シャノン様を置いて逃げるなんてできないだろ!?!?」
おぉ~……ゲーム云々を除けばとっても主人公っぽいやり取りですわね! ちょっと感動してしまいました。そして今更ですが、主人公の名前はデフォルトネームの「アイン」だったのですね。
『新入生! 盾になれ!』
一方的に主人公に向かって通信を送った女が、自分の大破してしたアトロポスを捨てて、ヘーメラーに向かって走って行く様子が見えました。咄嗟のことでしたが、アインもそれをフォローするように位置を変えます。拡大されたエフカリストのモニターに、走る緑髪の女の後ろ姿が映りました。
あー……この女は、フォトゥネス教国編で聖女様を蹴落とそうとする悪役令嬢ですわね。こいつのせいで、寮内も国内もぐちゃぐちゃのてんやわんやになるのがフォトゥネス教国編のシナリオですから。
わたくしは主人公が撃ち続けるアサルトライフルを避けながら、主人公機に距離を詰めると、死なない程度にショットガンをぶち込みます。
『わあああああっ!?』
吹き飛ぶ主人公機。わたくしは倒れ伏した主人公機を踏み台にして、飛び上がると、大破したヘーメラーの前に着地します。
ハッチが強制開放されており、ちぎれたかけたヘーメラーの脚の上に、パイロットスーツを着た聖女様が立っています。気丈にもこちらを睨みつけています。……ああ、とってもいいですわ……。
あの、実は……お恥ずかしいのですけれど、わたくし実は原作では聖女様推しなんですわ。金髪ふわふわウェーブで、ママ属性で、胸も控えめで、小柄なのですけれど、デロデロのデロに甘えさせてくれる美人なお姉さんなんて、皆様好きですわよね? ……好きって言え!!
持って帰っちゃってもいいですか? いいですわよね? わたくしのママになってくれるかもしれないですものね!
「おいおい、そんなにこの女が大事なのか? じゃあ貰っていっちまおうかなァ? 仲良くしようぜ、聖女ちゃん」
『やめろぉぉぉぉっ! シャノン様逃げてください!!!』
あれ? いまのわたくしって完全に悪役ではありません? わたくしの中のもう一人のわたくしが、勝手に見事な三下ムーブをキメてくれています。落ち着きなさい、もう一人のわたくし!
まぁいいですわ。エネルギーブレードを腰に収納して、エフカリストの左手を伸ばします。ほーら、聖女ちゃん動いちゃだめですわよ~?
手を伸ばした瞬間、視界の隅でマズルフラッシュが見えました。即座に感応器官をフル稼働させ、機体をそちらに方向転換させ、右手に持っていたショットガンを盾にします。
着弾、爆発。ショットガンの弾薬が誘爆し、辺りに散弾が撒き散らされます。わたくしは咄嗟にエフカリストの左手で聖女様を庇い、右手でエネルギーブレードを抜き放つと、高速で迫ってきていたMAに振り抜きます。
ドギツイピンク色の機体が振り下ろした《《盾》》と、エフカリストのエネルギーブレードが激突し、辺りに衝撃波が生まれました。
「助けに来たよ!」
「こんな展開原作にはなかっただろォ!?」




